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大ヒットしたのに『紅白』には不選出──ビルボード年間チャート入りした新鋭たち【女性アーティスト編】 #専門家のまとめ

松谷創一郎ジャーナリスト
ヨルシカ「晴る」MVより。

 『NHK 紅白歌合戦』が今年も放送された。しかし、そこには大ヒットしたにもかかわらず姿を見せなかったアーティストも多くいる。とくに注目すべきは、ビルボード・ジャパンのArtist100とHot100の両部門で年間トップ100入りを果たしながらも、『紅白』とは無縁の新鋭たちだ。
 このまとめでは、『紅白』の人選が始まる昨秋以降に音源配信かMV公開された女性アーティストの4つのヒットに焦点を当てる。存在感を示しながら独自の道を切り開く彼女たちの軌跡をたどりながら、2024年の音楽シーンを振り返る。

ココがポイント

ヨルシカ「晴る」:ビルボード Hot100 年間22位、Artist100 年間18位

星街すいせい「ビビデバ」:ビルボード Hot100 年間48位、Artist100 年間65位

羊文学「more than words」:ビルボード Hot100 年間64位、Artist100 年間68位

aespa「Supernova」:ビルボード Hot100 年間99位、Artist100 年間28位

エキスパートの補足・見解

 アニメとのタイアップは、日本の音楽における重要なマーケティング手法として確立されつつある。ヨルシカ「晴る」(『葬送のフリーレン』第2期OP曲)や羊文学「more than words」(『呪術廻戦』第2期ED曲)にみられるように、従来の「アニソン」の枠組みを超え、作品世界観との有機的な融合が志向されている点が注目される。

 

 VTuber分野からは、星街すいせいの躍進が注目に値する。彼女は独自のコミュニティ形成に成功し、Adoやヨルシカと同様、覆面性を特徴とする新世代アーティストの代表格として位置づけられている。

 K-POP市場においては、aespaが「Supernova」でさらなる大ヒットを収めた。NewJeansによってパラダイムシフトを経験したK-POPにおいて、EDMを基調とした直球のこの作品は、彼女たちの独自のポジショニングを表している。

 これら新興アーティストの台頭には、旧来的なジェンダー観からの脱却という共通性が見出せる。ルッキズム否定のような覆面性、ヴァーチャルアイデンティティの活用、アイドルとは異なる強さを前面に出す女性像など、その表現は極めて多様化である。

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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