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子どもの姿が全く見られない!センバツの不入りは深刻! 甲子園に客足を向けさせる唯一の方策とは?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツの入場者数が伸び悩んでいる。回復するために必要なこととは?(筆者撮影)

 センバツの決勝は、地元・報徳学園(兵庫)の登場もあって、今大会最多の34200人が詰めかけた。しかし日曜日の好天、しかも地元の人気校登場という好条件にしては、いささか寂しい数字と言わざるを得ない。

現在のセンバツは春休み前に半分終わる

 ちなみに昨夏、慶応(神奈川)と仙台育英(宮城)の決勝は、42100人だった。しかし、総入場者数を試合数で割って1試合で平均すると、昨夏の13319人に対し、今春は10545人と、3000人近く少ない。これはセンバツ特有の不利な条件が背景にあることとも無関係ではない。センバツは20年ほど前から、夏ほど入らなくなった。最近のコロナ禍が直接の原因ではなく、最も大きな理由は開催時期が早まったことによる。筆者が入社したころは、3月27日前後に開幕していた。今年(18日開幕)より10日ほど遅かったことになる。つまりセンバツは「春休みのイベント」であり、現在のような会期だと、半分は春休み前に終わってしまう。

昔は夏よりも子どもの姿が多かったセンバツ

 今大会は開幕が月曜日で、ずっと寒い日が続いていた。客足が遠のくのも無理はない。さらに肝心の最初の土日が雨にたたられ、不入りに拍車をかけた。また、一定の集客が見込める近畿勢が初戦5連敗で、早々に姿を消したのも響いた。この日程はプロ野球の開幕が遅くならない限り、仕方ないと諦めるしかない。全観客に占める子どもの割合は、夏より春の方が高かったのは、遠い昔の話である。

無料開放の外野席は良心

 そして子どもたちが気軽に入れたのが、無料開放されていた外野席である。甲子園の外野席は、春夏とも長く無料開放されてきた。甲子園の高校野球が、手軽なレジャーと称された所以でもある。また、子どもたちに少しでも生の試合に触れてもらうための良心でもあった。コロナ前の2018年夏から、混雑による事故防止を理由に有料化(大人500円、子ども100円)され、センバツもコロナ期の3年前から有料(今年は700円、子ども100円で指定席)となっている。お盆休み等で大混雑する夏はまだ理解できるが、ただでさえ不入りのセンバツ。コロナも明けたことなので、無料開放を復活してほしい。

チケット販売のネガティブな3要素

 年末に、現在のチケット販売方法について言及し、高校野球文化が破壊されていると書いた。確かにコロナ禍で世間が大騒ぎしている時期、チケット売り場に長蛇の列ができるのはまずかった。しかしもうそれは過去の話。すべてを元に戻すべきなのだ。現在のチケット販売方法には、客足を遠のかせるネガティブな要素が3つある。

・とても子どもの小遣いで買えないほどの入場料の高騰(今大会ネット裏3900円)

・特定の試合が終われば空席になってしまう指定席

・順延になればお目当ての試合が見られない、もしくは見るはずのなかった試合を見る羽目になる日付固定の売り方(リスクを伴う前売りが伸び悩む大きな原因で、今大会は当日販売が非常に多かった)

指定席でなければ追加販売もできる

 中でも客足を遠のかせる元凶が「指定席」である。上段、中段などの大まかなゾーン以外、自分で席を選べないのだ。まさに座ってびっくりの可能性だってある。以前は、開門前に並ぶことをいとわなければ早いもの勝ちだったし、途中で帰る人がいれば、空いた席に座ることもできた。指定だと、もう帰ったのか、まだ来ていないのかもわからない。空いているなら座りたいなと思っても、指をくわえるしかないのだ。ちなみに以前は、空き具合によって、追加販売があった。

春休みの子どもたちに外野を無料開放できないか

 チケットの高騰は、コロナ期の経費増大もあって以前の額に戻すのは不可能に近い。と言うより、チケット業者に販売を丸投げしているので、そちらに払う経費もバカにならないはずだ。そこで、外野は全て無料せめて自由席にしてもらいたい。特にセンバツでそれを望みたい。春は出会いと別れの季節。春休みは子どもたちにとって、節目の時期でもある。筆者も自身の出来事とセンバツを重ねて、懐かしく思い出すことがある。「甲子園で見たいけど、テレビもネットもあるし」。そう思わせてはいけない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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