「アイドルや女優で飲酒を美化するな」韓国の焼酎事情に訪れた変化と弊害とは
日本でも認知度を高めている韓国焼酎に、大きな変化が訪れようとしている。
韓国の保健福祉部は最近、「飲酒が美化されないように酒ビンなど酒類容器に芸能人の写真を使用しないようにする方向で、関連規定を改善する案をまとめることにした」と発表した。
日本では馴染みのない文化だが、韓国ではごく当たり前に焼酎のビンに芸能人の顔写真が貼られている。しかも広告モデルを務めるのは、渋い男性芸能人ではなく、今をときめく女性芸能人が大半だ。
イ・ヨンエなど人気女性芸能人がズラリ
例えば、韓国を代表する焼酎「チャミスル」。1998~1999年にモデルを務めたのは『宮廷女官チャングムの誓い』で日本でも知られる、若き日の女優イ・ヨンエだった。
(参考記事:【写真】こんなイ・ヨンエ見たことない!! デビューから大胆な姿までフォトヒストリー)
他にも「チャミスル」の歴代広告モデルには、韓国No.1美人女優とされるキム・テヒや、女優イ・ミンジョン、歌手IU、Red Velvetアイリーンなど、時の人気者が勢揃いしている印象だ。
同じく「チョウムチョロム」もク・ヘソン、イ・ヒョリ、シン・ミナ、ペ・スジと人気の女性芸能人が広告モデルとして起用されてきた。
お酒や焼酎のビンに、女性芸能人をはじめとする有名人の写真が貼られられている国は、経済協力開発機構(OECD)加盟国で、韓国だけだという。
そんなある意味、“独特の文化”が今回見直されようとしているのは、「飲酒を美化してはならない」という声が増えたからだ。
裏を返せば、韓国では飲酒の弊害が深刻だと言えるだろう。
韓国における飲酒の弊害とは
まず、当然ながら飲酒には、ガンや高血圧など健康を脅かすリスクがついて回る。韓国保健福祉部による統計庁の死亡原因統計を通じた分析結果によると、韓国で2017年にアルコール性肝疾患など飲酒で死亡した人数は計4809人に上るという。
単純計算で1日に13人が飲酒で亡くなっているということになる。
また、飲酒が原因となった社会的費用も少なくない。健康保険政策研究院の調査結果によれば、飲酒による社会経済的費用は2013年基準で9兆4524億ウォン(約9452億円)と推算された。
さらに韓国大検察庁の資料によると、2016年の殺人、強盗、強姦などの凶悪犯罪の30.35%が飲酒状態で発生したともある。
飲酒の弊害がいろいろと指摘されるなかで、その広告には清純で美しい女性芸能人が使われていることに、違和感を持つ人が増えてきたといえるだろう。
特に興味深いのは、酒とタバコに対する韓国政府の扱いの違いだ。
予算は禁煙事業の100分の1
2019年基準の国家禁煙事業には約1388億ウォン(約139億円)の予算が編成されているが、飲酒の弊害予防管理事業には約13億ウォン(約1億3000万円)しか使われないという。禁煙には100倍もの予算を使っているのだ。
ちなみに、韓国では焼酎のビンに女性芸能人の顔写真が貼られるが、タバコの箱にはガン患者や臓器の写真が貼られている。その扱いに、とてつもない差があることが一目でわかる事例だろう。
いずれにしても今後は、韓国では焼酎のビンに芸能人の写真が使われなくなる可能性が高い。一部では「芸能人への広告出演料がなくなって、焼酎の価格が少しでも安くなるのでは」といった声もあるが、はたして。