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酒井高徳の”Jリーグ復帰”で期待したい日本代表への新たなモチベーション

河治良幸スポーツジャーナリスト
酒井宏樹と共に日本のサイドバックを支えた酒井高徳はカタールW杯を目指さないと宣言(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

ヴィッセル神戸はDF酒井高徳をハンブルガーSVから獲得したことを発表した。

アルビレックス新潟のアカデミーで育ち、各年代の代表を経験して来た酒井高徳は2011年に母親の生まれ故郷でもあるドイツのシュトゥットガルトに期限付きで移籍し、2013年に完全移籍。2015年からは古豪のハンブルガーSVでプレーし、一時期はキャプテンマークを巻くなど地位を確立していたが、クラブが設立から初めて2部降格を経験し、昨シーズンは1部昇格を逃すと地元メディアやファン・サポーターから非難が集中するなど、苦しい立場にあった。

そうした状況から新天地を探す中でJリーグ復帰の噂もまことしやかに流れていたが、ヴィッセル神戸への加入が決まった。年俸1.4億円とも伝えられる高額の評価に加えて、ドイツ人のフィンク監督が求める戦術スタイルにマッチしていることも移籍を実現させる大きな要因と言えるかもしれない。

日本代表クラスの実力者であり、経験豊富な酒井高徳にはイニエスタやビジャと言ったビッグネームを擁しながらJ1の残留争いを強いられる神戸の救世主として活躍が期待されることはもちろんだが、もう1つ気になるのは日本代表への復帰だ。

2010年にA代表で初選出され、2012年から42試合に出場した酒井高徳は”ザックジャパン”で挑んだ2014年のブラジルW杯、ハリルホジッチ氏から西野朗前監督が引き継いだロシアW杯の2大会でメンバーに選ばれたが、本大会の出場はロシアW杯のグループリーグ第二戦から大幅にスタメンを変更したポーランド戦の1試合のみ、しかも本職ではない右サイドハーフだった。

酒井高徳選手の代表引退によせて。

(ロシアW杯の取材記事)

ベスト16のベルギー戦で敗退した後、4年後のカタールを目指さない事実上の代表引退を表明した酒井高徳は「今大会できる限りのことをやって来た」と語っていた。27歳という若さだったが、2つのサイクルに渡り日本代表でのチャレンジに100%の情熱を注ぎ、節目を終えた酒井高徳としてはそうした100%を捧げられない以上、カタールW杯を目指す若手の候補も台頭する中で、代表で戦うことはできないという気持ちが大きかったようだ。

もちろん一度そうした意思を表明した酒井高徳が環境をJリーグに移したからといって、すぐ代表への情熱が湧き上がるかどうかは分からない。しかし、日本代表の体制も”森保ジャパン”に代わっており、日本の地で新たにモチベーションを高めれば、代表復帰への道も開けてくるのではないか。

現在の日本代表は右サイドバックが酒井宏樹、左サイドは長友佑都が主力を担い、右は室屋成が継続的に招集されているが、左は佐々木翔、山中亮輔、安西幸輝と言った選手がチャンスを与えられているものの、なかなか定着できていない状況にある。U-22代表がベースだったコパ・アメリカは左サイドバックで杉岡大暉が3試合フル出場したが、他のポジションに比べて競争力が高いとは言えないポジションだ。

そうした”森保ジャパのサイドバック争いに酒井高徳という実力者が再び加われば、間違いなく競争力は高まる。最終的に誰が主力としてアジア予選突破に貢献し、カタールW杯のピッチに立つかは分からないが、酒井高徳が代表復帰となればもたらすものは小さくないだろう。もちろん日本代表を選ぶのは森保監督であり、また酒井高徳の意思も尊重されるべきだが、多くの代表候補が欧州リーグに移籍し、日本代表における国内組の割合が減ることも予想される中で、酒井高徳が神戸での活躍により日本代表に戻ってくることがあれば、代表記者の1人としても歓迎したい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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