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アンダーグラウンドから逆襲を始めたい――マリオネッ。ワンマンライヴレポート

宗像明将音楽評論家
マリオネッ。(提供:MITSUME SESSION)

迷っている暇はない

アンコールの最後、マリオネッ。の久留あずさはマイクを握って語りだした。ソールドアウトの会場はファンで満員。遠目からでは、彼女の表情が潤んで見えるのが汗のせいなのか、涙のせいなのかわからない。

「TIFメインステージ争奪まで、あと19日となりました。私たちのライバルとなるアイドルさんは、憧れていたアイドルさんたちで、でも、チャンスをもらって迷ってる暇はないと思いました。だから宣言します。マリオネッ。はメインステージに立ちます。夢は叶います。みんなに恩返しをしたいです。みんなとなら乗り越えられると信じてます。19日で私たちは勝負に出ます。一緒に走り抜けてくれたら嬉しいです。応援お願いします!」

久留あずさ(提供:MITSUME SESSION)
久留あずさ(提供:MITSUME SESSION)

ルサンチマンの強い女の子を6人集めたかのようなグループ

マリオネッ。は、2018年11月10日にお披露目されたアイドルグループ。久留あずさ、星島ゆい、二瀬ひなた、星名ふみみ、深月かおり、百瀬あぐりの6人組だ。

彼女たちとの出会いは、お披露目前のことだった。「MARQUEE」vol.130のためのインタビューで初めて会ったのだが、その取材中に6人中3人が涙を見せることになる。涙を流したのは、星名ふみみ、久留あずさ、百瀬あぐり。6人がそれぞれに挫折を抱えていた。まるでルサンチマンの強い子を上から6人採ったかのようだ、と感じたものだ。

かつて26時のマスカレイドのマネージャーだったハマガミワタルがプロデュースすることもあり、マリオネッ。は結成当初から大きな注目を浴びることになる。

マリオネッ。(提供:MITSUME SESSION)
マリオネッ。(提供:MITSUME SESSION)

そのお披露目から9か月。マリオネッ。は、日本最大規模のアイドル・フェスである「TOKYO IDOL FESTIVAL」のメインステージへの出場権を争うイベントに参加していた。2019年6月15日に開催された「前哨戦」では、ライヴを見た観客の投票で4強に残った。そのなかでデビューからもっとも日が浅かったのがマリオネッ。だった。

遠回りをしたけど間違いなんて何もなかった

そして2019年7月14日、渋谷TSUTAYA O-nestでマリオネッ。の初のワンマンライヴ「films EP.1~HANABI~」が開催された。ファン層が若く、女の子も多い。

激しいロック・ナンバーの「Distortion」で幕を開け、「THE Guilty Guilty BANG」ではシンガロングも起きる。「タリナイ!タリナイ!」では、ステージのメンバーの動きに合わせて、ファンもフロアを右に左に一斉に動く。

マリオネッ。(提供:MITSUME SESSION)
マリオネッ。(提供:MITSUME SESSION)

そして、この日初披露された新曲が「Midnight Parade」だった。歌う前に、二瀬ひなたは語った。

「身の丈に合わない夢を笑う人もたくさんいました。でも、一緒にいてくれる人もたくさんいました。遠回りをしたけど間違いなんて何もなかったことを私たちが証明してみせます。逆襲を始めよう、『Midnight Parade』」

マリオネッ。のキャッチコピーは「『つまらない人生に最高のドラマを。』これは普通の女の子が夢を叶えるまでの道のりを追ったリアルタイムドキュメンタリーです」というものだ。「TIF2019 メインステージ争奪LIVE」にあたって掲げている言葉は「最高の下克上を!!」。マリオネッ。は、常に過去のルサンチマンに火を灯すかのような言葉を放ち、ファンにともに歩むことを呼びかける。

本編のラストを飾った「Days&Underground song」もまたそんな楽曲だった。自分たちのいる場所をアンダーグラウンドだと言い切る。鬱屈した日々を乗り越えて生きる「今」を歌う。

マリオネッ。は何と戦っているのか

アンコールを受けて再登場しての「タリナイ!タリナイ!」は、ファンの動きも1回目よりもさらに激しさを増していた。そして「Galaxy Dance Dance!」を歌い終わると、重大発表として7月31日の無料ワンマンライヴ、9月1日の新宿BLAZEでの主催イベント、9月14日の渋谷WWWでのワンマンライヴが告知された。マリオネッ。は中だるみを発生させることなく夏を駆け抜けようとしている。

マリオネッ。は「何と戦っているんだ」と言われることもあるという。遠からず彼女たちは、その答えが「自分自身」であることに気づくだろう。そのときのさらなる成長を楽しみにしながら、マリオネッ。の夏を楽しみにしたい。

マリオネッ。(提供:MITSUME SESSION)
マリオネッ。(提供:MITSUME SESSION)
ヘッダーに使ったマリオネッ。の写真のオリジナル。左から二瀬ひなた、星名ふみみ、百瀬あぐり、深月かおり、久留あずさ、星島ゆい。(提供:MITSUME SESSION)
ヘッダーに使ったマリオネッ。の写真のオリジナル。左から二瀬ひなた、星名ふみみ、百瀬あぐり、深月かおり、久留あずさ、星島ゆい。(提供:MITSUME SESSION)
音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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