いつまで残る!? 札幌―旭川間を結ぶ「特急カムイ・ライラック号」自由席と窓口販売の往復割引切符
札幌―室蘭間の特急すずらん号は全席指定席化で利用者激減
JR北海道の2024年3月のダイヤ改正で、特急列車の指定席が拡大され一部列車での窓口での往復割引切符の販売が廃止となった。乗車時間が2時間半を超える帯広・釧路方面の特急とかち・おおぞら号、函館方面の特急北斗号では、全席指定席化と割引切符のえきねっとでの販売へ比較的スムーズに移行できた様子であるが、乗車時間が1時間半程度の室蘭方面の特急すずらん号では、全席指定席化と割引切符のえきねっとでの販売一本化がうまくいかなかったようで、ダイヤ改正以降、すずらん号の乗客が消滅し、ガラガラの車内の様子が連日SNSやYouTube上にアップされ続ける事態となっている。しかし、JR北海道はこうした状況が続いているのにもかかわらず、特急すずらん号の切符の販売形態を見直そうとする気配は一向にない。
特急すずらん号の利用がダイヤ改正以降低迷しているのは、えきねっと割引では前日までの予約が必要で発券後の変更ができないこと。当日の購入では、3月のダイヤ改正前に発売されていた自由席タイプの往復割引切符の約2倍の運賃・料金となることから、手軽に利用しにくい列車となってしまい、多くの乗客が高速バスや普通列車に流れたためだ。特急すずらん号はこうした使い勝手の悪さから、出張利用の際にJRの特急すずらん号の利用を取りやめ高速バスに切り変えた会社もある。
札幌―旭川間でも心配される特急すずらん号の二の舞
札幌―旭川間を結ぶ特急カムイ・ライラック号については、3月のダイヤ改正以降は自由席者が減車となった一方で、えきねっと割引の切符に加え、窓口での往復割引切符(Sきっぷ)の販売は継続されている。しかし、一部の時間帯の列車では、減車された自由席に乗客が殺到するなどの弊害も見られる。
特急カムイ・ライラック号についても、これまでのJR北海道の流れから全席指定席化と割引切符のえきねっとへの一本化がそう遠くないうちに行われるのではないかと言われている。しかし、札幌―旭川間の所要時間は1時間半程度と比較的短く急な出張利用なども多いことから、全席指定席化と割引切符のえきねっとへの一本化は特急すずらん号の二の舞になるのではないかという懸念の声もある。
現在、札幌―旭川間は自由席往復割引切符(Sきっぷ)が5,550円(片道あたり2,775円)で発売されており、北海道中央バスが運行する高速あさひかわ号は2,500円の運賃が設定されている。所要時間は、特急列車の約1時間半に対して高速バスは約2時間となる。特急カムイ・ライラック号も特急すずらん号のように全席指定席化と割引切符の前日予約のえきねっとへ一本化した場合、当日購入の札幌―旭川間の運賃・料金は5,220円となることから、客離れが心配される。
先日、筆者は特急カムイ・ライラック号に自由席往復割引切符(Sきっぷ)とえきねっと割引の双方を活用して札幌―岩見沢間に乗車した。例えば、札幌―岩見沢間では乗車券970円に対して、自由席特急料金630円を追加で支払えば特急に乗車できることから、車内で特急料金を精算している乗客もみられたが、これが全席指定席化されると追加の特急料金は1,160円となり、乗客の利用に対するハードルは上がり、特急すずらん号同様に高速バスや普通列車に乗客が流れてしまうだろう。
なお、自由席往復割引切符(Sきっぷ)は、札幌―岩見沢間では往復1,980円(片道あたり990円)の設定で、北海道中央バスが運行する高速いわみざわ号はJRの乗車券と同額の970円に設定されている。
頓挫した「幻の経営改革チーム」
北海道ローカル経済紙「財界さっぽろ」が2024年8月号で報じたところによると、国土交通省はJR北海道への監督命令と財政支援とともに、国土交通省幹部をJR北海道に役員として送り込み、その直下に弁護士や企業再生の専門家からなる「経営改革チーム」の設置を検討していたが頓挫したという。
JR北海道の鉄道事業の屋台骨ともいえる都市間特急列車については、それぞれの列車の特性を見極めたうえで、利用しやすい販売方法と値付けによって都市間以上に対する潜在需要を掘り起こして利用促進につなげていくことが本来の筋であるが、現在のJR北海道には便利で愛される鉄道の実現に向けての自浄作用を期待できるのであろうか。
(了)