自転車乗車中の交通事故死者数の詳細をさぐる(2024年公開版)
自転車事故死者数は漸減中
自転車への注目が高まる昨今だが、同時に自転車による交通事故も増加するのではとの懸念もある。警察庁の報告書「令和5年における交通事故の発生状況などについて」を基に、自転車乗車中の交通事故死者数の実情を確認する。
まずはデータが取得可能、あるいは過去の報告書から参照できる2005年以降における、自転車乗車中の死者数推移(対自動車によるものが多いが、対歩行者・対二輪車・自転車相互・自転車単独までも含めた合計値)。直近年となる2023年分は、該当者の年齢階層別の状況も別途グラフ化する。
2005年以降は緩やかながらも、そして時にはイレギュラー的な前年比増の動きを見せながらも、減少傾向にあった自転車乗車中の死者数。日本の総人口は漸減しているが、その減り方を大きく上回る形での減少傾向で、明らかに交通法規の順守浸透度合いの改善、啓蒙や規制の強化、さらには医療技術の進歩など、各方面の状況改善による結果が出ていると判断できる。
直近年の動向を見れば分かる通り、自転車乗車中による交通事故死者数もまた、他の状況下におけるものと同様、高齢者が対象となるケースが多い。年齢階層別で見ると40代後半から増加の動きがあるが、50代からさらに増加、そして70代以降で大きく増加しているのが分かる。老化による運転不注意が生じやすくなるのに加え、この年齢階層の人口そのものが増加しているのが要因と考えられる。
高齢層は減り方がゆるやか
それではこれを大まかな年齢区分、具体的には未成年(19歳以下)・成年(20~64歳)・高齢層(65歳以上)に区分し、その動向を確認する。人数そのものの推移に加え、各年の全体に占める比率の推移も精査する。
高齢層はもみあいを見せながらも比率の上では増加傾向にある。つまり高齢層の人数そのものが増えていることもあり、他の年齢層と比べて死者数の減少率が小さく、結果として死者数全体における比率が増加した形である。2011年を最後に6割を切ることはない。それどころか2020年でははじめて7割に届いてしまった(この数年では比率は減少の動きを示しているが)。
一方未成年や成年は人数、比率ともに漸減傾向にある。ただし成年は2010年以降は30%を行き来し、横ばいの気配も見せている。ここ数年では20%台後半、さらに2020年~2021年では25.5%と20%台半ばにまで落ち込んだが、直近の2023年では36.1%と記録のある中では最大値を示してしまった。詳細を見ると、該当階層内の高齢層に当たる55~59歳と60~64歳において、大きな増加が生じたのが原因。
これらは死者数の絶対値の動向だが、次に示すのは各年齢階層における人口10万人あたりの該当数。この数が大きいほど、その年齢階層で自転車乗車中に命を落とす人の割合が高いことになる。例えば20代前半の2023年における値は0.13とあるので、20代前半の人が10万人いると、そのうち0.13人が2023年に自転車乗車中に亡くなったことになる。
現時点で値が取得可能な最古のものとなる2005年の分を併記したが、未成年者ではおおよそ大きく減少し、環境の整備や啓蒙などが進んでいることがうかがえる。また高齢層も割合としては大きく減っているが、元々の値が大きいことから、減った上でも成年や未成年と比べると大きいのには違いない。
そして高齢層の人数そのものが増加しているのはご承知の通り。従って対10万人比で減少する、環境整備や啓蒙の浸透、医療技術の発展などがなされても、絶対数そのものの減少度合いがゆるやかなまま、そしてさらには横ばいにシフトしてしまう次第ではある。
■関連記事:
【原則車道左側通行、歩道でのベル使用禁止、自動車同様の標識遵守…自転車利用のマナー、どれだけ知ってます?】
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。