なぜパリSGは“欧州の舞台”で苦戦しているのか?メッシ、エムバペ、ネイマールに必要なラストピース。
欧州の舞台というのは、甘くない。
今季のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦で、好カードとして注目されていたのがパリ・サンジェルマン対バイエルン・ミュンヘンの一戦だ。ファーストレグにおいては、バイエルンがアウェーで1−0と先勝している。
「我々は攻撃において深みを獲得できなかった。そこでバイエルンが上回っていた。我々はビルドアップで問題を抱え、思ったようにボールを保持できなかった」とは試合後のクリストファー・ガルティエ監督の弁である。
「0−1はネガティブな結果だ。(セカンドレグでは)バイエルンに勝たなければいけない。ラウンド突破のため、あるいは少なくともPK戦に持ち込むためにはね」
■大型補強の成果
パリSGは近年、積極的に選手の補強を行ってきた。
世界に衝撃を与えたのは、2017年夏のネイマール獲得だ。パリSGは当時バルセロナに所属していたネイマールを獲得するために、契約解除金2億2200万ユーロ(約311億円)を準備。バルセロナのフロント陣が不可能だと考えていた移籍が、瞬く間に成立した。
パリSGは同時期にキリアン・エムバペの獲得も決めた。移籍金1億8000万ユーロ(約252億円)でモナコと合意に至り、1年レンタルの後、エムバペを正式にパリSGの一員として迎え入れた。
ただ、パリSGに大きな変化が訪れた時期というのは、その少し前に遡る。2011年、カタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)がクラブを手中に収めるために動いた。カタール投資庁の子会社による買収劇で、パリSGは実質上の「国家クラブ」となった。
それ以降、パリSGは欧州のマーケットで「無敵」の存在になったと言える。およそ14億ユーロ(約1960億円)を補強に投じて、戦力アップを図ってきた。
先述したネイマールとエムバペだけではない。パリSGはエディンソン・カバーニ(移籍金6450万ユーロ/2013年夏加入)、アンヘル・ディ・マリア(移籍金6300万ユーロ/2015年夏)、マウロ・イカルディ(移籍金5000万ユーロ/2020年夏)、アクラフ・ハキミ(移籍金6800万ユーロ/2021年夏)らを次々に引き入れた。
■悲願のチャンピオンズリーグ制覇
パリSGは大型補強を敢行してきた。その目的は、欧州制覇――チャンピオンズリーグ優勝――にある。
だがそれは茨の道だった。2012−13シーズン(準々決勝敗退)、2013−14シーズン(準々決勝敗退)、2014−15シーズン(準々決勝敗退)、2015−16シーズン(準々決勝敗退)、2016−17シーズン(ベスト16)、2017−18シーズン(ベスト16)、2018−19シーズン(ベスト16)、2019−20シーズン(準優勝)、2020−21シーズン(準決勝敗退)、2021−22シーズン(ベスト16)と幾度となく壁にぶち当たってきた。
2021年夏には、リオネル・メッシがパリSGに加入した。バルセロナとの契約延長がうまくいかず、フリーになったメッシを、パリSGが即座に確保した。
メッシ、ネイマール、エムバペ。「MNM」と称される3トップが、パリSGの攻撃を牽引するようになった。
しかしながら、スター選手を揃えれば勝てる、というほどフットボールは簡単ではない。2011年以降、最も優勝に近づいた2019−20シーズン、トーマス・トゥヘル当時監督はエムバペやネイマールを主力にする一方で、パブロ・サラビアやアンデル・エレーラといった選手を重宝していた。そういう意味では、強力な3トップに加え、パリSGにはラストピースが必要だ。
「今シーズンは、シーズン中にワールドカップがある。特殊な一年になると思う。だけど、パリ・サンジェルマンの目標は変わらない。チャンピオンズリーグのタイトルを目指すことだ」
「チャンピオンズリーグは非常に難しい大会だ。常にベストチームが勝つとは限らない。勝敗はディテールで決まる。少しのミスが命取りになってしまうんだ。でも、僕たちは困難な状況に立ち向かうため、準備を進めている」
これはメッシの言葉だ。
資金という観点においては、パリSGに壁はなかった。だがチャンピオンズリーグという欧州最高峰の舞台では、常に壁に阻まれてきた。
パリSGは現地時間3月8日にバイエルンとのセカンドレグを行う。重要な一戦を前に、ネイマールを負傷で欠く。
新興勢力の挑戦はまだ終わったわけではない。