18歳選挙、投票率の低さで問い直すのは大人の問題
参議院選挙での18歳と19歳の投票率の低さだけが話題になっているが、そんなことだから若者は選挙からも遠ざかるのだ。
7月11日に総務省が18歳と19歳の投票率の調査結果を公表したが、18歳は51.17%で19歳は39.66%だった。両方を合わせた投票率は45.45%だ。全体で54.7%だから、低いのは事実である。
これをについて新聞各紙は、「投票率、全体を下回る」(朝日)とか「低かった投票率」(読売)、「課題残す」(日経)といったタイトルで報じている。成績の悪かった生徒を叱る教員の言い様を連想させる。解答の内容ではなく、点数だけをみている言い方にしかおもえない。
それだけでなく、「18歳の投票率が19歳を上回ったのは、18歳には主権者教育などを受けている高校生が多いためとみられる」(「朝日」)と「19歳は主権者教育を受けなかったから選挙に行かなかった」と言わんばかりの記述さえある。そうした上っ面だけのとらえ方ではなく、もう少し深いところで今回の結果を受け止めるべきではないだろうか。
「朝日」のいっている「主権者教育」とは、「主権者は国民なのだから選挙に行きましょう」的な教育でしかない。主権在民に重点があるのではなく、「選挙に行きましょう」という教育というか指導が、全国の高校で行われた。典型が「模擬投票」で、投票用紙を投票箱に入れるノウハウを教えて「選挙教育」だと自己満足している高校が多かった。
その一方で、文部科学省をはじめとして「学校に政治をもちこむな」という動きが、なんと活発だったことか。
つまり、「政治にかかわるな」と言ってる一方で「選挙に行け」と押しつけていたわけだ。最大の政治行動が選挙にもかかわらず、まるで別物であるかのような姿勢を若者にみせつけたのが、今回の選挙である。
主権者教育といった教科書的なことではなく、「選挙に行きましょう」と本気で言うならば、18歳や19歳が現実の政治に目を向けることを邪魔しないことだ。そっちは邪魔ばかりしておいて、選挙に行くことだけを強制するのは、自分の思うように若者を操ろうとしている姿勢が露骨に現れている。そんなものに、若者が素直に従うわけがない。
「現実の政治に目を向ける」というと、これまた、自分の考えばかりを押しつけたがる大人が多いのも困ったことである。若者や子どもには「教える」ものであり、「押しつける」のが教育だという発想に凝り固まっている大人が多すぎる。そんなものでは、若者は政治に興味をもたない。
投票率の低さを嘆くのであれば、投票を強制するような姿勢はやめて、どうすれば押しつけではなく、若者が政治に関心をもてる環境をつくれるのか問い直してみる必要がある。それを優先しなければ、選挙権を18歳に引き下げても意味はない。