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最優秀防御率&最多勝の二冠でも、ドジャースのエースはサイ・ヤング賞を逃す!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)Oct 13, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ナ・リーグのサイ・ヤング賞は、クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)、マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)、スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)が、ファイナリストの3人に挙がっている。

 カーショウはリーグ1位の防御率2.31を記録し、最多の18勝(4敗)を挙げた。シャーザーは2位の防御率2.51と4位タイの16勝(6敗)、ストラスバーグは3位の防御率2.52と6位タイの15勝(4敗)だ。奪三振は、シャーザー(1位/268)、ストラスバーグ(7位/204)、カーショウ(8位/202)の順に並ぶ。

 最優秀防御率と最多勝のタイトルを獲得しながら、サイ・ヤング賞に選ばれなかった投手は、各リーグそれぞれの選出となった1967年以降では、マイク・ボディカー(1984年AL)だけだ。奪三振も含めたトリプル・クラウン(三冠)は、延べ10投手の全員が受賞。「防御率&勝ち星」の二冠は、延べ11投手中10人がサイ・ヤング賞を手にした。

 他の二冠と比べ、「防御率&勝ち星」がサイ・ヤング賞を得る割合は高い。「防御率&奪三振」の受賞は延べ15投手中10人、「勝ち星&奪三振」は延べ9投手中6人にとどまる。

 ただ、今年のカーショウは、「防御率&勝ち星」の二冠にもかかわらず、サイ・ヤング賞を逃すかもしれない。

 そう考える最大の理由は、イニングの少なさだ。シャーザーが200イニングをクリアしたのに対し、カーショウとストラスバーグは180イニングにすら届かなかった。

 過去にサイ・ヤング賞を受賞した延べ112投手中、200イニング未満は12人。先発投手に限れば、4人しかいない。しかも、リック・サトクリフ(1984年NL)は6月半ばまでア・リーグで投げており、それを合わせれば240イニングを超える。フェルナンド・バレンズエラ(1981年NL)とデビッド・コーン(1994年AL)は、いずれも短縮シーズンだった。残る1人、カーショウ(2014年NL)は198.1イニング。ほぼ200イニングと言って差し支えない。

 200イニング以上を投げていても防御率4点台の投手――ジェフ・サマージャ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)とゲリット・コール(ピッツバーグ・パイレーツ)――が相手ならともかく、カーショウとシャーザーの防御率は0.20しか違わない。

 シャーザーがサイ・ヤング賞に輝けば、2年連続3度目となり、受賞回数はカーショウら5人と並ぶ。その上にいるのは、ロジャー・クレメンス(7度)、ランディ・ジョンソン(5度)、スティーブ・カールトン(4度)、グレッグ・マダックス(4度)の4人だ。ストラスバーグは200イニング以上のシーズンが2014年しかなく、この年に記者3人から5位に挙げられた以外は、票を得たことがない(サイ・ヤング賞の投票とポイントについては「2人の記者がバーランダーに投票していれば、サイ・ヤング賞の行方は変わっていたのか」で説明した)。

 投票結果は、11月15日に発表される。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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