豊島名人、土壇場から挽回なるか――第78期名人戦七番勝負第6局展望
豊島将之名人(30)に渡辺明二冠(36)が挑戦する第78期名人戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)七番勝負は第5局まで終えて、渡辺二冠が3勝2敗と名人奪取に王手をかけている。8月14、15日に大阪府大阪市「関西将棋会館」で行われる第6局の展開を予想してみた。
<第78期名人戦七番勝負日程とこれまでの結果>
第1局 6月10、11日 三重県鳥羽市「戸田屋」
渡辺三冠(当時) ○
第2局 6月18、19日 山形県天童市「天童ホテル」
豊島名人 ○
第3局 6月25、26日 東京都渋谷区「将棋会館」
豊島名人 ○
第4局 7月27、28日 東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
渡辺二冠 ○
第5局 8月7、8日 東京都渋谷区「将棋会館」
渡辺二冠 ○
第6局 8月14、15日 大阪府大阪市「関西将棋会館」
第7局 8月27、28日 東京都渋谷区「将棋会館」
崖っぷちの豊島名人
なにより気がかりなのは豊島名人の最近の調子。タイトル戦続きとはいえ非常に厳しい状況だ。
<豊島名人の最近10局>※相手の肩書は対局当時(未放映のテレビ対局を除く)
7月5日 叡王戦七番勝負第2局
対永瀬拓矢叡王 持将棋(引き分け)
7月13日 王座戦本戦準決勝
対渡辺三冠 ●
7月15日 棋王戦本戦
対上村亘五段 ●
7月19日 叡王戦七番勝負第3局
対永瀬叡王 持将棋(引き分け)
7月19日 叡王戦七番勝負第4局(第3局と同日対局)
対永瀬叡王 ●
7月23日 叡王戦七番勝負第5局
対永瀬叡王 ●
7月27、28日 名人戦七番勝負第4局
対渡辺二冠 ●
8月1日 叡王戦七番勝負第6局
対永瀬叡王 ○
8月7、8日 名人戦七番勝負第5局
対渡辺二冠 ●
8月10日 叡王戦七番勝負第7局
対永瀬叡王 ●
豊島名人の直近10局は1勝7敗2持将棋と大きく負け越し。名人戦と並行して挑戦中の叡王戦七番勝負でも第7局まで終えて2勝3敗2持将棋(1千日手)とカド番に追い込まれている。
トップ棋士の宿命とはいえ、遠距離の移動を伴うタイトル戦の連戦、中でも叡王戦で長手数の持将棋2局の疲労が影響しているのは間違いない。ここで踏み止まれるかどうか棋界第一人者としての真価が問われている。
<渡辺二冠の最近10局>※相手の肩書は対局当時(未放映のテレビ対局を除く)
6月18、19日 名人戦七番勝負第2局
対豊島名人 ●
6月25、26日 名人戦七番勝負第3局
対豊島名人 ●
6月28日 棋聖戦五番勝負第2局
対藤井聡太七段 ●
7月4日 王座戦本戦
対行方尚史九段 ○
7月9日 棋聖戦五番勝負第3局
対藤井七段 ○
7月13日 王座戦本戦準決勝
対豊島竜王・名人 ○
7月16日 棋聖戦五番勝負第4局
対藤井七段 ●
7月27、28日 名人戦七番勝負第4局
対豊島名人 ○
8月3日 王座戦挑戦者決定戦
対久保利明九段 ●
8月7、8日 名人戦七番勝負第5局
対豊島名人 ○
渡辺二冠(棋王・王将)は6月から7月にかけ行われた棋聖戦五番勝負で藤井七段に1勝3敗で敗れて失冠。王座戦も挑戦者決定戦で敗れるなど痛い星を落としているが、直近10局は5勝5敗とまずまず。
なにより「天王山」の名人戦第5局で接戦を制したのは大きく、勝負の流れは挑戦者に味方している。
第6局は相矢倉か
両者の直接対決は渡辺二冠の20勝13敗(2千日手)。
第6局は渡辺二冠の先手。第4局でも用い勝利した相矢倉に誘導する可能性が高いと見る。
相掛かりや角換わりの可能性もゼロではないが、うまくいっている作戦をあえて変えることを戦略家の渡辺はしないと予想する。
第6局に関して渡辺二冠有利は間違いないが、もし豊島名人が勝ってタイに持ち込んだ場合、最終第7局は逆に豊島に流れが移るだろう。