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ジョーカー、ドクター・ストレンジに憧れる。奇抜な役も切望…。EXOスホ、俳優への思いをインタビュー

斉藤博昭映画ジャーナリスト
マカオ国際映画祭でインタビューに答えるスホ。(撮影/筆者)

マカオ国際映画祭のアンバサダーに

アジアでも、まだ歴史が浅いマカオ国際映画祭。今年で4回目を数えるが、注目を高める役割を託されるのが「アンバサダー」という存在だ。簡単に言えば「映画祭の顔」である。ちなみに今年の東京国際映画祭では、その位置を松岡茉優が務めた。マカオが積極的なのは、このアンバサダーに世界的スターを呼ぶこと。昨年はニコラス・ケイジ、一昨年はジェレミー・レナーという大物が務め、今年、その役にジュリエット・ビノシュとともに就いたのが、EXOのスホ(Suho)だ。

K-POPの人気グループ、EXOのリーダーでありボーカルを担当し、ミュージシャンとして大成功を収める28歳。ドラマや映画、ミュージカルの舞台で俳優としての活躍も増えている。スホの出演した映画『The Present』は、マカオ国際映画祭でもソールドアウト。その人気は絶大である。

マカオ国際映画祭のアンバサダー(明星大使)用のスホの写真 courtesey of IFFAM
マカオ国際映画祭のアンバサダー(明星大使)用のスホの写真 courtesey of IFFAM

マカオ、中国圏以外のインターナショナルのジャーナリストの共同インタビューに、スホが応じた。じつはインタビューの前に質問の提出が求められ、多くのNGも返ってきたのだが、そんなNGはどこへやら。ほぼ無法地帯と化し、自由に進むのがインターナショナルの取材である(日本ではありえない!)。

各国のジャーナリストからの英語による質問に、通訳が入るとはいえ、ちょっぴり緊張気味に、照れくさそうに応えるスホ。真っ赤な髪と、少しどぎまぎしているような表情のコントラストが印象的だった。

ティム・バートンの「イノセント」が大好き

ーーすでに俳優としてのキャリアも積んでいますが、今後、一緒に仕事をしてみたい国際的な監督や俳優は誰ですか?

スホ「好きな監督はたくさんいます。僕はホラー映画が好きなんですが、その流れで頭に浮かぶのが、ティム・バートンと(ホラーの監督とは違うが、なぜか)クリストファー・ノーランです。とくにバートンは、イノセントな世界とイノセントなキャラクターを描くので、本当に愛しているんですよ。共演したい国際的スターは、いっぱいいますけど、ちょっと特定の名前を挙げるのは……。おこがましいですよね(笑)」

ーーでは今後、演じてみたい役柄は?

スホ「そうですね。これまで演じた役の多くは前向きなキャラクターだったので、そろそろ悪役も演じてみたいです。最近、そう感じるのは、ホアキン・フェニックスのジョーカー役に魅了されたからでしょうか」

ーーその他にインスピレーションを受けた映画や音楽は何ですか?

スホ「『ジョーカー』とは違いますが、最近好きになる映画は、人々の日常や感情を描いている作品ですね。ホアキンの出演作では『her/世界でひとつの彼女』が気に入りました。韓国映画では『パラサイト 半地下の家族』で、やはり日常の表現に惹かれました。音楽では、コールドプレイやマルーン5が、僕のストレスを和らげてくれるバンドです」

ーー演技へのアプローチについて教えてください。

スホ「脚本を受け取ったら、とにかく演じる役を深く知ろうとします。リサーチをしながら、演じる役の個性と僕のパーソナリティの共通点を見つけていくのです。その共通性をどんどん掘り下げていくと、感情を共有できて、役に入り込める……。そんな感じでしょうか」

ーーもしマーヴェルのヒーローになれるとしたら、何を演じたいですか?

「うーん、ひとつ選ぶとしたら、ドクター・ストレンジですかね。映画自体も好きなんですが、あのキャラクターが大好きです。僕自身、ストレンジ(=奇妙)になりたいという欲望がありますから(笑)。たとえば外見は70代の老人が、じつはスーパーヒーローだったとか、見かけと能力のストレンジなギャップにもワクワクします」

『The Present』は、消防用の赤外線カメラを開発し、ビジネスを始める若者たちの物語。そこに怪しい男が現れ、予想もしない展開になだれ込む。メガネのスホは、いつものイメージと違う。
『The Present』は、消防用の赤外線カメラを開発し、ビジネスを始める若者たちの物語。そこに怪しい男が現れ、予想もしない展開になだれ込む。メガネのスホは、いつものイメージと違う。

ーー今回、映画祭で上映される『The Present』では、日本でも公開された2015年の『グローリーデイ』などと違って大人っぽいキャラクターです。青春イメージから脱却しましたね。

「まず言いたいのは、僕は青春とか十代という言葉に惹かれるってことです。この2つは、夢と希望をイメージさせますからね。そういう役を演じることで、若い世代に影響を与えられるのも魅力です。でも僕も『グローリーデイ』の後、ここ数年でいろんな経験をして成長しました。青春という言葉が、単に年齢が若いことを意味するのではなく、何歳になっても夢や目標をもつことが大事だとわかってきたんです。いつまでも『青春』のままでいていいんですよ」

音楽と演技の仕事のバランスに満足している

ちょっぴり緊張気味? (撮影/筆者)
ちょっぴり緊張気味? (撮影/筆者)

ーー音楽と俳優の仕事は、どうやってバランスを取っているのですか?

「多くのK-POPのグループは、だいたい1年前くらいにスケジュールが決まっています。だからその時点で、空いている時間がわかるわけです。今は、その空間に俳優の仕事を入れている感じですね。だから、うまくバランスが取れているだと思います」

ーー両方の仕事を続け、影響し合っている部分もあるわけですね。

「K-POPのシンガーの仕事は多忙なので、演技の仕事は、脚本をもらったらできるだけ早めに実現できるかどうか決断します。そして映画の中では、Kポップシンガーと別の顔を見せられると実感しています。『映画の中のK-POPシンガー』という理解が年々深まっている感じもありますね。今年の初めに、短編映画でヒップホップのスターを演じたとき、その感覚を強く意識しました」

マカオ国際映画祭のオープニングのレッドカーペットでは、赤い髪のスホが登場したとたん、他のスターとは明らかにレベルの違う大歓声が上がった。日本では公開された映画も少なく、まだ俳優としてのイメージは強くないものの、今後、EXOと並行して、アジアという枠を超えて映画で活躍するのか? マカオ国際映画祭でアンバサダーを務めたことで、彼の野心に火がついたかもしれない。

『The Present』より。courtesy of IFFAM
『The Present』より。courtesy of IFFAM
映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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