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4連敗から4強間近。東芝が首位サントリーに勝つには。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
タックルの芯を外し、ハンドオフを交え前進。リーチはスタンディングラグビーの柱。(写真:アフロスポーツ)

 クリスマスイブの12月24日、日本最高峰のラグビートップリーグの最終節が各地である。

 1月からのプレーオフ進出枠は4つあるうちの3つが決定済み。残る1つの椅子はレッドカンファレンス2位のトヨタ自動車と同3位の東芝が争う。

 東芝はトヨタ自動車を総勝ち点4の差を追う。東京・味の素スタジアムで、同じ東京都府中市を本拠地とするサントリーとぶつかる。すでにレッドカンファレンスの1位通過を決めているサントリーからボーナスポイントを奪って勝てば、他会場でのトヨタ自動車の試合結果次第で順位が入れ替わる。

 一昨年度から昨年度にかけ順位を2位から9位に落とした東芝では、今季から元7人制日本代表ヘッドコーチの瀬川智広監督が2010年度以来の復帰を果たしている。

 各所に選手がまんべんなく散るポッドという攻撃戦術が全盛のなか、状況に応じて1人のランナーの周りに人が沸き立つスタンディングラグビーを標ぼうする。個々の選手が、タックラーに掴まれても立ったまま球をつなぐ意識を徹底。守っては鋭く前に出るシステムを採用し、相手のプレー選択の間合いを減らしにかかる。

 序盤こそ戦術の消化不良などもあってか第2節から4連敗を喫するも、その後は全勝。日本代表右プロップの浅原拓真は、トンネル脱出のプロセスを「早くセットする(立ち位置につく)とか、当たり前のこと(の大切さを見直した)」と話す。

 特に中断期間明けの12月からは、3戦中2戦で途中加入のスティーブン・ドナルドがスタンドオフに起用される。昨季サントリーにいた元ニュージーランド代表のドナルドが空いた場所へキック、パスを配すことで、攻撃の燃費はよりよくなったか。

 一部選手のリコンディショニングも考えているであろうサントリーを、自分たちの土俵に引きずり込めるか。日本代表キャプテンでもあるナンバーエイト、リーチ マイケルの推進力、元日本代表ウイングの宇薄岳央の鋭いチェイスとタックル、フランカーの藤田貴大の接点へのへばりつきなどで主導権を握りたいだろう。  

               

 一方でサントリーは、どんな隊列で臨むにしても沢木敬介監督の言う「スペースへアタックする」を全うしたいところ。突っ込んでくるタックラーから逃げない一方で、飛び出す防御の背後などを連携で崩しにかかれるか。空いた区画を共有する声かけで、スタンドオフに入った技巧派のマット・ギタウへ豊富な選択肢を与えたい。

 

<第12節私的ベストフィフティーン>

1=左プロップ

稲垣啓太(パナソニック)…リコー戦では持ち前の運動量であらゆる局面に顔を出す。タックル、突進で引き締める。例えばキックオフ直後の防御局面。自陣ゴール前で防御網を保ってタックル。続いてオープンサイドフランカーのデービッド・ポーコック(後述)が球へ絡んでノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘う。

2=フッカー

日野剛志(ヤマハ)…サニックス戦ではスクラムを圧倒し、接点周辺へ駈け込んでは採算の突進を繰り出す。

3=右プロップ

浅原拓真(東芝)…近鉄戦のスクラムで相手の塊へ鋭く侵入。

4=ロック

大戸裕矢(ヤマハ)…防御のひずみをえぐるランやスクラムの押し込みなどで、システムやプランに命を吹き込む。

5=ロック

ヒーナン ダニエル(パナソニック)…リコー戦での先制トライは、この人が敵陣中盤左でパスを受け取ってスペースを切り裂いてのもの。僅差の時間帯は自陣深い位置でのビッグタックルが目立った。

6=ブラインドサイドフランカー

ベン・ガンター(パナソニック)…勝負の決まった時間帯も運動量が衰えず、タックルとジャッカルで大味な展開を防ぐ。

7=オープンサイドフランカー

デービッド・ポーコック(パナソニック)…前半で勝負を決めたリコー戦。スコアを26-7と開くトライのきっかけは、この人の自陣22メートル線付近左でのジャッカル。

8=ナンバーエイト

アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコム)…トヨタ自動車戦に先発。一時あったリードを5点から12点に広げた後半初頭は、この人のジャッカル、約60メートルを駆け上がってからのタックルキックチェイス、タックル光った。ランナーとしても持ち前のパワーとスピードを発揮。

9=スクラムハーフ

小川高廣(東芝)…鋭い防御網の先頭に立ってのインターセプトで先制トライをマーク。以後も鋭いラン、防御の裏へのキックなどでチームを加速させた。

10=スタンドオフ

マット・ギタウ(サントリー)…球を捕ってから複数人の相手を引き付けて空いたスペースへパスを放つ。こうした基本動作の最良版とも言えるプレーで、神戸製鋼戦のチーム1本目のトライをおぜん立て(7-7)。逆に、スペースへの駆け込みからのトライはスコアを24-7と広げた。後半も、自陣深い位置でお手本のようなセービングを披露。

11=ウイング

宇薄岳央(東芝)…キックチェイスやストレートランなど、縦への鋭さが求められるプレーで持ち味の強さを発揮。

12=インサイドセンター

マレ・サウ(ヤマハ)…セットプレーからの1次目の攻撃などで防御網を切り崩す。

13=アウトサイドセンター

 

イェーツ・スティーブン(トヨタ自動車)…自陣深い位置でのタックルで対するNTTコムのミスを誘発。15―15と同点で迎えた後半30分ごろには、味方のキックを敵陣深い位置まで追って相手を捕まえる。チョークタックル。自軍スクラムの獲得を促し、フルバックのジオ・アプロンの決勝トライをもたらした。

14=ウイング

山田章仁(パナソニック)…特にアンストラクチャー時に周りへ声をかけ、球を持てばかすかなひずみを一気にえぐる。

15=フルバック

松島幸太朗(サントリー)…ピンチの場面の接点で、この人が球へへばりついた。エリアゲーム時のキックも種類豊富で、間合いを詰めに来た防御をかわすスキルも見事。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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