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ワールドカップ優勝•準優勝を経験した男が米カップ戦でV

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
ZUMA Press/アフロ トロフィーを掲げるウーゴ・ロリス(右)

 現地時間の9月25日(水)、LAFCのホーム、BMO(Bank of Montreal)は、2万2214名の観客で埋まった。2014年10月末に発足し、2018年シーズンからMLS(メジャー・リーグ・サッカー)に加入したこのチームは、一昨年にリーグチャンピオンとなり、昨シーズンもファイナルに進出した。そしてこの日はUS Open Cupで初Vを飾った。

 90分間戦って1-1。延長戦に入ってから2点を追加し、過去に4度、同カップ戦でトロフィーを掲げたスポルティング・カンザスシティーを振り切った。

撮影:筆者
撮影:筆者

 2004年、2012年、2015年、2017年に続き、5度目の優勝を目指していたスポルティング・カンザスシティーのピーター・ヴァーメス監督は、試合後の記者会見場に憮然とした表情でやって来た。そして、次のように捲し立てた。

 「LAFC の先制点はオフサイドだったが、我々にはどうすることも出来ない。このチームを率いて今年で16年になるが、このゲームでは様々な局面で苦しめられた。VAR等で、こうしたミスを無くさなければいけない。

 こちらの同点ゴールの直前にエリック・トミーが中盤の中央でボールを受けた際、後ろからアタックされている。彼はレフェリーを尊重してプレーを続けたが、バランスを崩し、倒れた。100%ファウルだよ。この試合における私の選手たちは素晴らしかった。今夜は相手のホームであり、こちらは完全なる咬ませ犬だった。まぁ、LAFCにはおめでとうと言っておく」

 米国代表選手として66試合に出場したヴァーメス監督の怒りは、しばらく消えそうもない。

撮影:筆者 ピーター・ヴァーメス監督(右)
撮影:筆者 ピーター・ヴァーメス監督(右)

 2022年6月末、LAFCはイタリア代表の名ディフェンダー、ジョルジョ・キエッリーニを獲得した。既に選手生活の晩年を迎えていたが、その戦術眼とリーダーシップで、キエッリーニは短い時間でLAFCに勝者のメンタルを注入。同年のリーグVは、彼の効果が大きかったと筆者は見る。

撮影:筆者
撮影:筆者

 イタリアのレジェンドは昨シーズンで引退し、同レベルの大物、元フランス代表の守護神で、ワールドカップで優勝、準優勝を経験したウーゴ・ロリスがLAFCのゴールマウスを守るが、フィールド内にキエッリーニの穴を埋める選手がいないーーー今回のファイナルでも、その事実を伝えていた。

写真:LAFC提供
写真:LAFC提供

 それでも、LAFCは67分から投入された22歳のメキシコ人DF、オマー・カンポス、延長戦からピッチに入った40歳のシエラレオネ人F W、ケイ・カマラが得点し、獲得タイトルを増やした。課題は多いが、勝ち方を身につけつつある。

撮影:筆者 ロリス(左)
撮影:筆者 ロリス(左)

 「トロフィーを手にした事に、多くの意味がある。我々の特性を示せた。さらにポジティブなエネルギーが生まれるよ。これでプレイオフにも万全な状態で向かえる」

 ロリスは力強く語った。さて、LAFCは次に何を見せるか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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