児童手当「18歳」まで引き上げ、第3子以降「月3万円」で「教育費」は足りる?
先日、政府が「児童手当の支給対象を18歳まで引き上げ」「第3子以降の支給を月3万円に増やし、対象年齢を、0歳~高校生に拡大する」方向での検討に入った旨の報道がありました。
第3子以降の児童手当が増額されることで、3人以上の子を希望する人もいるかもしれませんが、果たして第3子以降「3万円」で「教育費」は足りるのでしょうか。
■児童手当が増額されるとどうなる?
まず、現行の児童手当の支給額と、増額された場合の支給額について確認してみましょう。
<現行の児童手当の支給額>
・3歳未満一律15,000円
・3歳以上小学校修了前10,000円(第3子以降は15,000円)
・中学生一律10,000円
※児童を養育している人の所得が所得制限限度額以上、所得上限限度額未満の場合は、特例給付として月額一律5,000円。
出典:内閣府 児童手当制度のご案内(※1)
実際には、子どもの誕生月によって異なるのですが、単純に3歳までの3年間(36ヵ月)を15,000円、15歳までの12年間(144ヵ月)を10000円で計算すると、合計198万円になります。今後、高校卒業月まで月1万円の支給になると、3年間(36ヵ月)で36万円の上乗せになり、合計234万円になります。
第3子の場合は、こちらも実際には、子どもの誕生月などによって異なるのですが、単純に12歳までの12年間(144ヵ月)を15,000円、15歳までの3年間(36ヵ月)を10000円で計算すると、合計252万円になります。さらに、今後、0歳から高校卒業月まで月3万円の支給になると、18年間(216ヵ月)で648万円となります。
■第3子以降の「教育費」は「児童手当」で充分?
単純計算で、約650万円の児童手当が支給されるのであれば、第3子以降については「教育費の備えとして充分」と考える人もいるでしょう。確かに、現行に比べると第3子以降の支給額は大幅に増えています。
日本政策金融公庫の調査(※2)によると、大学の在学費用の平均は、国公立で約416万円、私立文系で約608万円、私立理系で約733万円となっていますから、私立理系ではやや足りないものの、国公立や、私立文系の大学に進学するなら充分と考える人もいるでしょう。
しかし、現行の制度のままであれば、児童手当の支給額は、高校卒業に相当する年齢(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもの数で決まることに注意しなければなりません。
満額支給されれば大変高額ですが、第1子が高校卒業に相当する年齢になると、第3子は第2子扱いになってしまい、支給額は減少してしまうのです。つまり、満額受け取れるのは3つ子など限られた場合のみで、第1子との年齢差があるほど、第3子として扱われる期間は短くなるということです。同じ第3子でも皆平等に同額支給されるわけではなく、むしろほとんどのケースで満額支給されることはないということに注意しておきましょう。
また、第3子以降、第4子、第5子と出産しても、上の子が高校卒業に相当する年齢になると「児童手当の対象となる子どもの数」としてカウントされなくなると、「第3子以降も出産を続ければ続けるほど月3万円の児童手当が支給される子どもが増える」とは限らないことにも注意が必要です。
その他にも、扶養控除廃止の可能性なども報道されていることから、安易に支給額の多さだけで判断するのではなく、子の数のカウント方法や税の仕組みなども含めた判断が必要になります。
まとめ
第3子を出産し、0歳から18歳まで月3万円の児童手当を満額の支給できれば大きな額になります。しかし、実際には「対象となる子のカウントの方法」が現行通りであれば、年齢差があるほど、第3子とはみなされない期間が長くなり、児童手当だけでは大学の費用のみでも賄えない可能性もでてきます。安易なぬか喜びにならないよう、今後の動向をしっかり注視していきましょう。
出典
※1 内閣府「児童手当制度のご案内(https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html)」
※2 日本政策金融公庫「令和3年度『教育費負担の実態調査結果』(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r03.pdf)」
文/家計簿・家計管理アドバイザー あき
著書に「1日1行書くだけでお金が貯まる! 「ズボラ家計簿」練習帖(講談社の実用BOOK)」「スマホでできる あきの新ズボラ家計簿(秀和システム)」他