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「タイタニック」「アバター」の名プロデューサー、63歳で死去

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ジェームズ・キャメロン(右)と大ヒット作を送り出したジョン・ランドー(写真:REX/アフロ)

 ジェームズ・キャメロン監督とともに「タイタニック」、「アバター」、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」を世に送り出したハリウッドの大物プロデューサー、ジョン・ランドーが亡くなった。63歳。「Variety」が報じるところによれば、死因はガンとのこと。

 2022年末の「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の公開時には、プレミアにもお元気そうな姿で出席していた。「アバター」は、3作目が2025年12月、4作目が2029年12月、5作目が2031年12月に公開される予定。情熱と努力を費やしたシリーズを最後まで見届けることは、かなわなかった。ランドーは、キャメロン監督のプロダクション会社ライトストーム・エンタテインメントのCOO。

 筆者は「アバター」1作目のニュージーランドの撮影現場や「アリータ:バトル・エンジェル」のテキサス州オースティンの撮影現場、またほかの機会にも、ランドーをインタビューしている。いつも温かなエネルギーを持ち、経験の豊かさと機知に富む有意義な話をしてくれる人だった。

 キャメロン監督が90年代から構想を持っていたという「アバター」について、ランドーは、「私たちはテクノロジーが追いつくのを待たなくてはいけなかった。だが、今ついに、私たちは、まったく新しい世界を作り上げた。毎朝仕事に来るたびに、その新しい世界が、また少しできている。それを見るのはすごくエキサイティングだ。コンセプトアートや、誰かのデッサンだったもの、つまり紙の上に描かれていたものが、形になるんだよ」と述べていた。

「ハリウッドはここ30年、新しいユニバースを作ってこなかった。『バットマン』や『Xメン』も、もちろん悪くない。だが、観客はエスケープを求めている。彼らは、一度も見たことのない世界に行ってみたいんだ。私たちはそれを観客に提供したい」。

 しかし、「タイタニック」を爆発的にヒットさせたキャメロン監督の新作とあっても、斬新なアイデアの「アバター」を実現させるのは簡単ではなかったとも打ち明けている。

「スタジオは続編やコミックブックの映画化が好き。誰にでもすぐわかるから。なののに、僕らは、誰も聞いたことがない場所が舞台で、変な名前が出てきて、ブルーでしっぽがある主人公を出してきたいと言ったんだ。狂っているのかという目で見られたよ。私たちは、なぜこの映画を作るべきなのか、一生懸命説明しなければならなかった」。

「アリータ:バトル・エンジェル」の現場では、日本の原作漫画に対する敬意をしっかりと見せていた。

「私たちは、人々を漫画の世界に連れていきたい。原作のファンに『ああ、いかにもハリウッドっぽいことをやられちゃったな』と思われないようにしたい。この映画のアリータはあの大きな目をしていて、口は小さい。私たちは、『彼女の髪をブロンドにしてみよう』なんて考えたりしなかった。『ここを変えてやろう』などというふうにはアプローチしない。(原作者の)木城ゆきと氏は、多様性のある、すばらしい世界を創造してくれた。彼は私たちを独自の世界に誘い込んでくれる。私たちもその通りにやる」。

 1960年、ニューヨーク生まれ。両親とも映画、テレビのプロデューサー。南カリフォルニア大学で映画作りを学び、プロダクションマネージャーを経て、20世紀フォックス(当時の名称)のエグゼクティブに。1994年の「トゥルーライズ」でキャメロン監督と組み、1997年の「タイタニック」を、史上初の世界興収20億ドル超えの大ヒットに導いた。この映画で、ランドーとキャメロン監督は、オスカー作品賞を受賞。ほかにも10部門で受賞している。「アバター」、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」も、受賞は逃したものの、オスカー作品部門に候補入りした。「タイタニック」、「アバター」、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は、世界興収史上トップ5内に今も君臨する。

 ほかに手がけた映画は、「キャンパスマン」(日本劇場未公開)、「ディック・トレイシー」、「ソラリス」など。私生活では、40年近く連れ添った奥様との間に、ふたりの息子を持つ。

 ご冥福をお祈りします。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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