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羽生善治九段、千日手指し直しを経て渡辺明名人を降しリーグ4連勝! 藤井聡太王将への挑戦に大きく近づく

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月26日。東京・将棋会館において第72期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ、渡辺明名人(38歳)-羽生善治九段(52歳)戦がおこなわれました。

 10時に羽生九段先手で始まった対局は11時44分、60手で千日手が成立しました。

 12時40分に渡辺名人先手で始まった指し直し局は18時2分、88手で羽生九段の勝ちとなりました。

 リーグ成績は羽生4勝0敗、渡辺1勝3敗。羽生九段は藤井聡太王将への挑戦権獲得に向け、大きな関門をクリアしました。

 両者の通算対戦成績は羽生42勝、渡辺38勝(3千日手)となりました。

羽生九段、後手横歩取り連投で勝利

 羽生九段先手で始まった対局は角換わり腰掛銀に。羽生九段は桂を捨てて渡辺陣に角を打ち込み、馬(成角)を作ります。羽生九段が馬で渡辺名人の飛車を追いかけ、同一局面が4回生じ、規定により千日手が成立しました。

羽生「ちょっとでも、考えてきたのと違う局面になっちゃったんで。ちょっと作戦として失敗したかなと思ってたんで。千日手でしょうがないかなと思って」

 昼食休憩後に始まった指し直し局は、先後が替わって渡辺名人が先手。羽生九段は横歩取りに誘導しました。10月14日におこなわれた近藤誠也七段戦と同じ戦型です。

羽生「この間の王将リーグでも同じ将棋指したんで。ちょっともう一回やってみようかなと思って、まあ指してみたというところですね。千日手はもちろん想定してなかったんで。そのときの気分というか」

 46手目。羽生九段は渡辺陣深くに角を打ち込みます。そして引き成り、馬を作りました。

羽生「けっこうずっと、なんていうか、互角に近い感じなんじゃないかと。馬作ったあたりとかですね。互角に近いんじゃないかなと思ってずっと指していたので。そうですね、先はあんまり見えてなかったです。(馬を作った)あの局面は全然難しいっていうか。なんていうんでしょうかね。バランスが取れてる局面なんじゃないかなと思っていました」

渡辺「序盤は一局かな、とは思ってたんですけど」

 中段に置かれた羽生九段の飛車は窮屈なポジション。その飛車を目標に、渡辺名人は角と金で圧迫していきます。

 57手目。渡辺名人は、ねらわれていた桂をみずから跳ね出して、相手に渡します。しかしこのあたりに誤算があったようです。

渡辺「桂損になってしまったあたりでちょっと、はい。全然読めてなかったですね。そのへんの構想がまずかったです。ちょっと破綻してましたね」「7四の飛車をもうちょっといじめる予定だったんですけど。それが、かなわなくなってしまったんで(苦笑)」

 62手目。羽生九段は歩を突いて、飛の横利きを通します。

渡辺「(相手の飛車を)追い込めるかなと思ってたんですけど。ちょっと△4五歩突かれて(横利きが通って)飛車が楽になってしまったんで。いや、構想が破綻してました。ただの桂損になっちゃったんで」

 羽生九段は、相手に取られる可能性のあった飛車を逃し、それを起点に攻め込みます。

羽生「もうあまりゆっくりできないんでしょうがないかなと思ってやっていました」「飛車寄って、と金作る形になったんで、それでそうですね、攻めがつながる形になって。ちょっとよくなったかなと思いました」

 羽生九段優勢で迎えた84手目。羽生九段は取られそうだった桂を気持ちよく中段に跳ね出し、勝利に近づきました。

羽生「△4五桂と跳ぶ形になって、遊んでた駒が使えたんで、よくなったかなと思いました」

渡辺「もうちょっとうまく粘る手はあったかもしれないんですけど。ただまあ、ちょっとなにをやってるのかわからない展開になってしまったので(苦笑)」

 88手目。羽生九段は渡辺玉の上部に歩を打ちます。大差がはっきりしたところで、渡辺名人は潔く投了。羽生九段の勝ちとなりました。

 リーグ4連勝の羽生九段は残留決定一番乗り。そして王将挑戦に大きく近づきました。

羽生「次もすぐあるので、しっかり準備して、いい将棋を指せたらなと思っています」

 前王将の渡辺名人は1勝3敗。今期リターンマッチの可能性はなくなりました。

渡辺「負けた将棋はやっぱ内容がわるすぎるんで。うーん。そうですね・・・。なんかそうですね。ちょっと考えていきたいですね。はい」

レジェンド、再び大舞台に立つか?

 今後の日程は以下の通りです。

10月28日

▲豊島将之九段(1勝1敗)-△糸谷哲郎八段(0勝2敗)

▲近藤誠也七段(1勝2敗)-△服部慎一郎五段(1勝1敗)

10月31日

▲永瀬拓矢王座(2勝1敗)-△羽生善治九段(4勝0敗)

 羽生九段以外は2敗以上で、羽生九段は5戦無敗となれば、早くも挑戦権獲得が決まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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