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早いさくらの開花と線状降水帯の発生 週明けにかけての菜種梅雨では梅雨並みの注意を

饒村曜気象予報士
菜種梅雨の時の地上天気図と衛星画像(3月22日12時)

早いさくらの開花

 令和5年(2023年)は、3月に入ると、最高気温が氷点下という真冬日を観測する地点はほとんどなくなり、最低気温が氷点下となる冬日を観測する地点も減っています(図1)。

図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年3月22日)
図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年3月22日)

 夜は気温が低くなっても、日中の気温が高くなったことから、さくらの開花が早まり、東京では、3月14日に統計のある昭和28年(1953年)以降で、令和2年(2020年)、令和3年(2021年)と並んで、最早タイ記録でさくらが開花しました。

 沖縄のヒカンザクラの開花を除くと開花の一番乗りです。

 翌15日には横浜で、翌々日16日には岐阜など、各地で記録的な早さでさくらが開花しています(表)。

表 全国のさくら(ソメイヨシノ)の開花
表 全国のさくら(ソメイヨシノ)の開花

 ただ、東京などで、さくらが開花したあとの3月18日頃に一時的な寒の戻りがあり、例年であれば東京と同じころに開花する福岡などの西日本での開花が少し遅れました。

 しかし、その後は晴れて気温の高い日が続き、記録的に早いさくら開花の便りが相次いでいます。

 3月22日には大阪で最高気温が25.2度となって3月として初めて夏日を観測するなど、気温を観測している915地点のうち78地点(約9パーセント)で夏日を観測しました。今年最多の夏日です。

 そして、東京ではさくらが満開となりました。沖縄のヒカンザクラの満開を除くと満開の一番乗りです。

 3月23日も日本列島に暖気が流れこむ見込みです。暖気の強さの目安として、上空約1500メートルの気温が12度というものがあります。

 地上の気温が20度を超えてくるという目安ですが、東日本太平洋側から西日本太平洋では上空約1500メートルの気温が12度以上となる予想です(図2)。

図2 上空約1500メートルの気温分布予報(3月23日夜の予想)
図2 上空約1500メートルの気温分布予報(3月23日夜の予想)

 これだけ暖かくなってくると、多量の水蒸気が流入し、条件によっては大雨となる可能性が高くなります。

 事実、3月22日には沖縄で線状降水帯が発生し、大雨が降っています。

今年初の線状降水帯

 3月22日は日本の南海上に前線が停滞し、その前線に向かって暖かくて湿った空気が流入しています(タイトル画像参照)。

 そして、気象庁では、3月22日3時29分に、沖縄本島地方で線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いているとして「顕著な大雨に関する全般気象情報」を発表し、警戒を呼び掛けています(図3)。

図3 線状降水帯(3月22日3時20分)
図3 線状降水帯(3月22日3時20分)

 一時的には、1時間に154ミリ相当の猛烈な雨が降ったのですが、幸いにも線状降水帯は長続きせず、しかも海上に抜けたことから、沖縄本島で大きな被害は発生しませんでした(図4)。

図4 沖縄県名護の1時間降水量(3月21日~22日)
図4 沖縄県名護の1時間降水量(3月21日~22日)

 なお、沖縄県名護の最大60分雨量は1時47分~2時47分の62ミリ、総雨量は161ミリでした。

菜種梅雨

 3月23日は、日本の南海上にあった前線上に発生した低気圧が、日本列島を横断する見込みです(図5)。

図5 予想天気図(3月23日9時の予想)
図5 予想天気図(3月23日9時の予想)

 このため、全国的に雲が広がり雨の降る所が多くなり、西日本の太平洋側では雷を伴って激しい雨の降る所がある予想です。

 そして、これから週明けの27日にかけては、日本付近に前線が停滞し、曇りや雨の日が続いて梅雨のような天気になる見込みです(図6)。

図6 各地の10日先までの天気予報と最高気温(3月23日~29日は気象庁、30日以降はウェザーマップの予報)
図6 各地の10日先までの天気予報と最高気温(3月23日~29日は気象庁、30日以降はウェザーマップの予報)

 菜の花が咲く頃(3月後半から4月上旬)ですので、これが菜種梅雨です。

 菜種梅雨といっても、気温が上がって大気中の水蒸気の量がふえていますので、条件によっては、22日の沖縄のように大雨となることがあります。

 菜種梅雨でも、最新の気象情報を入手し、梅雨期並みの注意が必要です。

タイトル画像、図2、図3、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページに加筆。

図5の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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