大ヒットしたのに『紅白』には不選出──ビルボード年間チャート入りした新鋭たち【男性アーティスト編】 #専門家のまとめ
今年の『NHK紅白歌合戦』でも看過できない現象は、ビルボード・ジャパンの主要指標である年間Artist100およびHot100の両部門で顕著な実績を残しながら、出演しなかった新興アーティストの存在だ。
このまとめ記事では、選考が始まる前年秋以降にデジタル配信・MV公開をした男性アーティスト4組の楽曲をピックアップする。先に公開した「女性編」に続き、彼らの表現と2024年の音楽市場をざっくりと振り返る。
ココがポイント
SPYAIR「オレンジ」:ビルボード Hot100 年間29位、Artist100 年間49位
シャイトープ「ランデヴー」:ビルボード Hot100 年間32位、Artist100 年間56位
友成空「鬼ノ宴」:ビルボード Hot100 年間40位、Artist100 年間55位
MY FIRST STORY × HYDE「夢幻」:ビルボード Hot100 年間52位、Artist100 年間72位
エキスパートの補足・見解
まず補足として、MY FIRST STORY × HYDEによる「夢幻」について。HYDEはL'Arc~en~Cielのメンバーとして過去5回の出演実績があるが、マイファスは未出演であることから、本対象に含めている。
さて、長年にわたりJ-POPはグローバルな音楽潮流から乖離した独自の発展を遂げてきた。その主要因はCD販売を中心とした産業構造にあり、音楽配信への移行が大きく遅延したのは筆者をはじめ多くの専門家が指摘してきたとおりだ。
こうした「音楽産業における鎖国状態」は、潤沢な国内市場によって維持されてきた。その市場特性は、従来的なロックの範疇には収まらないバンドサウンドの継続と、アニメ主題歌の特異な発展という2つの独自文化を育んだ。SPYAIRやシャイトープの台頭も、こうした土壌から生まれた現象である。一方で、グローバルなトレンドであるヒップホップの受容はかなり遅れを取ってきた。
今回のまとめでこのような文脈において注目すべきは、やはり友成空の存在だ。藤井風と同様、既存のバンドやボーカロイド文化とは一線を画す独自の音楽性を確立しており、新たな潮流を示唆する存在として注目に値する。