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ベッキー、SMAPと芸能スクープ連発の週刊誌をめぐる気になる事情

篠田博之月刊『創』編集長
年初から相次いだ週刊誌の芸能スクープ

年明け早々から『週刊文春』がベッキーの不倫騒動をスクープ、続いて『週刊新潮』がSMAP分裂騒動をスクープするなど、週刊誌が意気軒高だ。これらの芸能スキャンダルについては稿を改めて書きたいと思っているが、ここではその週刊誌が今どういう状況なのか書いておきたい。発売中の月刊『創』2月号は出版界の特集で、12月にかなり取材を行ったのだが、雑誌界の厳しい現状には深刻な気持ちになった。この何年か各誌とも部数を落としているのだが、昨年後半は大きな事件がなかったため、落ち込みが加速している。

そうした状況へのテコ入れとして昨年、多くの週刊誌で編集長が交替したのだが、『フライデー』や『週刊ポスト』など以前の編集長が再び現場に呼び戻された例もある。そのなかで部数が下げ止まり、やや回復したと言われるのが『週刊現代』だが、これも何かスクープを放ったというのでなく、年金や老人ホーム、高齢者のSEXなど、高齢者向けに誌面をシフトさせたのが功を奏したと言われている。

権力者のスキャンダルを暴くといったことでなく高齢者向けの誌面にしたことで部数が回復したというのは、考えようによっては寂しいことだが、業界全体が激しく下降している中で部数回復とあって『週刊現代』は話題になっている。号によっては『週刊新潮』を抜いて首位独走の『週刊文春』に次ぐ2位にのしあがっているという。

さて、雑誌界をめぐるそうした状況を踏まえたうえで、昨年10月、トップ独走の『週刊文春』の新谷学編集長が「春画」掲載をめぐって会社上層部の反発を食らい、「3カ月休養」という措置になった事情を改めて考えてみたい。前述した『週刊文春』のベッキースキャンダルは、奇しくもその新谷編集長が3カ月たって現場復帰した1月14日号で放たれたものだった。

この問題については『創』は昨年12月号に「『週刊文春』編集長『休養』編集会議での社長と現場の緊迫応酬」という記事を掲載。関係者の間で大きな話題になった。というのも、編集長「休養」が現場に通告された昨年10月8日の『週刊文春』の会議では、会社の決定に現場から反発の声があがり、激しいやりとりが行われたのだが、その一部始終がこの記事に書かれていたからだ。

その後、私は前述した『創』2月号の出版特集の取材で、担当役員に取材し、この事件の背景を聞いた。その結果、この問題は単に春画を載せたことの是非ということでなく、もっと根が深いことを知った。「春画掲載が会社として認められないなら口頭で注意をすればよいのであって編集長を現場からはずすといった措置は騒ぎを大きくするだけだ」という声が他社の幹部の間では一般的なのだが、それを木俣正剛取締役にぶつけたところ、こういう返事だったのだ。

「口頭注意ですむなら当然そうしていました」

つまりあの事件はそんな単純な話でなく、『週刊文春』の編集方針をめぐってはもう1年以上にわたって編集部と会社の間で議論が行われてきたというのだ。

業界では『週刊文春』はスクープを連発し、勢いに乗っているように見られているのだが、実は同誌も他誌と同様に部数を落としており、社内では深刻に受け止められている。新谷編集長の路線は、『フライデー』出身の記者を活用した張り込みなどの手法を多用したスキャンダル路線なのだが、それが「家に持って帰れる週刊誌」をモットーにしてきたこれまでの路線と微妙にずれがあり、かつそれらスクープが必ずしも部数につながらないケースもあって、内部では大きな議論になっているというのだ。

木俣取締役のインタビューは『創』2月号に掲載したのでぜひ読んでいただきたいが、

新谷編集長「休養」事件は、そうした背景を踏まえて考えると、なかなかいろいろな問題を含んでいたことがわかる。そんななかで「休養」明けで復帰した新谷編集長が最初に炸裂させたのがベッキースキャンダルだったというのもなかなか意味深だが、ただあのスキャンダルについては、たぶん部数を上げることにつながったと思う。ベッキーのLINEの内容や写真が掲載されていたため、現物を見たいという思いが働いたろうからだが、ただそのプライバシーの扱いについては、いろいろな議論がある。

その問題も稿を改めて書くつもりだが、とりあえず今回、昨年10月8日の『週刊文春』の会議でどんな議論が交わされたか。その『創』の記事を全文、ヤフー雑誌ブログにアップしたのでご覧いただきたい。週刊誌あるいは雑誌をめぐって実に考えるべきいろいろな論点を提供しているからだ。ついでに記事には幾つか数字の誤植もあったので、それも修正した。ぜひご覧いただきたい。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160115-00010000-tsukuru-soci

その一件についても触れた『創』出版特集については下記をご覧いただきたい。

http://www.tsukuru.co.jp/

ベッキースキャンダルとSMAP騒動については近々このブログにアップする予定だ。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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