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史上最年少名人候補・藤井聡太竜王(19)A級初戦勝利! 名古屋将棋対局場で佐藤康光九段(52)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月22日。愛知県・名古屋将棋対局場において▲藤井聡太竜王(19歳)-△佐藤康光九段(52歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は0時2分に終局。結果は101手で藤井竜王の勝ちとなりました。

 今期からA級に参加した藤井竜王は難敵を降して好スタート。史上最年少での名人位獲得に向け、大きな一歩を踏み出しました。順位戦通算成績はこれで驚異の50勝3敗(勝率0.943)です。

 そして本局は名古屋将棋対局場、記念すべき最初の対局。愛知県瀬戸市在住でホームの藤井竜王は、ここでの初勝利を飾りました。

 藤井竜王と佐藤康光九段の対戦成績は、藤井2連勝となりました。

藤井竜王、正確な終盤で制勝

 日本将棋連盟会長を務める佐藤九段。本局は和服で臨みました。一方の藤井竜王はスーツです。

 まず注目されたのは、後手番・佐藤九段の作戦でした。本局では向かい飛車から、9筋隅に玉を収めて穴熊に組みます。

 一方、居飛車の藤井竜王は8筋一段目に玉を配し、地下壕にもぐるような形にして、金銀4枚で固めます。

 スローペースの序中盤のあと、6筋が争点となって戦いに。そこで藤井竜王に攻めの好手が出て、激しい折衝のうちに形勢をリードしました。

 しかし佐藤九段は端9筋、タダで取られるところに香を放り込む勝負手で迫っていきます。藤井玉もにわかに危ない形となり、白熱の終盤に入りました。

 検討陣からは千日手の変化も現実的に語られ始めた中、藤井竜王は正確な速度計算に基づいて、きっぱりと勝ちにいきます。

 佐藤九段は最後、今度はタダで取られるところに角を打ちます。取ったり、誤った合駒をすれば藤井玉は頓死。しかし藤井竜王は正確に香を打って合駒をし、これで藤井玉は詰みません。佐藤九段は6時間の持ち時間をすべて使いきったあと、投了を告げました。

【追記】本局と並んで名古屋将棋対局場で指されていたB級2組1回戦▲佐々木慎七段(42歳)-△杉本昌隆八段(53歳)戦は0時31分、221手で佐々木七段の勝ちとなりました。東海地区の中心であり、また藤井竜王の師匠である杉本八段。敗れたりとはいえ、記念すべき「こけら落とし」の日に、大熱戦を演じました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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