ハングリー精神は強さの源泉になるのか。
最近は、飽食の時代、豊かな時代となり、何でも手に入るから
「ハングリー精神」がなくなって、骨のある若いのがいなくなった。
なんだかどこかの居酒屋のカウンターで呑んでいたら、隣に座る
年配の愚痴のようだ。
なんとなく眺めていた画面に、2013年9月10日に毎日新聞より
配信された「世界幸福度ランキング2013、国連」という記事にたどり着いた。
さまざまな項目をもとに、各国の「幸福度」をランキングで
出すもので、GDPではなく、GNH(Gross National Happiness)つまり
どれだけ国民総幸福量がどれだけ多いかについてブータンが事例に
なるときに出てきたりします。
記事にもあるよう、日本は43位ということで「ふーん」と思って
いたところ、「そういえば、FIFAランキングも日本はそのくらい
だった気がするぞ」と思ったので、検索かけてみると
最新のFIFA世界ランキングで44位と
なっていました(2013年10月17日)。
※FIFA世界ランキングとは、サッカーの強い国ランキングです。
そこで、世界幸福度ランキングとFIFA世界ランキングに
何かしらの相関関係があり、もしかしたら、幸福度が高い国はスポーツが弱く
幸福度が低い国の方がそこから抜け出すために「ハングリー精神」が涵養され
結果として、サッカーという非常にローコストで始められるスポーツに影響が
見えるのではないかと。
縦軸にFIFA世界ランキング、横軸が世界幸福度ランキングです。
左下に分布が集まれば、幸福度ランクが高いほどサッカーが強い
右下に分布が集まれば、幸福度ランクが低いほどサッカーが強い
となります。ハングリー精神がひとを強くするのであれば
右下に集まってもよさそうです。
実際には、比較的満遍なく点が分布していて、どちらかと
言えば、幸福度ランキングの高さとサッカーの強さが
相関しているように見えます。
もちろん、幸福度が高いのにサッカーが弱い国も
あります。例えば、カナダ(幸6位、サ111位)や
ルクセンブルク(幸19位、サ127位)という国も
ある一方、
アルメニア(幸128位、サ38位)やマリ(幸132位、サ41位)といった
幸福度が低くてもサッカーが強い国もあります。しかし全体的な
傾向としては勝負の世界で戦っていくには、ハングリー精神といった
ものよりも、安定した生活や科学的なトレーニングなど、アスリートが
育つ、育てられる社会の方に一日の長があるように見えます。
プロ選手が「強い気持ち」の大切さを強調することがありますが
おそらくは、一定レベルまでいくと総じてレベルが高くなり、その
ハイレベルのなかでも勝ち抜く最後の決め手が、気持ちなのでしょう。
つまり、気持ちがあるからハイレベルになる(ハングリー精神)のでは
なく、あくまでも高いレベルへのプロセスは、安心・安全な環境や
科学的なトレーニング、戦略的思考であって、
一定程度のレベルに達した、然程差異がなくなってくる世界においては
気持ち(ハングリー精神というより、メンタルコントロールでしょうか)が
効いてくるのではないかと思うわけです。