北朝鮮が発射準備を行う中距離弾道ミサイル「ムスダン」と日本の集団的自衛権
4月12日にアメリカのCNNが偵察衛星の画像分析から北朝鮮の車載移動式弾道ミサイル発射機が展開していると報じ、4月14日に韓国の聯合ニュースは北朝鮮の東海岸、元山(ウォンサン)付近に中距離弾道ミサイル「ムスダン」が展開していると報じました。
北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ムスダン」はロシアの水中発射弾道ミサイルR-27を原型とする一段式液体燃料で射程3000~4000kmと推定され、北朝鮮から発射された場合はグアムのアメリカ軍基地を狙う事が出来ます。これまで軍事パレードで姿を見せてきましたが発射試験は一度も行われておらず、もし発射した場合は初めての実射試験となります。
そして北朝鮮の東海岸にムスダンを配置して最大射程での試験を行った場合、日本上空を飛び越える可能性が出てきます。あるいは最大射程での試験を行わず、ムスダンをロフテッド軌道(山なりの弾道)で発射し、日本海に着弾させる可能性もあります。
ムスダンは推定される最大射程が3000~4000kmとされることから、グアム島のアメリカ軍基地を攻撃する事が主な役割とされます。その為、日本の集団的自衛権と弾道ミサイル防衛に深く関わってくる対象となっています。それは日米で共同開発中の新型の弾道ミサイル防衛システム「SM-3ブロック2A」ならば、日本近海に配備されたイージス艦からグアムに向かうムスダンを撃墜することが能力的に十分に可能だからです。ムスダンの実用化は「グアム島のアメリカ軍基地を守るために自衛隊のイージス艦が迎撃を行う」という、集団的自衛権の発動が現実味を帯びてきた事を意味します。
また、ムスダンをロフテッド軌道で発射し日本が狙われた場合は山なりに高い高度を飛んでくるため、従来の自衛隊の装備(SM-3ブロック1A)では迎撃可能範囲が著しく狭くなりますが、新しいSM-3ブロック2Aならば余裕をもって広範囲で迎撃することが可能になります。SM-3ブロック2Aは2018年に実戦配備予定となっています。