ファティはメッシを超える「逸材」なのか?スペインとバルサの未来を担う存在に。
衝撃のデビューだった。
パウ・トーレスからセルヒオ・レギロンにボールが渡る。左ウィングで起用されたアンス・ファティは、1対1で迷わずに仕掛けた。ウクライナ代表DFの足が引っかかり、主審のホイッスルが鳴る。試合開始から87秒でスペイン代表がPKを獲得した瞬間だった。
■史上最年少得点記録
アンス・ファティが爆発した。UEFAネーションズカップのドイツ戦で、17歳308日の若さでスペインA代表デビューを飾ったアンス・ファティは、次戦のウクライナ戦でPK獲得とゴールという結果を残した。17歳311日でスペイン代表の史上最年少得点記録を更新している。
「アンス・ファティの能力は知っていた。だが試合開始直後のあのプレーは...。彼の年齢で、ああいった大胆さを持ち合わせているのは普通ではない」
ルイス・エンリケ監督はウクライナ戦後にアンス・ファティを激賞している。
また、スペイン代表にとっては、ルイス・エンリケ監督が復帰して初めての試合だった。
アンス・ファティをはじめ、エリック・ガルシア(19歳)、フェラン・トーレス(22歳)、オスカル・ロドリゲス(22歳)、ウナイ・シモン(23歳)と今回のスペイン代表には若い選手が多く呼ばれていた。その中でアンス・ファティが活躍したのは象徴的だった。
■持っている男
思えば、彼は「持っている男」なのかも知れない。
例えばバルセロナでトップデビューを飾った時だ。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ウスマン・デンベレの負傷で出場機会が訪れた。そしてオサスナ戦で得点を挙げ、インパクトを残した。
無論、アンス・ファティのクオリティに疑いの余地はない。だがタイミングというのは非常に重要だ。キリアン・エンバペ、ジョアン・フェリックス、マタイス・デ・リフト、フレンキー・デ・ヨング、ジェイドン・サンチョ...。そういった選手たちも、どこかの瞬間で階段を上ってきた。
若い選手に過剰な期待を押し付けるのは禁物だ。彼らには十分な時間と空間を与えなければいけない。
だが「若さ」が武器になるのも確かだ。大胆なプレー、時に横柄にさえ映るピッチ上の振る舞いが、フットボールの世界では往々にしてプラスに働く。経験を重ね、試合を読む力を蓄えた選手であれば、決して仕掛けないような場面で仕掛けていく。その無謀さこそが武器になり得るのだ。
スペイン代表における活躍で、アンス・ファティの周囲は騒がしくなり始めている。
アンス・ファティは昨年12月にバルセロナと2022年まで契約延長を行っており、契約解除金は1億7000万ユーロ(約210億円)に設定されている。ただ最近、代理人をメッシの実の兄弟であるロドリゴ・メッシからジョルジュ・メンデスに変更した。それが噂の種になっているところだ。
バルセロナに残留すれば、メッシ、デンベレ、アントワーヌ・グリーズマン、フィリップ・コウチーニョ、マルティン・ブライスホワイトらとのレギュラー争いは熾烈を極めるだろう。大胆な突破力で、道を切り開けるかーー。スペインとバルセロナの未来が、そこにはある。