「調子は良くなかった」と語ったダルビッシュが、6回3安打1失点7奪三振と粘投できた理由
サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有が、4月6日(日本時間7日)に本拠地のペトコ・パークで行われたサンフランシスコ・ジャイアンツ戦で今季2度目の先発登板。
「全体的に調子は良くなかった」と言うが、6回を投げて3被安打、1失点、7奪三振の好投で地元サンディエゴのファンを沸かした。ダルビッシュは1対1で同点だった6回表終了後に降板したために勝ち負けはつかなかったが、7回裏にビクター・カラティニが勝ち越しの2点本塁打を放ち、パドレスが3対1で勝利。連敗を2で止めた。
「最後にカラティニがホームランを打って試合を決めたので、僕にとっても、彼にとっても良い日だった。ホームランを打つと、いつも嬉しそうに僕の方に来るので嫌なんですけど、チームにとっては良いので、すごく複雑な思いです」と女房役のカラティニの活躍にダルビッシュがジョークを飛ばすと、カラティニも「(ダルビッシュは)本当にひどい打者だから、まだ学ばないといけない。打者としては本当にひどい」と応酬。
ダルビッシュはこの試合の第1打席でカーブを捉えて鋭い当たりのセンターライナーに倒れると、続く第2打席でもライトへ痛烈なライナーを放ったが、相手野手の好守にヒットを奪われた。
「早くアウトになりたかったので、早く打とうと思ったら、良い感じで打てました。最初の打席に立った時に、なんとなくカーブが来るかなと思ったら、その通りに来ていい感じでコンタクトできたから、次の打席も良いイメージで入ることができました」
どちらの打席も打球速度は野手も顔負けの100マイル(約160キロ)を超えて、投球だけではなく、打撃でも地元のファンを沸かせたダルビッシュ。
辛口なジョークを言い合えるカラティニは、シカゴ・カブスで2019年から専属捕手として組んできた気心知れた頼れる捕手。ダルビッシュよりも7歳年下だが、誕生日は1日違い。オフのトレードではダルビッシュと一緒にカブスからパドレスへ移籍して、今季もダルビッシュの球を受けている。
数多くの球種を投げるダルビッシュの球を受けるのは簡単ではないが、ダルビッシュのことをよく知っているカラティニは、巧みなリードでダルビッシュの高い能力を引き出している。
ジャイアンツ戦でもデータ解析システムの「スタットキャスト」によると、ダルビッシュは4シーム、スプリット、スライダー、シンカー、カットボール、カーブ、ナックルカーブを投げ分けている。
スプリットと緩いカーブを効果的に使うなどカラティニはその日のダルビッシュの調子を見ながら投球を組み立てている。
パドレスのジェイス・ティングラー監督も「あの2人はゲームプランを熟知しているだけでなく、互いに試合中の修正力も高い。ダルビッシュにとって、カラティニが受けてくれる意味は大きい。ダルビッシュが投げる7つから8つの球種の使い方を良く分かっているからね」とダルビッシュとカラティニの息の良さを称賛する。
トレードではダルビッシュの『オマケ的存在』でしかなかったカラティニだが、「思っていたよりも、遥かに良い選手だ」とティングラー監督も認める存在感を示している。
開幕戦では投球のメカニックが乱れて、4回途中で4失点を喫して降板したダルビッシュ。2度目の登板までに修正を試みたが、まだ本調子とは遠い。
「(メカニックは)だいぶ良くなりましたが、直さなければならないところはいっぱいあります。キャッチボールやブルペンで感覚を早く取り戻せるようにと思っています」
ジャイアンツ戦でもまだ「全体的に調子は良くはなかった」と言うが、「粘り強く投げられました」と調子が悪いなりに打者を抑えてみせた。
ダルビッシュがメジャーリーグでもトップクラスの投手として認められているのは、調子が悪くても工夫をしながら、相手打線を抑えられるから。
「直球は最高の出来ではなかったが、変化球が素晴らしかった」とティングラー監督が語ったように、豊富な武器を揃えるダルビッシュは、いくつかの武器が不調でも、それ以外の兵器で相手打者を仕留められる。
カラティニが「前回よりもいい登板だった。変化球もいつもの変化球になってきたし、先発回数を重ねれば、もっと良くなっていくだろう」と言うように、これからダルビッシュが調子をもっと上げていけば、最多勝に輝いた昨季以上のパフォーマンスを見せてくれるはずだ。