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日本代表の大会前後って…ワールドカップ取材日記13【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ジャパン開催前日の円陣。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

ラグビーワールドカップのイングランド大会が9月18日~10月31日まであり、ニュージーランド代表が2大会連続3回目の優勝を果たした。日本代表は予選プール敗退も、国内史上初の1大会複数勝となる3勝を挙げ、話題をさらった。

以下、日本テレビのラグビーワールドカップ2015特設サイトでの取材日記を抜粋(13)。

【11月1,2日】

ヒースロー空港を飛び立ったカタール航空の機内で、これを書いています。

「目的地までの飛行時間 02hr03mins(2時間3分)」

成田空港まで? いや、ドーハ空港まで。買ったのは、往復で10万円以内の航空券です。トランジット(乗り換え)があるのです。往路の際にわかっています。降り立った先には、白装束の男性がたくさんいます。

10月31日までのワールドカップイングランド大会、楽しませていただきました。

「ひとつの生命体として呼吸をする組織が強い」

「舞台が大きくなるほど経験者が力を発揮」

そういうラグビーの真理を再確認しました。

9月19日には、日本代表が世界のスポーツ史に残る偉業を達成しました。その場にいることは、僕にとっても意味がありました。

ノーサイドの瞬間に記者席でまったく興奮しないようにした自分の決断。それを間違っていなかったと、帰国してから証明します。

古風な景観の保たれたイングランドでの生活も、総合的に見ればいいものでした。これでもっと言葉が話せていたら…。学生時代から通算して、まったく英語を勉強してこなかったつけは見事に回ってきました。僕と同じく決勝戦まで残った記者さんに、「向さん、それは言語をなめていますよ」と言われる始末です。次の日本代表のヘッドコーチも、おそらく外国人でしょう。その意味では、帰ってからも英語に耳を慣らすしかありません。

日本は、空前のラグビーブームの只中にあるようです。五郎丸歩選手が出場した練習試合が、ワイドショーでマナ中継されたようです。人はこういうものを「バブル」と言います。一体、ブーム前も通っていた取材先でどんな変化が起こっているのか…。悪友に連れられゲームセンターへ足を踏み入れる小学校低学年の心境です。

日記は、これにて終了です。明らかにめちゃくちゃなペースでのアップにお付き合いいただいた読者の皆様、日本テレビのHディレクター、本当に感謝申し上げます。

【プロローグ】

帰国後は、明らかにジャパンの選手の立場が変わっていました。「僕は変わっていないですが、周りは変わっています」とは某選手の談話ですが、ワールドカップ前後の両方を(比較的)近くで観てきたものからすれば、明らかに変わっています。そして、僕と同じような立場の人がその変化を具体的に語らないあたりが、その変化を如実に表しています。もちろん、それはいいことでも悪いことでもありません。

世界で存在感を示したアスリートの価値は、相応に上がるべきだと考えます。現状では「時の人」の領域に止まっている選手たちは、根源的な価値をグラウンドでこそ示しています。表面上の「価値」ではない本当の価値を。それを見定め、取材し、お伝えできるよう、2016年も地べたを這い回ります。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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