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5打数5安打のチャンスがありながら、5打席目に立たなかった理由。達成していればワールドシリーズ史上初

宇根夏樹ベースボール・ライター
トミー・ファム(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)Oct 28, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月28日、ワールドシリーズの第2戦に出場したトミー・ファム(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)は、最初の4打席に、シングル・ヒット、二塁打、二塁打、シングル・ヒットを打った。そして、9回表に5打席目が回ってきた。

 ワールドシリーズの試合で、5打数5安打を記録した選手はいない。ポール・モリターアルバート・プーホルスは、それぞれ、1982年の第1戦と2011年の第3戦に5本のヒットを打っているが、2人とも6打数5安打だった。

 だが、ファムは、5打席目には立たず、代打としてジェイス・ピーターソンが起用された。

 怪我による交代ではない。7対1とリードしていたのも理由の一つだろうが、ファムは、インスタグラムにこう書き込んでいる。「自分の代わりにジェイスを打たせるよう、トーリに頼んだのさ。友人にワールドシリーズ初打席を経験してもらいたかったから。以上」

 トーリとは、トーリ・ルベロ監督のことだ。

 ファムとピーターソンは、どちらもメジャーリーグ10年目。2人とも、7チームでプレーしてきた。チームメイトになったのは、ダイヤモンドバックスが初めてだ。この夏のトレードで、ファムはニューヨーク・メッツ、ピーターソンはオークランド・アスレティックスから移籍した。

 どちらも、これまで、ワールドシリーズに出場したことはなかった。ただ、ファムとピーターソンは、立場が違う。ピーターソンは、ワイルドカード・シリーズとディビジョン・シリーズのロースターには入っていたものの、出場は5試合中2試合、しかも、1打席しかなく、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズではロースターから外された。ワールドシリーズでロースターに復帰したものの、出場機会があるかどうかはわからなかった。

 なお、昨年5月、シンシナティ・レッズにいたファムが平手打ちをした相手は、こちらもイニシャルはピーターソンと同じJCで、名前も少し似ているが、ジョク・ピーダーソン(サンフランシスコ・ジャイアンツ)だ。この一件については、こちらで書いた。

「試合前に対戦チームの選手を平手打ちは、ウィル・スミスを真似たのではなく、その理由もまったく違い…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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