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特急カムイ・ライラック号のライバル!? 1日35往復運行「札幌―岩見沢間」高速バスの実情は・・・

鉄道乗蔵鉄道ライター
札幌駅前バス停で乗客を乗せる高速いわみざわ号(筆者撮影)

 JR北海道の特急すずらん号(札幌―室蘭間)の全席指定席化と割引切符のえきねっとでの販売の一本化に続いて、特急カムイ・ライラック号(札幌―旭川間)の全席指定席化と割引切符のえきねっと販売の一本化が危惧されていることについては、2024年8月18日付記事(いつまで残る!? 札幌―旭川間を結ぶ「特急カムイ・ライラック号」自由席と窓口販売の往復割引切符)で触れた。

 一般的には、バスよりも鉄道のほうが定時性や速達性の面からバスよりも集客面で秀でている交通機関といえるが、販売方法と値付けを間違えてしまえば乗客の流出を招くこともあり、その問題が特急すずらん号の問題で顕在化している。

 特急カムイ・ライラック号は、札幌と旭川をおよそ1時間半で結ぶ都市間特急列車であり、その途中では岩見沢、美唄、砂川、滝川、深川と北海道空知地方の主要都市にも停車する。そして、この各都市には札幌との間を結ぶ高速バスも設定されている。

 これらの高速バスは特急列車の競合相手ともなるが、筆者はこのうち北海道空知地方の中心都市である岩見沢市と札幌市を結ぶ高速いわみざわ号に乗車したので、今回はこの時の様子を紹介したい。

札幌駅前を発車する高速いわみざわ号(筆者撮影)
札幌駅前を発車する高速いわみざわ号(筆者撮影)

岩見沢市は北海道空知地方の中心都市

 北海道岩見沢市は札幌市から40kmほど西に位置する北海道空知地方の中心都市で北海道庁の出先機関である空知総合振興局が置かれている。人口は約7万5千人だ。1878年に、明治初期に北海道の行政機関であった開拓使がこの地域の道路開削の際に官営の休憩所が置かれたことがきっかけとなり開拓が進むことになった。1882年には官営幌内鉄道が全線開通したことにともなって岩見沢駅が設置され、岩見沢駅を中心に市街地が形成されていった。

 JR北海道は札幌―岩見沢間に日中は毎時2本の普通列車と毎時1~2本の特急列車を運行しており、普通列車では40分強、特急列車では25分で両都市を結んでいる。さらに、北海道中央バスも札幌駅前―岩見沢ターミナル間に高速いわみざわ号を日中に毎時2~3本を運行しており両都市を50分ほどで結んでいる。高速いわみざわ号として運行されるのは1日33往復。さらに岩見沢ターミナルから先の三笠にまで足をのばす高速みかさ号も2往復運行されている。札幌駅前―岩見沢ターミナル間はJR北海道の普通列車と同額の970円で利用できる。

いざ高速いわみざわ号に乗車

高速道路からの車窓には石狩平野が広がる(筆者撮影)
高速道路からの車窓には石狩平野が広がる(筆者撮影)

 筆者は高速いわみざわ号に乗車したのはお盆終盤のお昼過ぎの便。札幌駅前の高速バスのりばに向かうと既に数名の乗客が列をなしており、最終的に10名弱の乗客を乗せて出発した。札幌駅前を発車すると、バスは途中、札幌市中心部の大通地区にある北海道中央バスの札幌ターミナルに立ち寄り、道央自動車道の札幌インターへと向かう。

 札幌駅前から札幌インターには20分ほどで到達する。札幌インターは札幌市の市街地のはずれに位置していることから、ここから道央自動車道に入ると、バスの車窓には広大な石狩平野の風景が広がった。道央自動車道の制限速度は時速100kmに設定されており、筆者が乗車したバスもあっという間に時速100kmまで加速する。道央自動車道の高速道路上には、(高速)野幌バス停と(高速)栗沢バス停の2つの停留所が設置されていることも特徴だ。

 高速道路に入って10分ほどで到着した野幌バス停では1名の乗客が下車。高速道路上の野幌バス停は江別市野幌地区の住宅街の南端に位置しており、函館本線の野幌駅からも2kmほどの距離があることから、野幌バス停付近に住んでいる住民は、札幌まで出るのに高速バスを利用しているようだった。そして、岩見沢市栗沢町にある栗沢バス停は通過し、バスは岩見沢インターから一般道へ。

 高速道路をおりて最初のバス停の駒園8丁目で大半の乗客が下車していった。駒園8丁目のバス停も住宅地の中にあったが、岩見沢駅から3kmほど離れていることから、近隣の住民は札幌に出る際にはJRよりも高速バスの方を選択している様子であった。国道12号線沿いの次の市立病院前バス停で残りの1名が下車し、岩見沢駅前にある終点の岩見沢ターミナルまで乗り通したのは筆者1名だけであった。

 高速いわみざわ号は、JRの駅から比較的距離のある江別市野幌や岩見沢市駒園の住宅地に住んでいる方がメインの乗客であり、全体の乗車を通して筆者はJRの利用者と高速いわみざわ号では棲み分けができているという印象を受けた。

駒園8丁目バス停(赤ピン)とJR岩見沢駅の位置関係(Google Maps)
駒園8丁目バス停(赤ピン)とJR岩見沢駅の位置関係(Google Maps)

特急カムイ・ライラックが全席指定席化したらどうなる!?

 特急カムイ・ライラック号が、全席指定席化と割引切符の販売制限のあるえきねっと販売の一本化へと舵を切った場合には、札幌―岩見沢間には毎時2本の普通列車が運行されていることから、これまで特急列車を利用していた乗客はそのまま普通列車に逃げてしまうことが予想され、同区間での客単価の下落を招きかねないだろう。

 高速バスのメインの乗客は駅から離れた住宅地の住民でありJRと棲み分けが出来ていることに加え、札幌ー岩見沢間には十分な本数の普通列車が設定されていることがその理由だ。

 札幌―岩見沢間の特急列車の自由席往復割引切符(Sきっぷ)は、往復1,980円(片道あたり990円)の設定で、当日、自由席に飛び乗る場合には、乗車券970円に対して、自由席特急料金630円を追加で支払えば特急に乗車できる。しかし、全席指定席化されてしまうと追加の特急料金は1,160円となり、乗客の特急利用に対するハードルは上がり、普通列車に大半の乗客が流れてしまうことになりかねない。

岩見沢ターミナルに到着した高速いわみざわ号(筆者撮影)
岩見沢ターミナルに到着した高速いわみざわ号(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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