“本拠地開幕戦”で逆転勝ち!奮起した荒木&江越《阪神ファーム》
1軍はオープン戦の真っ最中ですが、ファームもウエスタンとイースタンそれぞれで2日から (阪神は3日が初戦) 春季教育リーグが始まっています。きのう5日は1軍オープン戦が甲子園、ファーム教育リーグが鳴尾浜と揃って“今季本拠地開幕戦”だった阪神タイガース。いいお天気の土曜日で、お客様も早くからスタンドを埋めておられました。
どちらもデーゲームで練習時間はほぼ同じだった中、鳴尾浜の試合前練習に顔を出した金本監督。掛布監督との対話もあったでしょうけど、目的はこの日からファームで過ごす江越選手を見るためだったと言います。これには江越選手のみならず、鳴尾浜にいた選手、コーチ、スタッフ、練習を任された1軍のコーチ、そしてお客様や記者陣も「確かに変わり始めている何か」を感じたのではないでしょうか。
きのうの中日戦には、その江越選手以外に荒木選手とへイグ選手が出場。2人はきょう6日も鳴尾浜だそうです。また先発バッテリーの秋山投手と梅野選手はきょうから再び1軍へ戻り、新たに石崎投手と守屋投手、狩野選手が甲子園へ行きます。きのう甲子園だった小豆畑選手も、きょうから鳴尾浜です。試合に出られなくて残念でしたが「また頑張ります!」とのこと。
また夕方、寮に戻ってきた青柳投手は、初めて立った甲子園のマウンドに「緊張しました。ストライクが入らなくて余計に焦って…10球続けてボール投げてしまった」と猛省です。何とか2失点で済み、次のイニングは抑えられたのが救いですね。別人のようだったとか?「はい、まったくの別人でした。2イニングと言われていたけど、もうないかと。投げさせてもらえてよかったです」と力なく微笑むルーキー。大丈夫、巻き返す機会はきっとありますよ。
7回2死からの逆転劇!教育リーグ3戦全勝
では、ことし初めて鳴尾浜球場で行われた試合、教育リーグ・中日戦の結果をご紹介しましょう。3回に先頭を味方のエラーで出し、そのあと2点を失った秋山投手ですが、2人目の筒井投手が6回から3イニングをパーフェクト。その間の7回に打線が植田選手からの4連打 (江越選手、荒木選手が連続タイムリー、途中出場の西田選手が勝ち越しの2点タイムリー) で逆転!最後に投げたトラヴィス投手は、非公式戦ながら「プロ初のセーブです」ととっても嬉しそうでした。
《教育リーグ》3月5日
阪神- 中日 (鳴尾浜)
中日 002 000 000 = 2
阪神 000 000 40X = 4
◆バッテリー
【阪神】秋山-筒井-トラヴィス / 梅野-清水(8回~)
【中日】小熊 (5回)-浜田智(1回)-吉田(1回)-岸本(1回) / 杉山-松井雅(8回裏)
◆二塁打 谷、溝脇、江越
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]中:江越 (3-3-1 / 0-1 / 1 / 0)
2]一:荒木 (4-2-1 / 0-0 / 1 / 0)
3]三:へイグ (2-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃三:西田 (1-1-2 / 0-0 / 0 / 0)
4]指:狩野 (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃打指:一二三 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
5]左:ペレス (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃左:柴田 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0)
6]捕:梅野 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
〃捕:清水 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
7]右:中谷 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0)
8]二:森越 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃二:坂 (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0)
9]遊:植田 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 1)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
秋山 5回 81球 (4-4-1 / 2-1) 141
筒井 3回 31球 (0-2-0 / 0-0) 139
トラ 1回 9球 (0-0-1 / 0-0) 142
試合経過
まず秋山は1回を三者凡退。2回は1死から谷に左翼線ギリギリの二塁打を浴びますが、後続を断って無失点。しかし3回、先頭の杉山をショート植田の送球エラーで出し、1死後に1番・渡辺に初球を中前打されて1死一、二塁。続く溝脇に右中間へタイムリー二塁打…2人とも還してしまいました。そのあとは暴投(ベース手前で跳ねてキャッチャー梅野の頭上を越える)があったものの追加点は与えず、4回は1四球のみ。5回は先頭の9番・友永に左前打されるなど2死二塁となるも、最後は3番・工藤の打球をファーストの荒木が横っ飛びでナイスキャッチ!
阪神打線は1回、先頭の江越が小熊の初球を打って左前打、すかさず盗塁を決めます。そのあと2死三塁となり狩野が死球で出ましたが得点はなし。2回は三者凡退。3回は1死後に江越の死球(抜けた緩いカーブが避けたヘルメットに)、荒木の右前打で一、三塁。さらにへイグの四球で満塁となるも狩野は二ゴロ併殺打で無得点です。4回は三者凡退。5回は連続三振で2死となってからピッチャー内野安打で出た江越。しかし盗塁失敗で得点ならずです。
後半に入り、こちらは筒井が登板して6回、7回、8回をパーフェクトに抑える好投を見せました。すると打線が、6回はヘイグのサード内野安打のみだったものの7回につながります。しかも、梅野と中谷が倒れ2死になったあとの逆転劇。7回の守備で出場した坂がフルカウントから四球を選び、植田もフルカウントから中前打(左打席)!これで2死一、三塁として、まず江越がライト前にゆっくりと落ちるタイムリー。記録は二塁打です。
1点を返してなおも2死二、三塁。続く荒木が右前タイムリー!これで同点となりました。次は、やはり7回の守備から出場した西田で、その初球に荒木が盗塁を決め二、三塁としたあと右前タイムリー!江越と荒木が相次いで生還し、勝ち越し成功です。代打・一二三は三振に倒れますが、4対2と逆転。8回は先頭の柴田が右前打、中谷は四球で出るも追加点はありません。9回はトラヴィスが先頭・福田を内角の真っすぐで二飛、代打の石川は2球目のカーブが抜けて背中に死球、しかし近藤を真っすぐで遊ゴロ併殺打!3人で片づけ試合終了です。
これから激しくなるポジション争い
まず掛布監督の談話です。最初に江越選手について「感覚はいい。そんなに悪くないんじゃない?しばらくファームで出るだろうけど。ある程度落ち着いた環境で結果が出てくれればね。悔しいだろうけど本人が一番わかっているでしょう。いい時間になると思いますよ。(1軍の)開幕ベンチにいないといけない、スタメンに名を連ねなければいけない選手だから」と話しました。江越選手自身も金本監督、掛布監督の思いを意気に感じているでしょう。
なお掛布監督は、教育リーグ3戦全勝だと振られ「勝ち負けは意識してないんだよ」と苦笑い。ここまでを振り返って「そのためにキャンプでやってきたわけで、自分で自分に責任を持たせる、そう言ってきた。ケガをすれば代わりがいるという厳しさもあります。これからもっと激しくなるし、2軍でもポジション争いがあるからね。ケガをすれば落ちていくと選手もわかってプレーしている。十分ですよ」とのこと。
失点までの経緯を反省
秋山投手は「いきなりのエラーでも助けてあげられないと。タイムリーはツーシームを引っかけているので、その辺を減らしたい」と、失点した3回を振り返っています。5イニングを投げ「疲れましたねえ」とのこと。どういうテーマを持って?「テンポと、カーブの意識を消さないようにとやっていました。ちょっと向こうのバッターが真っすぐのタイミングで合っていなかったけど、カットはちょうど合ってた。それを早い段階で気づいて組み立てられるようになりたいと思いました」
1軍ローテの6番手争い手応えはあったかと聞かれ「立ち上がりは、三振は矢野(1軍バッテリー)コーチからも『追い込んでからの勝負を早く決めるように』と言われていて、早い球数で決められたとこもあるし。キャンプで上でやってて、どんどん振ってくるバッターが多かったけど、きょうのように振ってこず、いいところを見送られてカウントがしんどいこともありました。でも振ってこないなら振ってこないで、どんどんカウントを取れるようにしたい」と答えた秋山投手。
久保投手コーチは「秋山は変化球をどうやってカウントに、結びにするか、まだ探っているとこかな。横に曲がるツーシーム、カットボール系は威力がありますね」と話しています。
筒井、戻った角度とキレ
6回からの3イニングを完ぺきに抑えた筒井投手。3回投げるというのは「きのう言われました。短いより長い方がありがたいと思って頑張りました」と笑顔。ただし、これには今ゲームで投げられるピッチャーが少ないというファームの事情もあるんですよね。きのうフリーバッティングで投げた山本投手、岩本投手もゲーム登板はまだもう少し先でしょうし、1軍に合流している投手もいるし、というわけです。
筒井投手と話している時に通りかかった西口副寮長から「抑えて当然やなあ!」と声をかけられ「当然…」と苦笑いして言葉を飲んだ筒井投手。「キャンプでコンディションや体調が落ちていた部分もあったんですが、逆にいうと“投げて落ちる”投げ方だったのかなと。だから“投げて上げる”というか、そういうふうに投げ方を修正して。そういう点で、きょう3イニング放らせてもらったのは、ちょうどよかったです。チャンスだと、もらえたイニングと思ってプラスに」
真っすぐのかかりもよくなってきたかとの問いに「角度、キレが僕の持ち味なので、バッターの反応を見られて悪くなかったと思います」と即答。間に合いましたね。
久保コーチによると「これまで体が大きく動く割に腕が走らないで空回りしている感じがあった。それでバッターとタイミングが合ってしまう。ボールが生きたままバターの手元を通過させるようにしないと。きょうは良くなった。去年のシーズン中やことしのキャンプは、チェーンのない自転車をこいでるみたいだったから。キャンプで修正して手応えが出てきたね」という分析です。
「一歩前進」とトラヴィス
そして9回1イニングを、わずか9球で終わらせたトラヴィス投手。冒頭で書いたように「初めてセーブがつきました」とニコニコしています。しかも、聞けば「(春季)キャンプの試合で投げたのは、5年目で初めてです。いつもケガが多かったので」とのこと!そうだったんですねぇ。だから安芸キャンプ中の試合では「投げて結果も出さないと、と思って球が高く浮いてしまった」と言います。そこで修正に取り組みました。
「上半身と下半身がバラバラになってしまうので、どうしたらスムーズに投げられるか。体を大きく使うにはどうしたらいいか。193センチもあるのにもったいないと思って、いろんなピッチャーの動画とかを見たりしたんです」。研究のターゲットとしたのは長身ピッチャーで「日本やメジャー、いろんな人です。たとえばメッセンジャーとか、サファテ、ストラスバーグさん、岩隈さんも」。“ストラスバーグさん”って言い方がいいですね(笑)
キャンプ中は見る時間があまりなかったそうですが、帰阪後は毎朝チェックしているとか。「今朝も見ました。きょうはカーブが抜けてしまったけど、真っすぐは低めに投げられたので一歩前進しました。まだ途中なんですが」。これは大きな一歩になるかもしれませんよ。フォームで変わった点はワインドアップの手、でしょうか。「振りかぶっているかいないかくらいの、さりげない感じ」で、トラヴィス投手が自分で考えたそうです。
西田、荒木、へイグのコメント
野手の話は少しで…すみません。殊勲の西田選手は、かなり念入りにウエートトレーニングをしていたため多くは聞けませんでした。7回、同点に追いついてなお2死二塁の場面でカウント1-1からの3球目を右前へ2点タイムリー!打ったのは「真っすぐです」。このところヒットが続いているし、この日も1打席ながら決勝打ながら「まだまだです」というコメントが返ってきました。
次に同点タイムリーを含む2安打で、盗塁も決めた荒木選手。それだけではありません。凡退した2打席も痛烈な打球を放ち、守備でも再三の好プレーを見せています。「結果が出る出ないに関係なく、ヒットにしても凡打にしても内容は悪くないので、自分の感覚をキープしながらという感じですね」
守備に関しては「入りましたね。あれだけキャンプでファーストやったらね」、走塁も「きょうだからというわけではないですよ」、ファームの試合に出るのは打席に多く立つため?「そういうふうに言われてきました。いい悪いは関係ないので気にはしてないですね」と、いたってクールな荒木選手です。でもプレーはなかなか熱かったですよ!
最後にへイグ選手のコメントもご紹介します。久しぶりの実戦で「1打席目はちょっと力が入ってしまって、ああいう形(投ゴロ)になった。そのあとは切り替えていい感じで打席を迎えられたと思う。きょう出て体も問題なくできたってことはよかった」と振り返ります。1打席目は初球のカーブが頭上を越え、2球目を打ったもの。積極的にいこうと?「いい球が来ればいこうと自分の中でコントロールして、悪い球は手を出さないという意識だった」
1軍の開幕に向けて「一番大事なのは試合に出ること。練習も大事だけど、試合の中で出てくるリズムが練習ではわからないので。準備をしていくのにゲームが大事」と話しています。なおペレス選手と2人でタクシーに乗り込んだへイグ選手は「マタアシタ!」と、相変わらず明るく大きな声で挨拶をして帰っていきました。