地域に支えられるスイッチバックの二本木駅が国の登録有形文化財になりました。
昨日のニュースでお知らせいたしました筆者が社長を務める新潟県の「えちごトキめき鉄道」の妙高はねうまラインにあるスイッチバックの二本木駅が、本日国の有形文化財に登録されました。
二本木駅の開業は明治44(1911)年。
急な勾配区間の途中に駅を設置するために、列車は駅に到着、発車する際に行ったり来たりしながら坂を登るスイッチバック駅として、開業当時の姿をそのままに今に伝える貴重な駅が二本木駅。駅舎はもちろん、ホームの屋根、倉庫、雪囲いなどの7つの施設が構内丸ごと文化財登録されたのです。
▲本日の官報に掲示された有形文化財登録。
えちごトキめき鉄道二本木駅の7つの施設が登録されたことがわかります。
文化財登録されている駅は他にもあると聞いていますが、1つの駅で7つの施設が登録された例はおそらく日本初ではないでしょうか。
▲駅の正面玄関である駅舎。開業当初の建物です。
▲ホームに上がると駅舎と並んで倉庫が2つ建っています。
手前のレンガ造りの倉庫はランプ小屋と呼ばれるかつての燃料倉庫。
燃料が保管されているためにレンガ造りだったのです。
この煉瓦造りの倉庫と並ぶ3つの建物が全部有形文化財です。
▲こちらはホームの屋根。
古いレールを再利用したこのホームの屋根ももちろん有形文化財です。
▲駅から少し離れたところにある線路の雪囲いです。
この線路は駅に発着する列車がいったん引き上げるスイッチバックの部分にあり、除雪が入れないことからこのような雪囲いが設けられています。
▲中に入ってみるとこんな感じ。
▲この雪囲いの枠組みはホームの屋根と同じく古いレールを再利用したもの。
よく見ると1912年製の刻印が。
百年以上の歴史を感じます。
この場所はもちろん一般の人は立入禁止ですが、筆者は社長ですから読者の皆様方にご覧いただけるように、担当者に同行してもらい入ったのです。(笑)
せっかくなので向こうまで行ってみましょう。
▲反対側はこんな感じです。
今は列車の長さが短くなったので、この雪囲いの半分しか使用していませんから、こちら側はふだん列車が入ってこないところ。
一見荒れているように見えますが、よく見ると。
▲中継信号機が点灯しているのが見えます。
この中継信号機というのは入口側の信号機の表示を示しているものですが、えちごトキめき鉄道の妙高はねうまライン(直江津-妙高高原)はお隣のしなの鉄道と合わせて、災害等があった場合にいつでも貨物列車が走れる状態で維持されています。
つまり、迂回ルートとして確保されているのです。
そして、この中継信号機は貨物列車がこの引き上げ線に入った場合に折り返すために必要な信号機ということで、きちんと生きているのです。
鉄道の維持管理というのは、こういうところまできちんとやる必要があるのですね。
地域の皆様方の協力で運営する駅
さて、駅に戻ってみましょう。
実は、この二本木駅はえちごトキめき鉄道の駅ではありますが、実際に管理運営しているのは地元の皆様方で、鉄道会社は民間事業者へ運営委託をしている駅なのです。
▲駅舎の中にはこんな看板が。
▲駅舎の中で喫茶店を運営する地元の御婦人方です。
▲こんなパンフレットがあったので手に取ってみました。
▲後ろを見るとこのパンフレットを作ったのは地元の商工会なんです。
地元の皆様方が、地元の駅である二本木駅を盛り立てようと、知恵を絞っていろいろな活動を自主的に行っていらっしゃる。
自分たちの地域の鉄道を自分たちで守る。すばらしいなあと感じました。
▲こんなオリジナルグッズまで作っているんです。
「皆様、すばらしい活動をされてますね。」
筆者がそう申し上げると返ってきた答えが、
「社長、何言ってるんですか? あなたが教えてくれたんじゃないですか。」
一瞬「・・・・・」となりましたが、
そうそう、そうでした。
実は、上越市の地域の代表の皆様方は今から3年前の11月にいすみ鉄道に視察にいらしていただいていたのです。
その時に当時いすみ鉄道の社長だった筆者が、
「地域の皆さんが鉄道に係わって、鉄道を盛り立てる活動をしてください。それが『マイレール意識』です。」
そうお伝えしていたのです。
▲2016年11月にいすみ鉄道にご訪問いただいた上越市の代表の皆様方です。
よろしければご一読ください。
筆者がいすみ鉄道で応援団の皆様方に助けられて、地域が活発になって来ているその光景を目にした上越市の方々が、それを地域に持ち帰り、目の前にあるえちごトキめき鉄道の二本木駅を再生して盛り上げる活動をしている。
有形文化財への登録は、そういう地域の皆様方の活動の成果だったのです。
本当に不思議なご縁ですね。
いすみ鉄道沿線の取り組みが全国で行われるようになって来ていて、今回、筆者はその一つである新潟県のえちごトキめき鉄道の社長にさせていただいたのですから。
この二本木駅を皮切りに、地域鉄道として地域の皆様方と一緒に全国の皆様においでいただけるような、そんな鉄道にしていきたいと確信した1日でした。
地域の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
※本文中に使用した写真は筆者撮影のものです。