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南米ペルーで20年来の洪水発生 エルニーニョの兆し

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
洪水で壊れた家屋 (ペルー・リマ、3月19日)(写真:ロイター/アフロ)

世界有数の雨の少ない国として知られる、ペルー。例えば首都リマの年間降水量はたったの15ミリで、これは東京の100分の1に当たります。

しかしこのペルーに、昨年末から豪雨が降り続き、20年来とも言われる深刻な洪水や土砂災害が発生しています。これまでのところ、75名が死亡、10万人が家を失ったとも伝えられるのです。

20年ぶりの大洪水

これはまるでセピア色に加工した映像のようにも見えますが、そうではありません。この動画には泥流に巻き込まれた女性が、瓦礫をつたって、命からがら逃げる様子がとらえられています。このところこうした衝撃的な映像が、次々とペルーから配信されているのです。

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ペルーでは、平年の10倍も雨が降ったところもあり、また国内のおよそ半分に非常事態宣言が出されています。大雨の結果、物価が5%も跳ね上がった、囚人が刑務所から逃亡した、洪水によって墓から遺骨が流されたなど、耳を疑うような事態が起きているのです。

エルニーニョ=ペルー沖の海水温が異常に高いこと

ところで今回の洪水は、1998年以来の最悪の洪水と言われています。この年も大雨によって洪水や土砂崩れ等が相次いで起こり、370人以上の人々が亡くなりました。その背景にあったのは、史上最強のエルニーニョでした。

海水温の平年差(3月20日)。NOAA
海水温の平年差(3月20日)。NOAA

今回の豪雨の一因もまた、ペルー沖の海水の異常高温にあると指摘されています。上の図は20日(月)の海水温の平年差を表していますが、いつもの年より3℃以上も高くなっており、これにより空気中に大量の水蒸気が補給されて雨が多くなっていると考えられるのです。

アメリカ気候予測センターは先月、ラニーニャは終焉を遂げたと発表しました。今の状態は、ラニーニャでもエルニーニョでもない「ラナーダ(スペイン語で“無”の意味)」と呼ばれています。しかし、1月に入ってからペルー沖の海水温が急上昇しており、エルニーニョに移行しつつあるようなのです。

同センターは今年9月以降50〜55%の確率でエルニーニョが始まると予測しています。エルニーニョからラニーニャ、そして間髪いれずにすぐにエルニーニョになることは、1980年代以降、一度も起きていません。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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