高校生への児童手当支給があっても扶養控除がなくなると実質増税になる世帯の割合は?
政府は、児童手当の対象年齢を高校生にまで広げ月1万円を支給することを検討中だが、それにともなって現在38万円となっている扶養控除を廃止することも併せて検討されているようだ。
この「控除から手当て」への流れは、旧民主党政権時代に子ども手当の創出に伴い年少扶養控除が廃止されたのと同じである。
しかし、月1万円の児童手当を貰っても扶養控除が廃止されるのであれば、実質増税となる世帯も出てくる。扶養控除廃止は所得税や住民税、社会保険料の負担を増やし、課税所得を引き上げるからだ。
実際、報道によれば、年収850万円以上の世帯では、むしろ今よりも負担が増えたりする可能性があるとのことだ。
児童手当拡充の一方、扶養控除廃止の可能性も 年収いくらだと実質マイナスになるのか?(2023年5月27日(土) 日テレNEWS)
では、こうした扶養控除廃止によって実質増税となる世帯はどの程度あるのだろうか?
そのものずばりの統計があるわけではないが、厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、児童のいる世帯(児童とは18歳未満の子ども)の1世帯当たり平均所得は813.5万円となっており、ほぼ実質増税の世帯と同じ所得となっていることが分かる。そして、813.5万円以上の子育て世帯が全子育て世帯(1073.7千世帯)に占める割合は4割(440.5千世帯)を占める。つまり、扶養控除の廃止だけで子育て世帯の4割が実質増税となる可能性がある(実際には、このうち高校生の子どもがいる世帯に限定されるので、直接の割合はこれよりも減るが、これから高校生になる子どもを育てている世帯も含めた数と見ればいいだろう)。しかも、世帯年収であるので、国税庁「民間給与実態調査」によれば、男性・女性の平均給与は、男性545万円、女性302万円であり、夫婦共働きで平均的な給与貰っているとすれば、平均的な世帯で該当することになる。
また、政府は、「異次元の少子化対策」の財源ねん出のために、社会保険料に加入者一人当たり500円程度上乗せを考えているようだ。
社会保険料への上乗せ 月額最大で470円の試算 少子化対策強化(2023年5月25日(木) NHK NEWS WEB)
扶養控除の廃止に加えてこうした社会保険料への上乗せまでも考慮すれば、月1万円の児童手当を受け取ったとしても、だいたい650万円以上の世帯年収(課税所得330万円以上)では実質増税となる。先に見たのと同じように、厚生労働省「国民生活基礎調査」でその世帯割合を見ると、全子育て世帯の6割弱(628.6千世帯)の世帯となる。つまり、扶養控除の廃止に加えて社会保険料の上乗せで子育て世帯の6割弱が実質増税となる可能性があるのだ。
児童手当と控除の二重取りが不適切というのであれば、親の年齢が70歳未満であれば「一般の控除対象扶養親族」として38万円の控除となり、70歳以上であれば「老人扶養親族(その他)」となり48万円の控除が受けられる、年金と控除の二重取りはなぜ許されるのか、納得のできる説明が必要だと思いますが、いかがでしょうか?