今年は集中豪雨が多い?
この夏、頻発する集中豪雨。その多くは日本海側で発生し、大小を含めて13回を数えます。連日、ニュースで報道されるためでしょうか、今年は特別に多いのではないか?とたびたび質問を受けます。でも、この答えはとても難しい。集中豪雨はいつ、どこで、どれだけの雨が降ったら、という厳密な定義がないからです。さらに、九州と北海道では雨の降り方がまったく違い、災害が起こる条件も、全国均一ではありません。そのため、最近まで集中豪雨の事例は統計的に扱われていませんでした。
集中豪雨は太平洋側で、7月から9月に多い
そこで、気象庁・気象研究所で行われている集中豪雨の事例調査を紹介しましょう。それによると、1995年から2009年までの15年間で集中豪雨は386事例あり、平均すると全国で一年間に約26事例、発生していることになります。今年は少なくとも13事例ですから、現時点では特別に多くはないようです。
一方、集中豪雨が発生しやすい場所は、九州から関東地方にかけての太平洋側が多く、九州山地、四国山地、紀伊半島は全国でも有数の豪雨地域です。しかし、この夏の大雨は日本海側で多く発生し、例年とは大きく違っていることがわかります。
次に、集中豪雨が起こりやすい時期を見てみましょう。最も多いのが8月で100事例、次いで9月の98事例、7月の94事例です。この3か月だけで、全体の7割以上を占めます。8月が過ぎれば大雨も終わりと安心するのは早すぎます。9月は台風シーズン、8月と同じくらいの頻度で集中豪雨が発生します。
島根豪雨は台風12号の影響大
先日(24日)の島根豪雨ではわずか3時間で約200ミリの雨が降りました。これは8月、1か月分の約1.5倍の雨量です。山陰沖に停滞していた前線に向かって、非常に湿った空気が流れ込み、雨雲を発達させたのですが、これには中国南部に上陸し、消滅した台風12号の影響がありました。台風は上陸すると勢力を弱め、その後天気図からは消えます。でも、台風が持っていた亜熱帯の空気はそのまま残り、西風に乗って日本列島に流れ込んだのです。
集中豪雨の原因をみると、半数が台風によるものです。今年は今のところ、台風の影響は小さいですが、油断は禁物と思っています。
【参考資料】
津口裕茂(2013):集中豪雨事例の客観的な抽出とその特徴・環境場に関する統計解析,平成24年度予報技術研修テキスト,96-107.