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日本のロビー外交はベルリンでは「敗北」したが、コロラドでは「勝利」 慰安婦像設置阻止に成功!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ドイツのベルリンの中心地・ミッテ区に設置された慰安婦像(在独コリア協議会提供)

 在米韓国人団体が米コロラド州オーロラ市の市庁前の公園に慰安婦像の設置を推進していたが、市議会の反対で設置されないことになった。

 同市は人口30万人ほどの小さな市だが、韓国系住民が多数居住している。慰安婦像の設置は韓国系住民が今年4月9日に設立した非営利団体「少女像記念財団」(呉グムソク理事長)が推進していた。

 呉理事長は一昨年、オーロラ市に対して韓国の独立運動記念日の3月1日を「柳寛順(獄死した女性独立運動家)の日」に定めることに成功したことから次の目標として慰安婦像の設置を計画し、これには韓国からも元慰安婦の李容洙さんらが協力し、オンラインで設置を呼び掛けていた。

 先月28日に財団から市議会に設置嘆願書が提出されたことで市議会が今月7日に審議した結果、財団の期待に反し、市会議員10人全員が「オーロラ市の公共の土地に少女像を建てる理由が不十分である」と反対し、不許可となった。議員らは「地域の問題を扱う地方議会は外交政策を管轄していない」「日韓の係争に関わるべきではない」として全員一致で反対したと、現地では伝えられている。

 AP通信によると、市議会は「これら記念物は平和的デモだけでなく敵対的なデモ、器物破損、アジア系ヘイト、法的措置など多様な反応を引き出している。該当記念物を市の所有地に置くのは適切でない」との立場をマイク・コフマン市長に伝えたとのことだ。

 ところが、現地の韓国系住民向けメディア「コロラド・タイムズ」が「否決されたのは日本政府が今月初めからオーロラ市と議員らに圧力を掛けたため」と報じたことで本国・韓国が素早く反応。「聯合通信」や「SBS」、「毎日経済」などメディアが一斉に「コロラド州の平和少女像設置霧散・・・日本の強力な反対・圧力」の見出しを掲げてこの件を伝え、また大手保守紙「東亜日報」も「米国の少女像設置霧散・・・日本は政府の組織的圧迫 韓国は民間次元」との見出しで取り上げ、怒りの矛先を日本政府及び事態を傍観した韓国政府に向けていた。

 「コロラド・タイムズ」によると、日本の駐デンバー領事館から市側に「慰安婦問題は日韓間の問題である」として「議会の案件から慰安婦設置の件は削除してほしい」との要求があり「こうした圧力が市議会の決定に影響を及ぼした」とされている。

 呉理事長自身もまた「日本は『この問題は日本と韓国の問題なのになぜ、関わろうとするのか』と市長や議員らに猛烈に圧力を掛ける一方で懐柔もしていた」と韓国のメディアに語り、その根拠として「『柳寛順の日』が定められた後、日本の総領事が2度も市長を訪れ、市と市議会に『外交的摩擦を起こしかねない』と圧力を掛けていた」と主張している。

 市議会議員の一人は韓国メディアとの電話インタビューで「駐デンバー日本の領事館から市議員らに対して日本の立場の説明があった」と語っているところをみると、圧力ではなく、要望のようだ。実際に日本の要望は「慰安問題については認知しており、政府次元ですでに被害者や遺族に補償しているので設置を許可しないように」との内容だったと市議は語っている。

 日本は昨年ドイツの首都・ベルリン市の中心地、ミッテ区の慰安婦像設置は阻止できなかったが、どうやら今回は日本のロビー外交が功を奏したようだ。

 官民挙げてのロビー外交では日本は韓国には勝てないと言われていたが、必ずしもそうとは言い切れない。日本もまた、慰安婦問題で攻勢を掛ける韓国に対抗し、陰に陽に活発なロビー活動を展開してきた。

 ニューヨーク駐在の日本の総領事館は2019年2月、米国の広報戦略コンサルティング会社である「Marathon Strategies LLC」と15日間の短期契約を締結し、積極的にPR活動を行っていた。また、日本政府の慰安婦関連対米ロビー活動の大部分は法律事務所「Hogan」と専門ロビー会社「Hecht」が代理している。

 この2社のロビー活動の内容にはロビイストらが接触した米国人の名前と地位、接触した日時、接触形態(eメール、電話、面談)など詳細な内容が記述されている。両社が慰安婦関連ロビー活動を始めた2001年から2019年までの間、全数データーで整理集計すると、全部で3,537件の米国人士と接触していた。

 慰安婦像設置を目指したオーロラ市の韓国系財団はサンフランシスコ駐在の韓国領事館に設置への協力を再三要請したが、領事館からは何の反応もなかったとのことだ。韓国政府は民間の問題には介入しない方針と伝えられている。

 財団はコフマン市長から「公共用地ではなく、私有地に建てられることが代案になり得る」と伝えられていることから「少女像を設置できる他の場所を探すように努力する」と断念せず、コロラド州の他の市に設置する考えを明らかにしている。

 現在、米国内の慰安婦像は2013年カリフォルニア州グレンデールを皮切りにジョージア州アトランタ市など15カ所に設置されている。

(参考資料:「慰安婦決議案を阻止せよ!」 米国での日本のロビー活動の実態(上))

(参考資料:「慰安婦決議案を阻止せよ!」米国での日本のロビー活動の実態(下))

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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