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性犯罪刑法、更なる改正に向けて要望書 森大臣「3月中にできるだけ進行させていきたい」

小川たまかライター
森まさこ法務大臣に要望書と署名を手渡す市民団体(3月17日/筆者撮影)

 名古屋高裁の逆転有罪判決など、関連のニュースが続いている性犯罪に関する刑法について、3月17日、市民団体の代表らが森まさこ法務大臣に改正を求める要望書と9万人を超える署名を提出した。

 提出のあとの意見交換では森大臣から「3月中にできるだけ進行させていきたい」という言葉が出たといい、更なる改正を求めてきた団体らは前向きに受け止めている。

・署名は昨年のおよそ2倍、9万4231人

 この日、12団体からなる刑法改正市民プロジェクトは、森法務大臣に「性犯罪に関する刑法の改正を求める要望書」を提出(記事末尾に団体名と要望書の全文)。要望書では、改正のための法制審議会、もしくはその前段となる検討会を設置することなどを求めた。

 また、性被害当事者を中心とする団体、一般社団法人Springら3団体が昨年5月から開始したオンライン署名を提出。この署名は昨年6月にも法務省に提出されていたが、その後も署名を募り、当時の2倍以上となる9万4231人分(16日13時時点)が集まったため再度提出となった。

署名と同時に書き込めるコメントは3000件以上集まった。中には自らの被害を伝える内容も(Spring提供)
署名と同時に書き込めるコメントは3000件以上集まった。中には自らの被害を伝える内容も(Spring提供)

・森大臣と約20分間の意見交換で「3月中に」

 要望書の提出後、5団体の代表が出席して記者会見を開き、森大臣との約20分間の意見交換の中での回答を発表。森大臣からは、「3月中にできるだけ進行させていきたい」「被害者の声を審議会に反映させ、迅速に進めたい」といった回答があったという。

 2017年の改正では、3年後を目処に見直し検討を行う可能性があるとされていた。その3年となる今年にかける当事者団体らの思いは強い。これまでも要望を繰り返してきたが、法務大臣から「3月中に」という言葉が出たことは大きい。

 早ければ3月中に、見直しに向けた審議会もしくは検討会の設置が決定する可能性がある。

 記者会見に出席したNPO法人ぱっぷすの金尻カズナさんは「スピード感をもってという力強い言葉をもらった。3月中にと仰っていたので心強い」と笑顔を見せた。

司法記者クラブでの会見の様子。中央がSpring代表理事の山本潤さん(筆者撮影)
司法記者クラブでの会見の様子。中央がSpring代表理事の山本潤さん(筆者撮影)

・名古屋高裁の逆転有罪、「無関係ではないと思っている」

 このタイミングでの要望書提出になったことについて、認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子弁護士は法務省内での実態調査が一通り終わったタイミングであると説明。

 また、Spring代表理事の山本潤さんは「直前のタイミングでワンツー議連(自民党の性暴力に関する議員連盟)から話が進んだ。12日に名古屋高裁で逆転有罪判決が出た流れと無関係ではないと思っている」と話した。

 署名は12日以降、1万人分以上増えたという。

・学生団体からも「署名の重要性、知って」

 伊藤弁護士は、「逆転有罪判決から非常に関心が高まったと認識している。刑法の性犯罪規定が非常に不十分で、準強制性交等罪の抗拒不能に関しては非常に曖昧。暴行脅迫要件を撤廃して不同意性交等罪を導入すること、地位関係性を利用した性犯罪の規定を新設すること、性交同意年齢を引き上げること、この3点の要望を含めて改正を進めることが重要」と話した。

 署名を集めたのはSpring、ヒューマンライツ・ナウのほか、学生を中心とする一般社団法人ボイスアップジャパン。同団体ICU支部の遠藤理愛さんも会見に出席。学生の間で「性的同意」を広める活動が広がっていることを挙げたほか、「学生として若者として、この署名の重要性を知っていただきたい。加害者が起訴されない、無罪になることがあり、被害者の声が国に届いていない。見本となる姿を示していただきたい」とコメントした。

・性犯罪に関する刑法の改正を求める要望書

(刑法改正市民プロジェクト/2020年3月17日)

 私たちは、刑法性犯罪関連の情報共有・実態把握を踏まえて活動する市民団体の集まりです。私たちは性暴力被害者の実態に即した改正を実現するために、下記の通り、要望いたします。

1.2017年7月に施行された「刑法の一部を改正する法律」の附則第9条に基づき、法制審議会「刑事法(性犯罪関係)部会」、もしくはその前段となる検討会を設置し、刑法改正を審議してください。

2.上記の審議における委員に、性暴力被害当事者、ならびに性暴力被害の現場で支援に携わる者を、複数名入れてください。

3.上記の審議にあたり、以下を検討してください。

1)2017年の改正にあたり検討されたが、見直しが実現しなかった事項

控訴時効の撤廃又は停止/配偶者間において強制性交等罪が成立することについての明文化/暴行・脅迫要件の緩和・撤廃(不同意性交に関する規定の創設)/地位・関係性を利用した性的同意行為に関する規定の創設/いわゆる性交同意年齢の引き上げ/刑法における性犯罪に関する条文の位置

2)実態を踏まえ、新たに検討を求める事項

盗撮並びに私事性的画像記録の提供等に関する構成要件の創設/2人以上の者による性犯罪に関する規定の創設(※2017年に集団強姦罪は廃止となっている)/障害に乗じた性犯罪に関する規定の創設/容疑者への取り調べ、ならびに被害事実確認面接における、録音・録画データの証拠採用

出典:性犯罪に関する刑法の改正を求める要望書(2020年3月17日)

【刑法改正市民プロジェクト】

一般社団法人Colabo/NPO法人しあわせなみだ/NPO法人人身取引被害者サポートセンターライトハウス/NPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク/一般社団法人Spring/NPO法人性暴力救援センター・大阪SACHICO/NPO法人性暴力救援センター・SARC東京/性暴力禁止法をつくろうネットワーク/NPO法人全国女性シェルターネット/NPO法人ぱっぷす/認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ/NPO法人BONDプロジェクト(五十音順)

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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