独アイスワイン農家の悲鳴…初の生産量ゼロに ヨーロッパ記録的暖冬の裏で
「野菜値崩れ、農家ため息(京都新聞)」「寒さ来て…スキー場が雪不足(上毛新聞)」「暖冬、アパレルに寒風(日本経済新聞)」など、記録的暖冬の影響で、このような暗い記事が紙面に上りました。
個人的に暖かい冬は好きですが、こうした方々の苦労を思うと、決して喜べる状態ではありません。
1961年の統計開始以来もっとも暖かい冬
気象庁がこの冬の天候まとめを発表しました。その内容は「やっぱりか…」といったもので、12月から2月までの3か月間の平均気温は、東日本で平年を2.2℃、西日本で2.0℃上回って、1961年の統計開始以来もっとも高くなりました。
具体的には、青森市、金沢市、横浜市、静岡市、名古屋市、京都市、鹿児島市などといった111の観測地点で、これまでにない暖冬となったのです。
一方、北陸地方では、観測史上第1位の少雪となりました。
驚くことに、新潟市では例年の2%、金沢市では7%しか雪が降らなかったといいます。
記録的な暖冬の原因は、上空の暖気と寒気の境目である偏西風が、いつもより北にあったため、寒気が日本に流れ込みにくかったことが挙げられます。
記録的暖冬、ヨーロッパでも
記録的な暖冬は、遠く離れたヨーロッパでも問題となっています。
フランスでは、12月からの3か月間の平均気温が例年よりも2.7℃も高くなって、1900年の観測開始以来もっとも暖かい冬となりました。
またロシア・モスクワでは、平均気温が例年より6℃ほど高い0.2℃となって、かつてない暖冬となりました。雪のない正月を迎えたため、わざわざ人工雪を作って正月ムードを盛り上げたほどだったといいます。
さらにフィンランド・ヘルシンキでは、史上初めて1月と2月に雪が積もらなかったようです。
(↑今冬のモスクワの気温推移)
アイスワイン2019はお蔵入り
同じく暖冬となったドイツでは、アイスワイン業界に暗い影を落としています。
アイスワインは、12月から2月の間に、凍って甘味が凝縮されたブドウを収穫して作られる、「甘口ワインの最高峰」の一つです。凍ったブドウからは果汁がほとんど取れないため、その貴重さから「貴族のためのワイン」や「奇跡のワイン」などと称されることもあります。
ドイツのアイスワインを作るには、氷点下7℃以下の環境で凍ったブドウが必要なのだそうです。ところが今冬は、ドイツにある13か所の生産地すべてで、気温がそれを下回りませんでした。
このため、190年に及ぶドイツ産アイスワインの歴史で初めて、生産量ゼロという事態に陥ったのです。つまり2019年のヴィンテージは欠番となってしまいました。これは大変なことです。
食べ物の恨みは恐ろしいといいますが、改めて今冬の暖冬が恨めしく思えてきます。