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明治大学の福田健太キャプテン、日本一のための「12月14日の夜」を振り返る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
早大との準決勝では好ランも披露。(写真:築田純/アフロスポーツ)

 明治大学は1月12日、東京・秩父宮ラグビー場での大学選手権決勝で天理大学と対戦。22シーズンぶりの優勝を目指す。10日、スクラムハーフの福田健太キャプテンが東京・八幡山の練習場で共同取材に応じた。

 今季は加盟する関東大学対抗戦Aで3位(選手権のトーナメント表では4位扱い)。選手権9連覇中だった帝京大学を倒しながら、その前後のカードで慶應義塾大学(慶大)、早稲田大学(早大)に敗れていた。

 大学選手権参戦を2日後に控えた2018年12月14日、最上級生同士で決起集会を実施。福田はこの体験を通し、過緊張の状態から解き放たれたという。1月2日、東京・秩父宮ラグビー場での同準決勝では、早大に31―27とリベンジを果たしている。

 決勝を直前に控えたこの日の発言からは、4年生同士の絆の太さが読み取れる。

 以下、共同会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――シーズンが深まるにつれ、あなたの顔つきが精悍になってきたような。

「4年生の食事会があってから、自分のなかでは吹っ切れた。腹を割って話し合ったことで、自分が自分のパフォーマンスに焦点を当て切れていなかったこと、チームをどう導くかに意識が向きすぎていたことに気づけました。いまは楽しんでラグビーができています。前まではチームを勝たせなきゃいけないというプレッシャーがあったと思いますが、その時は今季のリーダー制(福田以下、7人のリーダーが揃う)を活かし切れていなかった」

――「プレッシャー」。いつから感じていましたか。

「春は全く感じていなかったです。春季大会では、それまでずっと勝てていなかった帝京大学にも勝てて優勝と、順風満帆。負けてもシーズンに影響するかといったらそんなこともないなか、思い切りできていた。ただ対抗戦で慶大、早大に負けて、4位扱いで選手権に出ることになって、少しプレッシャーを感じました。日本一を諦めたわけではないですが、このままだったらやばい…と」

――決起集会は、そのタイミングでおこなわれました。

「例えば慶大に負けた時も、リーダー同士で話し合いはしました。ただ、いま考えてみたら、それはうわべだけの話し合いだったと思います。その時に、もっとリーダーに頼れた部分もあった。せっかく7人もリーダーがいるのに、『練習中の雰囲気をよくしなきゃ』といったようなことも全部1人で考えてしまっていて。

 話し合いをしたことによって、4年生がそれぞれ熱い思いを持っているのだとその時に(改めて)わかった。その思いを、それまでの僕は引き出せていなかった。思いを、内に秘めた思いのままにしてしまっていたと感じました。4年生の思いを前面に出していこうと確認し合って、僕も4年生に頼るようにして、4年生の自覚というものも以前よりも出てきた。自分自身も、プレーを見直そうと立ち帰れました」

――印象的に残った話を教えてください。

「土井(暉仁、ロック)たちメンバーに入れていない選手が『メンバー外でもできることはやろうと思う』と話していて、普段喋らない中尾(将大、ロック)、船木(頌介、プロップ)もそのようなことを口にしていた。『あぁ、皆チームのことを思ってくれているんだ』と、僕以外のリーダーも感じたと思います。

 あとは、小宮(カズミ、ロック)が言っていたのは、『伝統あるクラブに入ったことで、勝ち負けばかりを気にしてプレッシャーを感じすぎている。ラグビーを楽しめていないよ』ということ。もちろんチームをどう勝たせるかも考えなきゃいけませんが、ラグビーを楽しむことが一番、大事なんじゃないかと。その意見には、皆が納得していました。

 それによって選手権最初の立命館大学戦はすごく楽しんでやれましたし、次の東海大学戦でもコンディション的には難しかったですが、チームとして楽しめた」

――さぁ、天理大学との決勝戦。どう戦いますか。

「ここまで来たら、チームで大きく何かを変えるわけではない。2月から積み重ねてきたものを出すだけです。今年は外国人枠が2から3に増えて、天理大学さんも留学生を軸に攻めてくる。それ以外の日本人選手の勤勉さも天理大学さんのいいところですが、まずは、留学生3人を止める。ディフェンスで2inファイト(タックラーが相手を倒し、援護役が球に絡むという意味の合言葉)、BIG(バック・イン・ザ・ゲームという造語。倒れた選手がすぐに起き上がり次の持ち場へ移れという意味)を意識して、仕事をし続ける。今年のS&Cのテーマは外国人に負けない身体作りで、ウェイトの数値もそれぞれ上がっています。強い留学生に対応する努力は、してきました」

 主力組以外の仲間の話を克明に振り返っていたのが印象的だった。よきチームの輪郭が浮かび上がる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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