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110年ぶりに「四冠王」が誕生する!? 首位打者、本塁打王、打点王に加え、盗塁王もチャンスあり

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)Aug 4, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月4日、クリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)は、初回にダルビッシュ有(シカゴ・カブス)からホームランを打ち、シーズン37本として、それまでトップに並んでいたコディ・ベリンジャー(ロサンゼルス・ドジャース)に1本差をつけた。

 打率.330はジェフ・マクニール(ニューヨーク・メッツ)と6厘差の2位。82打点は7位ながら、1位のジョシュ・ベル(ピッツバーグ・パイレーツ)とは7打点しか離れていない。さらに、イェリッチは23盗塁も記録している。こちらは3位に位置し、1位のロナルド・アクーニャJr.(アトランタ・ブレーブス)より2盗塁少ないだけだ。

 打撃三冠と盗塁王の同時獲得も、夢ではない。そうなれば、110年ぶりの快挙だ。1909年のタイ・カッブに続き、史上2人目の「四冠王」が誕生する(1878年のナ・リーグ三冠王、ポール・ハインズの盗塁数は不明)。

 ただ、30-30(30本塁打&30盗塁)や40-40などの記録と違い、タイトルが獲得できるかどうかは、同じリーグの他の選手の成績に左右される。例えば、サミー・ソーサは60本塁打以上を3度記録しているが、どのシーズンも2位に終わった。1998年(66本)と1999年(63本)はマーク・マグワイア(70本/65本)、2001年(64本)はバリー・ボンズ(73本)が上にいた。ソーサが本塁打王を獲得したのは、50本の2000年と49本の2002年だ。

 また、ホームランを打った打席は、打率が上がり、打点も増えるが、塁上にとどまることなくホームインするので、盗塁を記録するチャンスは消滅する。40-40の達成者は、ホゼ・カンセコ(1988年)、ボンズ(1996年)、アレックス・ロドリゲス(1998年)、アルフォンソ・ソリアーノ(2006年)の4人しかいない。

 今シーズンのイェリッチの場合、チームメイトの「アシスト」を十分に受けているとも言い難い。ブルワーズの1番打者は、昨シーズンも今シーズンも、基本的にロレンゾ・ケインが務め、イェリッチはそのすぐ後ろを打っている。ケインの出塁率は、昨シーズンが.395、今シーズンは.310だ。しかも、ブルワーズの3番打者は、昨シーズン以上に流動的。それだけが要因ではないと思われるが、イェリッチの敬遠四球は2→15と激増している。

 昨シーズンも、イェリッチは三冠王に迫った。打率.326で首位打者を獲得し、36本塁打は1位と2本差(3位タイ)、110打点は1位と1打点差(2位タイ)。もっとも、22盗塁は11位。盗塁王を獲得したトレイ・ターナー(ワシントン・ナショナルズ)は、イェリッチのほぼ倍に当たる、43盗塁を記録した。今シーズンのイェリッチは、盗塁王のチャンスという点では、60本塁打以上を打ちながらタイトルを逃がしたソーサと逆の状況にいる。

 ちなみに、昨シーズンのイェリッチは、打率、本塁打、打点、盗塁のいずれも、キャリアハイを更新した。今シーズンの本塁打と盗塁は、すでにそれを上回り、このままいけば、打率も2年続けてキャリアハイを塗り替える。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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