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日本ライト級チャンピオン、宇津木秀、3回KOで防衛!!

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:山口裕朗

 2022年2月に日本ライト級王者となった宇津木秀(28)が、11月17日に2度目の防衛に成功した。同級4位の挑戦者、ジロリアン陸(34)を3ラウンドで沈めた。

 試合開始のゴングが鳴り、ジロリアンがグローブタッチしようとした瞬間にチャンピオンはいきなり右を放った。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 宇津木は振り返る。

 「ジロリアンはハードパンチが売りですから、最初から飛ばしてくると予想していたんですよ。でも、こなかった。『挑戦者のくせに、何を挨拶なんかしているんだ。もっとガンガンかかってこい。舐めているのか』というような気持になりました。

 でも、あの一発でビビッてくれたようで、全然出てこなかった。やり易かったですね。試合の頭からペースは握れたな、と感じました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 ジロリアンはプロボクサーになる前、TV東京の下請け技術会社に勤務するカメラマンだった。宇津木の高校、そしてジムの先輩である内山高志を撮影したことがきっかけでボクシングに魅せられ、グローブを握った男である。最近はラーメン好きYouTuberとして人気を得、この日もファンやTV関係者が後楽園ホールにやって来ていた。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 宇津木は終始、挑戦者の繰り出すパンチを巧みにブロックし、格の違いを見せた。

 「致命傷になるパンチは無かったですが、2~3発はもらったんじゃないですかね。2回には鼻血も出ましたし。

 ジロリアンは抱き付いてきてレスリングのような形になることも多かったですが、想定内でした。フィジカルでは負ける筈がないと確信していましたから、ああいう展開の中で逆に疲れさせてやろうと考えました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 このところ宇津木のファイトには、前WBAライトフライ級スーパー王者の先輩、京口紘人がセコンドに付いている。

 「京口さんがいると心強いので、今回もお願いしました。2ラウンドの『いつも通り、練習でやっていることを出せ』という言葉が印象的でした。3回にも『細かく細かく動いて。リズムをとって』とアドバイスされましたね」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 "練習通り"。

 宇津木は今回の防衛戦に向け、ボディブローに磨きをかけてきた。

 「右も左もボディが面白いように決まりましたね。小林尚睦トレーナーと繰り返しやってきたことで、巧くなってきたかな。

 第3ラウンドに僕の左ボディが入って、ジロリアンが前のめりになったので『これは倒れるな』と。こちらは冷静だったので、更に腹を打って倒したんです。『起き上がれるか?』という手応えでした。2度目のダウンは、相手の右ストレートに僕の右ストレートを合わせたんです。次の瞬間、側頭部にまた右ストレートを入れて倒しました。『もう立てないだろう。終わりだな』と思ったんですが、起き上がってきましたね。

 最後は右ボディを効かせて、フォローの左フックを打ったのですが、それが当たる前にダウンしましたね。多分、ダメージがあったのでしょう」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 上を見据える宇津木にとって、今回の防衛戦はあくまでも通過点だ。

 「快勝と表現していいのか……、もっと出来たんじゃないかという思いもあります。本当に触れさせない、一発ももらわないで終わらせたかったですね。<もらわないで打つスタイル>を突き詰めたいです。

 僕はワシル・ロマチェンコのボクシングが好きなんですよ。自分がデビューした頃、ロマチェンコはもう世界チャンピオンとして確固たる地位を築いていました。初めてあの人のスタイルを目にした時は、ビックリしましたね。相手のパンチをもらわずに、サイドに動いたり後ろを回ったりと、見たことのない技術でした。自分の練習に取り入れもしました。1cmでも差を縮めたいとやってきたので、いつか戦ってみたいです」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 今年6月の初防衛戦の折、宇津木は前日計量を終えて<勝負メシ>である鰻重を食べた。その折、緊張感からか吐き気をもよおしている。デビュー以来全勝で王座に就いたが、万が一ベルトを失えば……と考えると体がそうなったという。

 「今回は、まったくそんな事はありませんでした。控室ではさすがに緊張しましたが、リングに上がってからは集中して戦えましたね。慣れてきたのかもしれません」

 宇津木は結んだ。

 「来年は世界ランカーと試合をしたいです。決まればいつでもいけるように、練習するだけです。今回はダメージが無いので、来週から練習しようと思います」

 激戦区ライト級を駆け抜けろ!

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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