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神奈川県の本厚木駅周辺が今、新築マンション「激戦区」になっている

櫻井幸雄住宅評論家
境が分かりにくいが、ここでは異なるマンション2つの工事が行われている。筆者撮影

 2019年冬、神奈川県の厚木市内、小田急小田原線本厚木駅から徒歩6分以内の場所で、新築分譲マンションが4つ、ほぼ同時に分譲を開始。三つ巴(みつどもえ=同じような力量のものが三者入り乱れて争うこと)ならぬ“四つ巴”状態が生まれている。

 このように、同じ場所で複数のマンションが同時に分譲される状況は、5年ほど前までは珍しくなかった。湾岸エリアでも、西葛西エリアでも、池尻大橋エリアでも起きた。しかし、新規分譲マンションの総数が減っている現在は少なくなった。

 複数のマンションが競合する状況は、昭和時代には「マンション激戦区」と呼ばれて注目された。「激戦区」では購入者にとって魅力的な状況が生まれたからだ。 

なぜ、「マンション激戦区」は魅力的なのか

 マンション激戦区は、たとえて言うと、原宿の竹下通りのように同種の商品を売るショップが密集しているようなもの。その商品を買いたいと思う人にとっては、一箇所で見比べながら買い物できる楽しさがある。価格競争の結果、値段が抑えられる。そして、購入検討者は「複数の物件が同様の価格設定なので、これが妥当な値段なのだろう」と納得もできる。利点が多いのだ。

 本厚木駅周辺は、今その「激戦区」になっている。

 もともと、本厚木駅周辺は、分譲マンションが多い場所ではなく、ここ4年ほど新発物件が出ていなかった。これは「需要が溜まっている」、つまり新築分譲マンションが出たら買いたいと思っている人が増えている状況といえる。ならば、新規物件を出してみようか、と不動産会社は考える。そこに複数のマンション用地が売りに出たので、4つ新築マンション、それも大規模ばかり4つがほぼ同時に分譲を開始することになった。

見事に性格が異なる4物件

 4物件は、同じ「本厚木のマンション」なのだが、異なる性格を持つ。三菱地所レジデンスとフージャース コーポレーションの「ザ・パークハウス 本厚木タワー」は本厚木駅から徒歩1分。駅前広場デッキと直結し、厚木市最高層となる地上22階建て超高層タワーマンションで、制震構造を採用する。これは、富裕層に好まれる“エリアNO1物件”の様相を呈する。価格未定だが、これまで本厚木で分譲されたマンションとしては最高額になるだろう。

「ザ・パークハウス 本厚木タワー」の販売センター。販売されるのは、本厚木駅から徒歩1分に建設される超高層タワーマンションだ。筆者撮影
「ザ・パークハウス 本厚木タワー」の販売センター。販売されるのは、本厚木駅から徒歩1分に建設される超高層タワーマンションだ。筆者撮影

 総合地所の「ルネ本厚木」は、本厚木駅から徒歩6分で、今年春に新装オープンするイトーヨーカドーに隣接する買い物便利な立地が特徴。子育て世帯のための工夫を多く備えた「ファミリー志向」の強いマンションだ。

 「ルネ本厚木」は4物件のなかで最初に分譲を行い、昨年11月に行われた第1期80戸は、約60平米〜82平米の2LDK+S(納戸)〜4LDKが3438万円から5398万円だった。子育てファミリーの人気を集めて、即日完売。引き続き、好調に販売を続けている。

価格を抑えたマンションもあるし、質を高めたマンションも

 3つ目のマンションは、本厚木駅から徒歩4分の「レーベン本厚木 THE MASTERS TOWER」。タカラ レーベンが売り主だ。そのホームページでは「予定価格1900万円台から」となっており、度肝を抜かれた。が、これはコンパクト住戸の予定価格。3LDKは3300万円台からの予定だが、それでも4物件のなかでは最も価格が抑えられている。上層階には面積の広いプレミア住戸も設けられているが、主力は価格を抑えた3LDKで、その点に注目する人は多いだろう。

 最後に販売活動を開始する「プレミスト本厚木」は、大和ハウス工業のマンション。こちらも、本厚木駅から徒歩4分で、「レーベン本厚木THE MASTERS TOWER」と隣り合っている。ほぼ同じ場所のマンションといえるが、こちらは価格の安さというより仕様の高さを特徴としている。

 たとえば、キッチンにはディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)と食器洗い乾燥機を標準設置。ガスコンロのほかシニアに人気の高いIHクッキングヒーターも選べるようになっている。そして、奥行2mのゆったりしたバルコニーにはスロップシンク(外部水栓)が設置される。

「プレミスト本厚木」の販売センター。同マンションは、高い居住性が特徴に。筆者撮影
「プレミスト本厚木」の販売センター。同マンションは、高い居住性が特徴に。筆者撮影

 「プレミスト本厚木」では、先進の設備として「アレクサ」が各住戸に設置される。アレクサはAmazonが開発・提供するスマートスピーカー(AIスピーカー)「 Amazon Echo(エコー)シリーズ」に搭載されているAIアシスタント。音楽やニュースの再生、レストランを見つける、スポーツ結果を確認するなど、多くのことをアシストしてくれる。このアレクサでお風呂を沸かすことのできるスマート給湯器も付けられる。

 設備仕様のレベルが高いためか、「プレミスト本厚木」を検討する購入者の年齢層は少し高めと思われた。販売センターでは子育てが終わったくらいの年齢層が目立った。駅から離れた一戸建てを所有し、便利な駅近に転居したいという方々だろうか。

 実際、購入検討者にはDINKS(共働きで子どもを持たない夫婦)やシニアの2人暮らし、そして40代女性とその母親というような親子の2人暮らしも多いという。いずれも「少しでも安く購入したい」というより、「多少値段が高くても、満足度の高いマンションを」という志向が強い人たちだ。

 「プレミスト本厚木」の住戸は65平米〜85平米の2LDK〜4LDKの構成で3LDK主体。3LDKを2LDKとして使いやすいようにウォールドアを採用している。

 その分譲価格は3LDKが3900万円台からとなる見通しで、3月上旬から第1期が販売される予定だ。

 4つのマンションはそれぞれ性格と価格設定が異なる。本厚木でマンションを買いたいという人にはうれしい状況といえるだろう。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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