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先発の武器は主軸の弱点。阪神が避けては通れないフォークを巡る攻防

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

先発4本柱はフォークの使い手

阪神の開幕ローテーションは早々にストレートとフォークのコンビネーションが生命線の能見、昨季最多勝の大型右腕・メッセンジャー、将来のエース・藤浪、安定感抜群の岩田が決まり4枠が埋まった。この4人に共通するのはフォークで空振りが奪えること。フォークの空振り率は能見が23.82%、メッセンジャーが27.01%、藤浪が24.36%、岩田が29.03%と全員がかなりハイレベル。特に岩田は被打率も.078とほぼ完璧。これまではスライダーのイメージが強い投手だったが決め球が増えたことで2013年は2勝5敗、防御率4.95だった成績が昨季は9勝8敗、防御率2.54と大幅に改善。打線の援護に恵まれない試合が続いたため2桁勝利はならなかったが、内容はローテーション投手として文句なしの働きぶりを見せチームに大きく貢献した。当然他球団はオフの間に研究し攻略を目指す。今季も主力投手がフォークで空振りが奪えるか。追い込んでからのウイニングショットとなることが多い球種だけに決まるかどうかは結果に直結する。

クリーンアップはフォークが打てない

ストレートには滅法強いゴメスだが・・・
ストレートには滅法強いゴメスだが・・・

フォークを武器とする先発投手陣が揃う阪神だが主軸打者はフォークを苦手としている。昨季規定打席に到達した打者のフォークの打率セリーグワースト5は

ゴメス .109

坂本 .118

バレンティン .120

マートン .163

丸 .170

打線の要であるゴメスとマートンが不名誉ながらランクインしてしまっている。打球方向に偏りがなく、あらゆる球種やコースに幅広く対応出来るマートンだがフォークに対する対応は数少ない弱点のようだ。さらに、打線の不安要素は両助っ人だけではない。西岡は昨季、フォークに.429(7打数3安打)と高打率を残しているがこれは開幕直後に離脱し出場試合が少ないためで、122試合に出場した2013年は57打数9安打で打率.158。同じく3番候補の福留もフォークの打率は2013年が.125で昨季が.140。鳥谷はフォークに対して.264とそれほど苦手としているわけでもなく他の球種も満遍なく打っていたが今季は1番打者として打線を引っ張る。そのためおそらく開幕戦のクリーンアップにはフォークを苦手とする打者が3人並ぶ。対戦相手となる中日の開幕投手はまだ明らかにされていないが、昨季の最多勝投手・山井か2桁勝利を挙げた大野が有力視される。オープン戦ではアピール不足の感もある山井、フォークの空振り率は10.19%で抜群に高いとは言えないが球種別被打率.209は持ち球の中で最も低い。150km/h左腕・大野の最大の武器はもちろん威力あるストレートで投球全体に占める割合は57.14%と非常に高い。フォークの割合は2.99%と低く昨季はほとんど使っていない。だが岩田も2013年はフォークを3.36%しか使っていなかったが、昨季は9.35%まで増え決め球として機能した。ちなみに昨季、大野のフォークの空振り率は27.27%。サンプル数は少ないもののかなり高い数値だ。オープン戦では鳥谷、上本の1、2番コンビが機能しているがフォークを苦手とするクリーンアップが還せるか。

球団創設80周年の節目の年を戦う阪神、投げても打ってもフォークを巡る攻防が今季の命運を左右する。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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