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セリーグ頂点への道。優勝の条件はこれだ!

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

得点と失点から妥当な勝率を計算するピタゴラス勝率。式は

(得点の2乗)÷(得点の2乗+失点の2乗)

とそれほど複雑では無い。これを昨季の成績に当てはめてみると実際の勝率との差はソフトバンクだけ約6.5%と大きいが、その他の球団は0.1~3%前後、勝利数に換算すれば9球団が±3の範囲に収まる。完全に信頼出来る、とまでは行かなくとも十分参考になる数字と言えるだろう。この計算式と昨季の得失点を基準に優勝の目安となる80勝を挙げるためには各球団何が必要か、優勝の条件をまとめた。

巨人・・・文句なしに大本命

豊富な戦力を誇る巨人は投打共に隙が無い。2012年は開幕でつまずき借金7を背負う出だしだったが、最終的には2位・中日に10.5ゲーム差をつけて優勝。昨季も独走で優勝しており今季は三連覇を目指すシーズンとなる。

チームの中心にいるのが阿部。昨季セリーグで規定打席に到達した唯一の捕手であり、打てる捕手の存在は打てる一塁手よりも他球団との差がつきやすい。ポジション別OPSを見ると捕手のリーグ平均は.680で全ポジション中二塁手に次いで低い数字だが巨人は.895。相手投手から見れば打席いるのが広島・菊池(OPS.670)か巨人・村田(OPS.896)かでは大きく違うはずだ。しかもこのセリーグ平均値も阿部が引き上げているのだから、阿部を除く平均的との差は更に広がる。オフに積極的な補強を行ったが得点、失点共に昨季のままで十分に優勝が可能。ケガ人続出にでもならない限り今季も優勝の大本命だ。

阪神・・・甲子園でアーチを描け

12球団最少の失点ながら貧打に泣いた阪神、12球団最少に終わったチーム本塁打82本はリーグ平均より37本も少ない。せめてその半分弱、18本増やしチーム本塁打を3桁に乗せることが出来れば打倒・巨人が現実味を帯びて来る。投手陣が昨季と同じく失点を488点に抑えれば総得点を15点アップさせると優勝ラインの80勝に届くからだ。飛距離抜群の新助っ人・ゴメスが当たりならば、補強は的確だったと言える。当たりならば・・・

他にも一発のある打者としては福留や新井兄弟とベテランの名が挙がる。得点力アップと同時に世代交代も積年の課題だが両立させるのは今年も難しいか。野球の華・本塁打を量産することが優勝への近道だ。

広島・・・堂林がブレイクし牽引出来るか

得失点がほぼトントン(得点557点、失点554点)だった広島、得点はリーグ平均に13点及ばないが、失点はリーグ平均より32点少ない。となれば、攻撃面の方が大化けの可能性はある。投手陣には更に頑張っていただき失点を15点減らしたとすれば、80勝のために打撃陣に求められるノルマは+46点。

他球団と比べると、ポジション別OPSで大きく遅れをとるのが三塁手。期待の若手・堂林が打率.217と苦しみ故障離脱後は小窪、木村がスタメンに名を連ねたが迫力不足は否めない。この差を埋めることと、チームを引っ張るスター選手の出現もあれば心強い。昨季、チームで最も多くの得点を生み出したのが丸で85.9点。打率.273、14本塁打、29盗塁と活躍したがこれらの数字を超えられるか。もちろん堂林が素質を開花させることが出来れば課題は一気に解決する。三塁手の攻撃力アップと中心選手のブレイクが優勝への鍵だ。

中日・・・投手王国再建と和製大砲の成長が必要

貧打と言われる阪神より実は得点力が劣るのが中日。ポジション別OPSは三塁手と左翼手を除く全てのポジションでリーグ平均を下回った。特に深刻なのが遊撃手。リーグ平均.708に対し中日は.530。打撃センスの良さが光る高橋周をコンバートする策は今季の戦いにどう影響するか。また、4番に意欲を見せる平田も貴重な長距離砲。新助っ人・ゴメスも合わせた3人が和田と遜色無いぐらいの活躍が出来れば打線に厚みが出る。

投手陣も昨季は599失点とかつての投手王国も崩壊気味。守り勝つ野球を目指す谷繁新監督にとって、森ヘッドコーチの現場復帰は心強いだろう。浅尾が故障し、岩瀬も衰えが感じられる中、どこまで整備出来るか。再び中日らしく投手王国を築き、失点を80点減らしたとしても今季の得点では73勝止まり。80勝するためには得点を54点増やし580点にする必要がある。下克上を果たすためには、投手王国再建と和製大砲の成長が必須条件だ。

DeNA・・・投手陣が命運を握る

リーグトップの攻撃力を誇るDeNA、総得点は巨人に33点差をつけセリーグ唯一の600点台となる630点を記録。主砲・ブランコ、夏場以降覚醒した梶谷、新加入のバルディリスで組むクリーンアップは迫力がある。しかしその反面、失点は得点の遥か上を行く686点。特に深刻なのが先発陣。リリーフ陣の防御率3.90に対し先発陣の防御率は4.87だった。久保、尚成の加入でイニング数を稼げる先発の駒は揃いつつあるが改善なるか。本拠地・横浜スタジアムは本塁打の出やすい球場で昨季はリーグワーストの153被本塁打を喫している。

昨季と同じ得点力があったとしても80勝するためには563失点以内が目安。失点を123点減らすということは、ほぼ1試合に1失点減らすという大革命が必要な数字だ。しっかりしたローテーションを組むことと被本塁打を減らすこと、優勝のためには投手陣の奮起が不可欠だ。

ヤクルト・・・故障離脱無しでベストパフォーマンスを

ヤクルトはバレンティンが1人で生み出した得点が約140点と突出しており(チーム2位はミレッジの52.5点)、その攻撃力は仮にバレンティンが9人いれば1試合平均12点取れるほど凄まじいものだった。さすがに今年も60発は期待出来ないとして70試合の出場に終わった川端、長打力抜群の高井、不振に喘いだ畠山らの奮起が欠かせない。

そして、打者以上に問題だったのが投手陣。DeNAの陰に隠れがちだが失点は4点しか変わらない。ローテーション投手に、リリーフエースにと主力が次々に離脱した。故障者が復帰すればそれがそのまま戦力アップ、ストーブリーグで動きを見せなかったあたり編成部はそう見ているに違いない。確かに1軍経験豊富な面々が戦列に戻れば上位争いは十分に可能。しかし80勝となると昨季から思い切って失点を100点減らしても得点を73点増やし昨季のDeNAを20点上回る攻撃力が必要になる。優勝には年間通して主力がケガ無く働くこととバレンティンの前後をしっかり固めることが必要だ。

パリーグ頂点への道

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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