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割合は67.6%…60代は紙の新聞をニュース系テキストメディアで一番読んでいる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
ニュースを取得するスタイルは人それぞれ。その実情は(写真:イメージマート)

ポータル提供のニュースが一番読まれている

速報性や拡散性、画像や音声、動画などのマルチメディア性、蓄積と検索、リンクによる過去データの検証の容易さなど、インターネットはニュースを配信するのにプラスとなる特徴を多数持っている。これを受けて法人の新聞社やポータルサイト、さらには個人の情報発信者に至るまで、多様な立ち位置から、インターネット上にニュース・情報が提供されている。紙媒体としての新聞と、これらインターネット上のニュース系情報サイト・サービスは、どのような利用状況にあるのだろうか。総務省が2023年6月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「令和4年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、その実情を探る。

今件では新聞やニュースサイトなど、ニュースを読んでいるテキスト系媒体の利用状況を尋ねている。紙の新聞以外に新聞社が提供する有料サイト(日経新聞電子版など)、同無料サイト(読売オンラインなど)、ポータルサイトが提供しているニュース配信サービス(Yahoo!ニュースなど)、ソーシャルメディアが提供しているニュース配信サービス(LINE NEWSなど)、さらにはキュレーションサービス(スマートニュースなど)、そしてそれらのいずれの方法でも読んでいないの選択肢を提示し、複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。

↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(複数回答、年齢階層別)(2022年)
↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(複数回答、年齢階層別)(2022年)

全体ではポータルサイトによるニュース配信利用率がもっとも高く74.1%、次いでソーシャルメディアによるニュース配信が49.0%、さらに紙媒体の新聞が39.1%と続く。紙媒体の新聞がトップに付かなかったのは、今調査では2016年分以降7年連続。さらに紙媒体の新聞がソーシャルメディアによるニュース配信よりも下の順位となるのは2020年以降3年目。新聞各社が積極展開している新しいビジネスモデルこと、新聞社の有料サイトは利用率が4.8%にとどまっている。

年齢階層別に見ると、紙媒体の新聞利用率がおおよそ歳を重ねるに連れて上昇していくのは、他の多数の調査結果からも容易に想像ができた通り。60代ではほぼ3人に2人が新聞を読んでいる。同時にインターネット経由のニュース利用が漸減しており、年齢とともに「インターネットから紙へ」が進んでいる状況が分かる。ただしピークは媒体によって異なり、例えばポータルサイトによるニュース配信では40代が、ソーシャルメディアによるニュース配信では20代がピークとなっている。新聞社の無料サイトはどの年齢階層でもさほど違いはないが、最高値をつけているのは50代。

有料無料を問わず、新聞社自身が提供するウェブ上のニュースよりも、それらを集約したポータルサイト提供のニュースやソーシャルメディア提供のニュース配信の方が需要が大きく、多数の人が利用している実情は皮肉な話。他サービスと一緒にまとめて利用できることや、多様なニュースの集約で幅広い情報を一括して確認できるメリットが好かれているのだろう。特定の出版社の発行本のみを集めた本屋より、さまざまな出版社発刊の本を集めたごく普通の本屋の方が需要が大きいのと同じではある。

一方、ソーシャルメディアでも付加価値施策の一環として展開を始めている、ポータルサイトと同様のニュース配信サービスの利用者は20代がピークで、6割台。年齢階層別の動きはソーシャルメディアを利用している人の数の割合にほぼ連動している。ポータルサイトによるニュース配信サービスでも一部行われているが、ソーシャルメディアを利用するのと同じ感覚で読めるよう、ダイジェストでの提供が多いため、他人との交流をするかのように目を通している人も多分にいるのだろう。要は知人とのやりとりも、ニュース媒体経由からの情報取得も、同じ情報の斜め読み的な感覚で接しているものと考えられる。

多様な意味で注目を集めているキュレーションサービスだが、こちらは全体で20.3%と少なめ。ただし中年層以降でいくぶん利用率が高く、全年齢階層で新聞社による無料サイトを超えるほどの利用率を示している。

一番使っているのはどれだ?

これら新聞・ニュースサイトのうち、どれを一番使っているかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ もっとも利用しているニュース・テキスト系媒体(2022年)
↑ もっとも利用しているニュース・テキスト系媒体(2022年)

全体ではポータルサイトによるニュース配信がトップで4割台後半、ソーシャルメディアによるニュース配信が1割台後半、紙の新聞も1割台後半、以上がトップ3。

年齢階層別動向では、10代はポータルサイトによるニュース配信がトップで4割、次いでソーシャルメディアによるニュース配信が3割強。20代ではソーシャルメディアによるニュース配信がトップになる。30代以降はポータルサイトによるニュース配信のウェイトが高まり、ソーシャルメディアによるニュース配信は減少していく。30代から50代まではポータルサイトによるニュース配信が最大値を示すが、年齢とともに紙の新聞の値が増加し、60代ではポータルサイトによるニュース配信を超えて最大値となる。また、10~30代では紙媒体の新聞を挙げる人が数%にとどまっているのは注目に値する。

トップの媒体のみを挙げると、20代はソーシャルメディアによるニュース配信、10代と30~50代はポータルサイトによるニュース配信、60代は紙の新聞となる。新聞社の有料・無料サイトは「もっとも利用している」の選択としてはほとんどゼロ、誤差範囲でしかない。キュレーションサービスは1割足らず。

新聞社自身のニュースサイトは有料版がほとんど使われず、無料サイトも利用率は想像以上に低い。やはりまとめて一度に確認ができるポータルサイトによるニュース配信、そして常用しているソーシャルメディアによるニュース配信の利便性に、多くの人が魅力を覚えているようだ。

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※令和4年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

今調査は2022年11月5日から11月11日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「経年での利用時間などの変化については、調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きを入れている。さらに2020年分の調査については「令和2年度調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、11都府県を対象とした緊急事態宣言下で行われたものであることにも留意が必要」との補足があった。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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