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10代で監督デビューした天才少女と聞き「お会いする前は、緊張しました」。主演の吉報はある日突然!

水上賢治映画ライター
風間志織監督作品に欠かせない俳優、クノ真季子   筆者撮影

 高校2年生のときに制作した 8mm『0×0(ゼロカケルコトノゼロ)』がぴあフィルムフェスティバルに入選し、「天才少女の出現︕」と10代からその才能を高く評価された風間志織監督。

 現在、風間監督が2000年代に発表した3作品「チョコリエッタ」「火星のカノン」「せかいのおわり」を上映する<チョコリエッタ 2021 リバイバル上映+風間志織監督特集>が開催中だ。

 いわゆる旧作の上映になるが、おもしろいことにこの3作品、風間監督の先見の明とでもいおうか。

 むしろ今の時代の方がリンクすることや今の方が切実に感じられるかもしれない点が多々。新たな作品に出合うような新鮮さがいずれの作品にもある。

 ありきたりな言葉になるが、時代を経ても決して色褪せない風間志織監督作品。

 その中で、今回上映される3作品「チョコリエッタ」「火星のカノン」「せかいのおわり」に改めて出合うと、ひじょうに大きな役割を果たしているのではないか?と、気づかされる俳優がいる。

 「火星のカノン」で主演を務め、「せかいのおわり」「チョコリエッタ」にも出演するクノ真季子だ。

 今回の<チョコリエッタ 2021 リバイバル上映+風間志織監督特集>の裏テーマは、彼女の魅力に再び出会うことかもしれない。

 風間監督作品を語る上で欠かせない俳優のひとりといっていい、クノに風間監督の出会いから出演作品についてまでを訊いた。(全三回)

風間監督にお会いする前は、ちょっと緊張しました

 クノが初めて出演した風間監督作品は1995年の「冬の河童」になる。そのときの現場の印象をこう語る。

「年もわりと近いんですけど、お会いする前は、ちょっと緊張したといいますか。

 高校生のときに発表した作品が、ぴあ(ぴあフィルムフェスティバル)で受賞されて10代から監督として活躍されているときいていたので、同性としても同世代としてもあまりそういう人はいなかったので、すごいなと思って。

 どんな現場になるのかあまり想像できなくて、すごく緊張して迎えた記憶があります。

 ただ、実際の現場は意外とほのぼのしていたんですよ。

 風間監督自身に『こういうものが撮りたい』というこだわりはひしひしと感じられる。

 ただ、それを力業でというのではなく、役者たちが自然に立てるような場を作って自然に出してもらう。そういうひとつの和やかさがあるんです。

 変に緊張してピリついたりすることがない。自然な空気が流れている現場で、当初、ちょっと抱いていた緊張したり怖かったりといったことはなかったですね(笑)。

 ただ、風間監督の鋭さは随所でひしひしと感じました。

 ちゃんと見るところはみていて、そこで妥協することはない。

 少しでも違っていたら、絶対にOKは出ない。

 及第点ぐらいのOKだったら、OKといいつつも必ず『もう1回いきましょうか』となる。

 たとえば、川に入るシーンがあるんですけど、それは深夜の撮影でした。

 どうにか無事に終わって焚火に当たっていたら、日が昇ってきていた。それぐらい、もう納得のいくものになるまで、何時まででもやりますから。

 だから、演じるこちらとしては絶対に手を抜けない。その都度、気持ちを新たにベストを尽くすしかないんですよ。

 テイクを重ねるたびに、わたしはなるべく新鮮な気持ちで新たにシーンに挑むよう心掛けていました。

 でも、このことは苦ではなかったんですよ。むしろ、楽しかったというか、ありがたかった。

 当時、わたしはまだまだ役者として駆け出しで。ミスをするとどうしても次は『ミスしないように』という意識が先に立ってしまう。

 でも、風間監督はそういうのじゃなくて、『これも悪くないんだけど、もう少し違ったこと試してもおもしろいんじゃない』みたいな感じで、もうワンテイクいこうかとなるので、同じシーンでも新たなシーンに挑むような感じで臨める。

 だから、わたしにとっては俳優として、いろいろと教えられるとともにいろいろなチャレンジができる現場でもありました」

「火星のカノン」より
「火星のカノン」より

お仕事をご一緒したあとにプライベートでお会いしている唯一の監督

 その後、風間監督とはプライベートでもたまに飲みにいくようになったという。

「わたしの中では、風間監督が唯一かもしれません。お仕事をご一緒したあとにプライベートでお会いしている監督さんは。

 風間監督が年末に忘年会とか、春に花見の会とかを開かれるたびに、わたしをお誘いしてくれて。

 それで、しょっちゅうというわけではないですけど、仕事抜きに定期的にお会いしていました」

いきなりお話をいただいて、主演でもあったので驚いた記憶があります

 そんな中で、「火星のカノン」の出演は突然入ってきたという。

「いや、風間監督に『ちゃんと事前にいったじゃん』と言われそうなんですけど(笑)、突然切り出された気が……。自信がないんですけど。

 事前に、こんな映画を作ろうと思っているとか、こういう企画があるんだけど、とかいった軽い打診というか。そういうことがなくて、いきなりお話をいただいて、主演でもあったので驚いた記憶があります」

「チョコリエッタ 2021 リバイバル上映+風間志織監督特集」ポスタービジュアル
「チョコリエッタ 2021 リバイバル上映+風間志織監督特集」ポスタービジュアル

「チョコリエッタ 2021 リバイバル上映+風間志織監督特集」

2/3(木)まで広島・横川シネマにて

2/4(金)まで愛知・シアターカフェにて開催中

2/11(金)~小山シネマロブレにて(*「チョコリエッタ」のみ)公開

ポスタービジュアルおよび場面写真は(C)寿々福堂/アン・エンタテイメント

2022年2月5日(土)~11日(金・祝)まで横浜シネマノヴェチェントにて、

<孤高の寡作家 風間志織監督特集>の開催!

詳細は→https://cinema1900.wixsite.com/home/kazama

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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