突然の訃報に驚きながらも、今季公式戦を勝利で締めた小虎《9/23 阪神ファーム》
きのう23日は、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアムでオリックスと対戦しました。これが阪神ファームにとって今季最後の公式戦で、阪神ファンもオリックスファンも多勢つめかけ、外野芝生席も開放されたくらい!観衆5116人の大盛況でした。
試合は阪神がリードしたまま後半に入り、横山投手がリリーフで好投を見せていた頃、インターネットのニュースを見た方から、その情報を聞きました。耳を疑い、何度も聞き返しました。そのあとの試合も、終わってからの取材も、ひとりになった帰り道も…どこか上の空だったような気がします。
今朝になって『阪神の中村GMが急死』という活字を見ても、まだ信じられません。MBSラジオでしゃべらせていただいていた頃から、解説者として、あるいは阪神タイガースの監督として、本当にお世話になりました。監督時代が長かったので、いまだに「監督」と呼んでしまうこともあって。球場でお会いしたら「ああ、おかもっさん。元気?」と笑顔を向けてくださる中村さん。柔らかく響く低音が魅力ですが、冗談を言う時に裏返る声や「あははは!」と大きな身振りで笑われる姿も印象に残っています。あす鳴尾浜に行けばまた、穏やかな顔とバリトンボイスが聞けると思えてなりません。
思い出されることは数々あるけど、まだ過去形では表現できないので…。時間を経て、もし何かの機会があれば書かせていただきます。なお、阪神ファームのベンチは試合途中に訃報が届いたとか。中には試合後に聞いた選手もいたようです。誰もが驚き、戸惑ったことでしょう。試合後もいつもとは違う雰囲気でした。監督やコーチ、選手たちのコメントはのちほどご紹介します。
では、お待たせしました。阪神にとって今季最後のウエスタン公式戦・オリックス戦の結果です。
《ウエスタン公式戦》9月23日
オリックス-阪神 最終29回戦 (佐藤薬品)
阪神 103 001 000 = 5
オリ 020 000 000 = 2
◆バッテリー
【阪神】守屋-小嶋-○横山(6勝4敗)-筒井-鶴-S石崎(3勝5敗10S) / 小豆畑
【オリ】●鈴木(1敗)(2回0/3)-古川(2回)-中山(2回)-大山(1回)-塚原(2回) / 若月
◆二塁打 竹原
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率
1]指:西岡 (3-2-0 / 0-1 / 0 / 0) .556
〃走指:植田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .200
2]右:緒方 (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .231
〃打右:中谷 (2-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .290
3]遊:北條 (4-1-1 / 2-1 / 0 / 1) .243
4]左:ペレス (3-0-0 / 1-2 / 0 / 0) .315
〃左:柴田 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .352
5]三一:陽川 (4-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .213
6]二:荒木 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .178
〃打二:森越 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .281
7]中:横田 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .213
8]一:西田 (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .223
〃打一:黒瀬 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .201
9]捕:小豆畑 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .227
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率)
守屋 2.2回 50球 (4-1-3 / 2-1 / 4.75)
小嶋 0.1回 1球 (0-0-0 / 0-0 / 4.46)
横山 4回 40球 (2-3-0 / 0-0 / 2.36)
筒井 0.0回 4球 (0-0-1 / 0-0 / 2.34)
鶴 1回 15球 (1-0-1 / 0-0 / 3.58)
石崎 1回 15球 (0-0-1 / 0-0 / 4.21)
試合経過
まず1回、阪神は制球の定まらないオリックスのルーキー・鈴木から3四球を選び、1死満塁として陽川の中犠飛。ノーヒットで1点を先取しました。2回に守屋が逆転されたものの、3回には西岡が右前打、緒方は中前打で一、三塁となり北條が中前タイムリー!ここで投手交代。1死後に陽川のショート内野安打で満塁となり、代打・森越は一ゴロ。これを奥浪がエラーして、二塁から北條も生還。この回、3連打と相手エラーで3点を奪い、逆転に成功です。
6回にも小豆畑が中前打、西岡の右前打で一、三塁として代打・中谷の右前タイムリー!2死からの3連打で追加点を挙げています。7回はペレスの四球と森越の左前打があったものの無得点。8回からはオリックス5人目の塚原に、ピシャリと3人ずつで片付けられました。
変わって投手陣。先発の守屋は1回、吉田雄に中前打されますが、カラバイヨを遊ゴロ併殺打に打ち取って無失点の立ち上がり。しかし2回、竹原と奥浪に連続四球を与え、1死後にチャベスの三ゴロで二塁をアウトにするなど2死一、三塁。続く若月の遊ゴロは内野安打となり、竹原が生還。ショート北條の二塁への送球が逸れて三塁へ進んだチャベスを、次の山本のショート内野安打で還しました。タイムリー内野安打2本での2失点ですが、自責は1です。
3回も先頭に四球を与えた守屋。カラバイヨの遊ゴロで併殺を取れず、竹原の右中間二塁打(猛然と走ってきた横田は残念ながら届きません。ライトの緒方が処理)で1死二、三塁とピンチを迎えます。奥浪が三ゴロで2死となったところでも守屋は降板。代わった小嶋は小島を(…ややこしい)1球で中飛に仕留めて無失点でした。
4回からは、横山が投げて4イニングを0点に抑えています。4回は先頭のチャベスに左前打されるも、遊ゴロと遊ゴロ併殺打。5回は三者凡退。6回は2死から小島にセカンド内野安打を許しただけ。7回はまた三者凡退と見事な内容!
8回は筒井が登板して、代打・武田にストレートの四球を与え降板。ついで鶴がカラバイヨに右前打されますが、代打・鉄平は遊ゴロ併殺打。奥浪への四球で2死一、三塁とするも小島を二ゴロに打ち取り0点です。9回は石崎。内野フライ2つで2死を取ってから、山本に四球を与えはしましたが、際どいボール。最後は岩崎を、しっかり二ゴロに打ち取って試合終了です。
陽川、北條は反省の言葉
試合後のコメントは、やはり中村GMの訃報に接しての言葉が多くなりました。合わせてご紹介します。また、これが今季最終戦だったので本来なら監督の総括もあるところですが、後日うかがうことになっています。しばしお待ちください。
まず陽川選手です。前日は2点タイムリー二塁打、この日は中犠飛と、ともに初回の先取点を挙げました。ただし、バッティングの調子について聞かれ「そんなに上がってはいないですね。きょうも甘い球をミスショットしてしまった。そこを仕留めないと」と話しています。
次に北條選手。2回に痛いエラーをしたものの、以降は素晴らしい守備を連発して3度の併殺にも貢献!とはいえ本人は「エラーした…最悪や…」と繰り返すばかりです。「グラウンドが悪かったんで、いつも以上に集中しました」とのこと。「でもエラーした。最悪」。そのあとはよかったでしょう?「たまたまです」。なるほど、反省の一日のようで。
ルーキーの3投手のコメント
先発した守屋投手に、2回がもったいなかったですねと声をかけると「先頭のフォアボール、それに尽きます。3回もそうでした」と反省の言葉。守屋投手は訃報を試合後に聞いたそうで、入団時以外はそれほど会うことはなかったかと尋ねたら「そんなことないですよ。試合中チャートをつけている時に、よく話をさせていただきました。頑張れよと励ましていただいたり。しっかり頑張らないといけないですね」と神妙な面持ちでした。
ロングリリーフで素晴らしいピッチングを披露した横山投手。「普通です」と言いつつも、納得の表情を見せています。よかった点は?「フォークで決められたことと、ストライク先行でいけたこと」。悪かったのは?「特に目立った点はありませんね。抜ける球が何球かあった、そこだけです」。中村GMの件は試合中に聞いたそうで「びっくりしました。1軍でお会いしたときは普通だったのに…」と。中村GMが担当した最後のドラフト1位選手、ということになってしまいましたね。「そうですね。そういう思いもあります。しっかり応えられるように頑張ります」
石崎投手は、2日前のオリックス戦(神戸サブ)の9回にも登板して、2死から連打や四球で満塁として、岩崎選手に2点タイムリーを浴びて同点、続く代打・鉄平選手にもタイムリーでサヨナラ負けを喫しました。しかし、この日は最後の岩崎選手をしっかり打ち取って10セーブ目!ソフトバンク・飯田投手、広島・ザガースキー投手と並ぶ、リーグ最多タイとなっています。他の2人はまだ残り試合が3つあるので確定ではありませんが、阪神の唯一の個人タイトル候補。なんとか取ってほしいですねえ!という石崎投手なのに、試合後のバタバタで話は聞けずじまい。すみません。
監督、コーチ、掛布DCも動揺は隠せず
ここからは中村GMに関する談話です。古屋監督は「6回かな、聞いたのは。午後3時過ぎくらいに、マネージャーがネットのニュースで出てると。まだ信じられないもん。オリックスの時もGMされていて、お世話になった、兄みたいな存在です。信じられない。びっくりしかない」と話しています。
中村監督時代に現役選手として深くかかわった八木打撃コーチも「試合中に聞いたけど、突然のことなので何もわからない。びっくりしているとしか…。チームがこういう状態なので、動揺するかもしれないけど我々がしっかり気持ちを入れて対応しないと。ご冥福をお祈りするしかないですね」と、やはり戸惑いは隠せません。あと一歩で優勝を逃した1992年9月、『八木選手の幻のホームラン』と中村監督の猛抗議が思い出されます。
藤本守備走塁コーチは「びっくりしました。何もわからないので」とひとこと。濱中打撃コーチに聞くと「オリックスの時に取ってもらったんですよ。あの時、中村さんがオリックスのGMされてたんじゃないかな。トレードで取ってもらったこと、今回はコーチに引っ張っていただいたこと、感謝しています。思い出はいっぱいありますよ。でも、あまりにも急すぎて。この前も球場でしゃべったばかりだったのに」と、少し目が潤んでいました。
最後は掛布DCです。「突然だったのでコメントのしようがない。先日も電話でいろいろ話したところ。(ニュースを見た)いろんな人から電話やメールがありました。きのう東京ドームに行っていたけど、話はしていなくて。入団前のテストの時から、可愛がってもらった。現役も一緒にやってきたし、話す機会は多かった。若手をどうするとか、強くしたいという思いを感じた。あまりにも身近すぎて冷静に受け止められない。嘘だと思っている。信じられない部分もある」
掛布DCも心配されていましたが、これからドラフト会議などもあり、大変な時期に向かいます。その前に、残り試合で1つでも多くの白星を。みんながそんな思いを抱えて戦うでしょう。そうしたら、あの柔和な笑顔がまた見られるような気がして。