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本田圭佑がこだわり続ける指導者の「ライセンスを取得しない」問題に自身の見解。論点はどこに?

金明昱スポーツライター
今後の活動や目標などについて熱く語った本田圭佑(写真・筆者撮影)

「彼(本田圭佑)にライセンス取れって言ってやってくださいよ」

 本田圭佑がプロデュースする「Soltilo chiba FC」ユース(U-18)の監督を務める金正訓氏は、冗談まじりにそう言いながら笑っていた。

 この話になったのは、本田がGMを務める東京都社会人リーグ1部の「EDO ALL UNITED」の2次セレクションを視察(7日、千葉市内)したあと、報道陣の取材に応じた際に「(S級)ライセンスは取らずに進めていけたらなと思っています」と答えたからだ。

 ちなみに金監督は本田と同い年で、ガンバ大阪ジュニアユース時代はチームメイト。サガン鳥栖などでプレーし、現役引退後は鳥栖で監督経験のある元韓国代表MFユン・ジョンファンの通訳や同クラブで強化部などを歴任。昨年からSoltilo chiba FCのユース監督を務めているが、子どものころからの友人である本田には、そうした意見が言える仲なのだろう。

目標は「W杯で指導者として優勝」

 メディア対応に応じた本田のウィットに富んだトークは健在で、今後の自身のキャリアについても、明確な目標があった。

「選手としてやりたいことは、20カ国で点を取りたいというのは公言しています。新しいリーグにしか興味がないのと、2部にも興味がない。膝の手術のリハビリが大変で、この歳になってこんなにいうこときかへんか、という苦しみを味わっている。本当の目標にしているものは、プレーヤーとして成り上がることは一切やっていない。W杯で指導者として優勝するんだと。そこにだけ焦点を当てています。答えを言うならば、指導者のほうに比重は明確に向いていると思います」

 本田が指導者としての道に重きを置くと公の場で話したのはこれが初めてで、だからこそ、短い時間ながらも言いたいことは山ほどありそうだった。

 今年の全国高校サッカー選手権を見ながらこんな私見を述べていた。

「“個”は悪くないです。ただ、偉そうなことを言わせてもらうなら、戦術面はひどいなと思う部分は多かったです。課題ありです。これを話し始めるとライセンス問題にたどり着くんですけれど…。最終的に(解決するには)指導者の問題に行きつくと思います。大人になってから身に付くのは身に付く。イタリアのサッカーを見ていると中学、高校くらいからかなり深い戦術をやらされるんですよね。それって早ければ早いにこしたことはないので、日本のアマチュアサッカー界は個人技にフォーカスが当たっていますけれど、チームスポーツですし、戦術をつかさどるのは監督が指示を出すきっかけとなる一人でもありますから、そこは真剣に考えていかないといけない」

 本田が指導者としての道を歩もうという意思があるからこそだが、やはりかねてから提唱している指導ライセンスの問題が解決しないことに少し苛立ちを隠せない様子にも見えた。

「ライセンスは取らずに進めていけたら」

 これまでもライセンス問題について、自身のツイッターで過去に何度も書き込みを残している。2017年にはこんな発信をしている。

 さらに1年後の2018年にはこう訴えている。

 そして、最近では昨年の11月にもこんな発信をしている。

 2017年からの発信からすでに今年で7年目。本田が長きにわたりこの問題にこだわり続けているのがよく分かる。

 今年5月でカンボジア代表GMを退任することが決まっている本田だが、ライセンスを持たないため、長らく“実質的な監督”の立場だった。指導する上で特に大きな影響はないとしつつも、指導者としてのキャリアを積むには、ライセンス取得が優先事項となるのが現状。ただ、ここでキッパリとこう断言した。

「これ(S級ライセンス)に関しては取らずに進めていけたらなと思っています」

 周囲では「取ってもいい」という声を耳にしたり、ライセンス取得を勧める意見もあるという。ただ、「ライセンス問題に関する考えが明確にあるので、別になくてもいいとハッキリ言える。これに対しては誰に対しても言える。日本サッカー協会だけでなくて、FIFA(国際サッカー連盟)にも少しずつ言い始めています。既得権益なんですよ」と語っていた。

「サッカーというエンタメが盛り上がれば」

 すると、本田は少し考えて、こう続けた。

「ライセンスの問題も僕のためっていうよりは、日本サッカーの長くプレーしていたレジェンドたちが辞めたあと、例えば、J3のどこかのクラブとか、もしくはJ2、J1の監督にいきなりなって、サッカーというエンタメがもっと盛り上がればいいなと思いながら動いています。協会側にも明確に伝えているのは、僕はクラブの監督をやるつもりは一切ないし、Jリーグに戻ってくる気もないですから、この動きは僕のためにやっているんじゃないの分かるでしょと。なので、協力的にはなっています。何カ所か妥協点を見つけて、明確にルールを改正したいなと思っています。ただ、UEFA(欧州サッカー連盟)やFIFAは強いパワーが働いているので、まずはJリーグ、日本サッカー協会からルール変更を目標に動いていきます。それが変わらずとも僕は変わらずやっていくので。ソリ(反町康治・日本サッカー協会技術委員長)さんがバシバシって動いてくれたら話早いんですけれどね。意外に守りだから(笑)」

 ライセンス問題についての見解を発信し続け、ようやく動きが見え始めてきた。実際、ライセンスを取得せず、指導者の道が開けるのであれば、日本のサッカー界はまた大きく変化する気もする。今後も本田の動きや発信に注目していきたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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