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アギーレは鉄拳制裁もいとわない熱血監督

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員

サムライ・ブルーには適任者

ハビエル・アギーレ氏の日本代表監督就任が決まった。彼の母国メキシコでは就任発表日、テレビのスポーツ番組やネットメディアがトップニュースでこれを報じた。リーガ・エスパニューラで12年、4チームを率いて実績を残し、02年と10年大会のW杯予選ではメキシコ代表の危機を救ったカリスマの指揮官。「海外でもっとも実績を残しているメキシコ人監督がエキゾチックな異国で第5試合目(ロシアW杯のベスト8)進出を目指す」(テレビ、ラジオ、新聞で活躍するサッカージャーナリスト、フェルナンド・シュワルツ)といった論調が主流だ。

シュワルツ記者はアギーレ監督がリーガで最後に指揮を執ったエスパニョールでアシスタントを務めたアルフレド・テナ氏のコメントを紹介しながら、果たしてアギーレ氏が日本代表とどう接して行くかを記している。ちなみにテナ氏はアギーレ氏と同じ元メキシコ代表選手で、同国の人気クラブ、アメリカなど複数のチームで監督を務めた人物である。

その中でテナ氏はまず「ハビエルは以前アメリカに住んでいたこともあって英語が完璧に話せる。もし日本選手たちが英語を理解できるなら、コミュニケーションの問題はないだろう。相当きわどい表現も知っている」と明かす。また「メキシコ代表監督に就任した時は2度ともかなり緊迫したシチュエーションだったけど、日本とは4年という長期間の仕事になるから周囲からの要求は緩和されるだろう」と見ている。

指導の特徴としてテナ氏は“トーク上手”を挙げる。「選手がいいプレーをすれば、ハビエルは美辞麗句を並べてとにかく誉める。彼のトークが選手のモチベーションを駆り立てる役目を発揮する。同時に現場では多くのパターンを反復させる。練習前にはビデオをたくさん使い、言葉で説明するよりイメージで体得させるタイプ。これは日本人たちに対しても同様だろう。フィジカルトレーナーにも基本を入念に説明させるね」

メキシコの高級紙といわれるエクセルシオルも「エスパニョールでは映像を使ってモチベーションアップを図るのがうまかった」と報道。「それは練習前、各ポジションごとにグループをつくり行っていた」と伝える。そして「彼の戦術は向こうに(日本)適合するだろう。日本の挑戦とメキシコのそれは似ている。そう、W杯の第5試合を目指すことだ」と言及する。

アギーレが正しい

同紙は前記のテナ氏にも接触。「ハビエルは常日頃、彼の夢を語っていた。それはプレミアリーグで指揮を振るうことで、具体的にニューキャッスルの名前も挙がっていたようだ。でも日本のオファーはとても魅力的だった」。就任承諾の決め手はやはりマネーだったのだ。

知り合いのメキシコのフリーライターはこう言う。「確かに地区予選ではミラクルを連発し、とても評価される。ただし本大会では2回とも必ずしも国民の期待に応えられなかった。ファンはマヌエル・ラプエンテ(フランス大会)、メヒア・バロン(米国大会)、ミゲール・エレラ(ブラジル大会)といった代表監督たちの方をより評価している」

10年の南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦では不可解な選手起用が目立ち、国民に不信感を植え付けたという。また02年の日韓大会ではFWのフランシスコ・パレンシアと意見が食い違い、殴り合いが発生したエピソードさえある。いったん点火すると熱くなり過ぎる性格は日本代表とどんな化学反応を起こすのだろうか。

最後に名前の発音だが、ア・ギ・レと区切った場合、アクセントは2音節目に入る。従って日本語表記では「アギーレ」が正解だろう。また“レ”は“rre”だから巻き舌で江戸っ子調に?発音する。「あぎーれっ」という感じだろうか。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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