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デオンテイ・ワイルダーが初回2分57秒でKO勝ち

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 「いい右だったな!」

 解説席に座っていた元WBA/WBC/IBF統一ヘビー級チャンピオン、レノックス・ルイスが勝者に声を掛ける。 

写真:Shutterstock/アフロ

 ニューヨーク、ブルックリンのバークレイズ・センターで行われたファイトで、元WBCヘビー級王者のデオンテイ・ワイルダーは、WBA同級2位のロバート・ヘレニウスを初回KOで下し、再起した。公式タイムは2分57秒。

 ワイルダーは、2020年2月にタイソン・フューリーに7回KOで敗れて王座から転落。1年前の再戦でも11ラウンドでストップされた。今回は1年ぶりのリングだった。

フューリーに2連敗したワイルダー
フューリーに2連敗したワイルダー写真:ロイター/アフロ

 過去にスパーリングで手を合わせている両者は、互いに相手を理解していたであろう。

 ワイルダーは言った。

 「ヘレニウスが出てくることは分かっていたので、そこに合わせた。素晴らしい試合になったな。キャンプの効果だよ。チームが俺に喜びをもたらせてくれたから、この結果に繋がった。今夜のために700ラウンドを超えるトレーニングをしたんだ。

 ブルックリンで勝利できて嬉しい。第2の故郷だから。ファンの愛とエネルギーを感じた。それって自分に必要なものなんだよ」

 確かに36歳の元王者は快勝した。しかし、両選手ともガードは低く、ワイルダーが1分21秒に放った大振りの右フックは、空を切った。シャープな動きとは呼べなかった。

 満面の笑みを浮かべたワイルダーは、WBA/IBF/WBO統一王者のオレクサンドル・ウシクやアンディ・ルイス・ジュニアと対戦するつもりがあると語った。バークレイズ・アリーナも盛り上がっていた。とはいえ、ヘビー級の低迷を伝えるファイトではなかったか。

写真:ロイター/アフロ

 解説を務めたレノックス・ルイスやマイク・タイソン、イベンダー・ホリフィールド、リディック・ボウが鎬を削った時代とは比較にならない。モハメド・アリ、ジョー・フレージャー、ジョージ・フォアマンの世代と比べれば、更に差がある。

撮影:筆者
撮影:筆者

 レフェリーとして、167試合の世界タイトルマッチ裁いたリチャード・スティールは、先日、「今日のヘビー級は本当にレベルが低いな……困ったもんだよ」と嘆いていたが、同感だ。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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