「1日限定」で結成して11年のTEAM SHACHI【後編】改名から急展開の裏側と壊していくもの
名古屋発で活動するアイドルグループ、TEAM SHACHIが7日で路上デビュー11周年を迎える。ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学の妹分としてメジャーデビューし、すぐに日本武道館まで駆け上がった後、波乱万丈の中でチャレンジを続けている。夏には始まりの地である名古屋城でのライブも控える中、11年間の裏話に今後の展望までメンバー4人に語ってもらった。後編は急展開だった改名の話から。
「変わらないといけない」と話し合っていました
――2018年10月には、チームしゃちほこからTEAM SHACHIに改名しました。
大黒柚姫 ガイシから1年半後? すごくない? そんなにスパンが短かった?
咲良菜緒 私たちバタバタだね。
秋本帆華 落ち着かない、せわしない(笑)。ちゆ(伊藤千由李)が卒業したのと同時に改名したんだった。
坂本遥奈 判断、早っ(笑)!
――グループ名を変えただけでなく、音楽的にもブラスセクションを加えたラウドポップ路線を打ち出しました。「このままではダメ」というような危機感があったんですか?
坂本 ちゆがいて5人だったときから、私が高校を卒業して、みんなも20歳になるということで「変わらないといけない」と話し合っていたんです。そのタイミングでちゆが卒業することになって、改名もする勢いで新しいことをやろうと、いろいろチャレンジしていきました。
咲良 11年間で一番打ち合わせをした期間だったね。
大黒 名前にロゴ、コンセプトとベースの部分から、私たちもありがたいことに話し合いに参加させていただいて。いろいろな情報や意見をもらいながら、自分たちで「これがやりたい」「これは違う」と決めていきました。
新しいことをやりたくてブラスを入れるのはいいなと
――ブラスは「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出演したとき、トランペットとサックスを入れたのがきっかけだったそうですが、ラウドポップも皆さんがやりたいことだったんですか?
咲良 それはメーカーさんに提示してもらいました。最初は打ち合わせで自分たちがどこまで言っていいのかわからず、「こういう話し合いをしていたんだ」というところから始まって。プレゼンしてもらって、それがいいのかイヤなのか、選ばせていただきました。
秋本 新しいことはしたかったんです。ブラスは他のアイドルさんがやっているのを見たことがなかったので、いいかなと。
大黒 すぐ具体的な曲の話になって、「メンバーに作詞してほしいからコンペをします」というお話をもらったり。いろいろ急ピッチで決まっていきました。
――カッコいい曲が出来上がってきて。
大黒 すぐ『DREAMER』と『ROSE FIGHTERS』をライブで披露しました。『ROSE FIGHTERS』はほーちゃん(秋本)の作詞で、私たちの決意を書いてくれて。
坂本 次の年には夏フェスに向けて『Rock Away』や『Rocket Queen feat.MCU』を作って、フェスにいくつか出られました。
秋本 方向性はバシッと決めてあったからね。
離れる人がいても興味なかった人をファンにしたくて
――一方、ライブでチームしゃちほこ時代の曲が少なくなった時期がありました。
坂本 曲によってはやっていましたけど、ちょっと封印した部分もありました。
咲良 新しい曲を中心にして。
大黒 既存曲をやるにしても、振付やパートを少し変えていました。ブラスも入れて、チームしゃちほこの影が出すぎないようにしたんです。
――昔からのファンが離れていく不安はありませんでした?
咲良 離れる人はどうしても離れてしまうものと、考えるようにしています(笑)。逆に、新しいファンを取り込みたい気持ちのほうが強くて。別にチームしゃちほこを否定するわけではなく、その時代があって進化したので、ここで離れてしまっても仕方ないと思っていました。その分、今まで私たちに興味を持ってなかった人が、面白いと思ってくれるはずだと信じていて。
――昔からそうでしたけど、アイドルの枠を越えていきました。
坂本 前からロックフェスに出演させていただく機会も嬉しいことに多くて、「フェスで観て好きになりました」という方がライブに来てくれていたんです。改名して楽曲の方向性をガッツリ決めてから、「アイドルの打ち込み系の曲は苦手だった」という方が「シャチは聴ける」と楽曲から入ってくれることが、思ったより多かったです。
歌のために英語の発音を練習するようになりました
――新しい路線になって、技術的に必要なことも増えたのでは?
坂本 そうですね。曲に出てくる英語の発音とか(笑)。
秋本 それが真っ先に出る(笑)?
大黒 みんなに共通しているのは絶対そこ(笑)。
坂本 今までは「world」だったら「わーるど」と歌っていたんですけど、改名してから「ウァーㇽド」みたいに意識したり(笑)。
大黒 Zoomで発音講座みたいな時間も作っていただきました。英語の曲だと、歌の練習より前に発音の練習が始まって(笑)、参考資料までいただいて結構大変です。歌になると発音がより難しくなるので。
坂本 レコーディングしてから、みんなの歌を聴くと、やっぱりしゃちほこの頃とは違うなと。カタカナ英語でなくなったので、年相応に感じます(笑)。
秋本 コロナ禍でファンの方がコールできなくなった分、私たちの声が鮮明に聞こえて。配信ライブに挑戦したときも、「歌がうまくなったね」と言われることが増えました。あの期間に身に付けたものが活きたのかなと思います。
ハイトーンが増えたのでノドを嗄らさないように
――柚姫さんは難しいハモも頑張っていますよね。
大黒 生で歌うと、ボリューム調整とかもあって難しいです。でも、メンバーにハモり辛い人がいないので、すごく大変だった記憶はないですね。
坂本 柚姫は絶対音感があって、音程の繊細な動きを取るのに長けているので。
秋本 ハモるメンバーごとに歌い方を変えていて、すごいです。
――菜緒さんは技術的に新たに培ったことはありますか?
大黒 フェイクがめっちゃ多いよね。ドーンという高音とか。
咲良 もともと高いパートは多かったんですけど、よりハイトーンが増えました。そういうパートは目立つので、ノドを嗄らさないように気をつけています(笑)。
大黒 菜緒はラスサビとかで「イエーイ」と歌うことが多いんですけど、曲によって「イエーイ」の音程が違うのが大変そう。
咲良 違う言葉にすればいいのかな(笑)。
――ロック好きが活きてきたりも?
咲良 どうなんだろう?
大黒 絶対ある。何だかんだ、みんな聴いているジャンルの歌い方をしていると思います。
歌でフワフワと強さが両立してきました
秋本 私はアニソンばかり聴いています。声優さんの歌う曲もバンドさんの曲もあります。
咲良 改名してから強い曲が増えて、ほーちゃんの歌も強くなったと思う。
大黒 最近すごく良いよね。
咲良 フワフワと強さが両立してきて。
大黒 前は強い曲でもフワフワ多めで、それが良さでもありましたけど、最近は強さを出すのがすごく上手になりました。
秋本 昔はレコーディングでも強く歌うのは諦められていたのか(笑)、「フワフワで行って」と言われていたんです。最近は挑戦させてもらえて、嬉しいです。
――強く歌うための特訓をしたりは?
咲良 マラソンじゃない(笑)?
大黒 肺活量を鍛えたもんね。
坂本 でも、肺活量はもともと水泳で鍛えていたでしょう?
――やっぱり慣れですかね?
秋本 そうなのかな?
咲良 曲ごとに「これができないと歌えない」という課題があるので、たぶんその積み重ねだよね。
プライベートレーベルはパワフルなものを見せるために
――去年はプライベートレーベル「ワクワクレコーズ」を立ち上げました。
秋本 ワーナーさんでお世話になっていたスタッフの皆さんがそれぞれの道を行くということで、私たちも10周年のタイミングでよりパワフルなものを見せていきたいと思って、発足しました。
――主体的に音楽作りをするようになったわけですか?
坂本 そうですね。「こういう曲を作りたい」というのがあって、スタッフさんが最終的に残した候補曲をみんなで聴いて、「これは?」と言い合えるのが嬉しいです。
――メジャーレーベルにはない苦労もありませんか?
咲良 私たち自身は意外となくて。たぶんスタッフさんは大変だと思います(笑)。
大黒 私たちは自由度が高くなっただけ。
咲良 アイドルが自分たちでいろいろ決められるのは特殊ですよね。普通は決められたことに何か言える権利はあまりないと思うので。
――「ワクワクレコーズ」という名前は遥奈さんが決めたんですよね。
大黒 名付け親です。
坂本 ライブ中に頭に降りてきました(笑)。
秋本 ファンの方もみんな聞いていて。
坂本 レーベルを作ると発表して、名前はまだ決まってなくて。ライブの最後にファンの方にバイバイしながら帰る流れで、「どんな名前だろうね」「ワクワクレコーズとかいいよね」と、考える前に口に出たんです。それがそのまま使われました(笑)。
おうち時間の配信ライブは良い思い出です
――ざっと振り返ってもらっただけでも、いろいろあった11年でしたが、特にどんなことを乗り越えたのが大きかったですか?
咲良 メンバー個人とグループでタイミングはたぶん違うと思いますけど、グループとしては改名してすぐコロナ禍になって、やっと声出し解禁になるので、まだ乗り越えていません。本領発揮できてないところがあって。
――逆に言えば、これから発揮すると。
咲良 もともとやろうとしていたことができず、いったん違うところを磨こうと、この2~3年は魅せる方向の演出でライブを頑張ってきました。
秋本 これからは一度作ったからこそ、魅せるところは壊していきます(笑)。
咲良 そう、そう。やりたい放題になると思います(笑)。
――キツかったときの支えになっていたものは何ですか?
咲良 やっぱりタフ民(ファン)じゃない? コロナで特典会とかが一気になくなったときは、ヤバいと思いました。
秋本 みんなの声を聴きたくて。
大黒 この期間で離れてしまわないかと不安になって、めっちゃ焦りました。どうしたら繋ぎ止められるか考えて、SNSに力を入れたり、配信ライブをしたり。
坂本 「おうち時間LIVE」は大きかったよね。それぞれの家でリモートで撮ったライブをYouTubeで配信。大変だったけど、できて良かった。
大黒 顔を合わせて歌ってないから、合っているのかわからないまま、感覚で撮らないといけなくて。LINEで撮り直しの通知が来ないか、怖かった(笑)。
咲良 形に残せて思い出になりました。
秋本 この世のおうち時間のライブ史上、一番だったかもしれない(笑)。
坂本 後世に語り継いでほしい(笑)。
やりたかったものがついに夏に見せられます
――メンバーの人間関係はずっと良好だったんですか?
秋本 良好でした。それは本当に良かった。
大黒 ケンカとかもなくて。
坂本 個性を伸ばしていこう、というのがみんなの中にありました。この子はこうしないといけない、と縛り付けるのでなく、放任主義で自由に羽根を伸ばしていました。それでライブとかで集まったら、ガッと団結してやる。あとはおのおの好きにする(笑)。
大黒 「それ、やめなよ」とか言ったことはありません。
――今はTEAM SHACHIの方向性に揺るぎない自信がありますか?
坂本 7月にやるワンマン「シャチサマ」で、「これがやりたかったんです」というものを、ついにお見せできると思います。
大黒 やっとできるね。
秋本 長かった~。
坂本 コロナに邪魔されて、ライブが何度も延期や中止になって。去年大阪でやった4年ぶりの「シャチサマ」も楽しかったけど、まだ声出しができなかったので。今年は思い切りはしゃいで、暴れるところを全部見せられるライブにします。
――音楽的にもより磨きがかかって。
秋本 いろいろな曲を作っています。
坂本 つい最近も新曲のレコーディングをしました。
続けるだけ続けて武道館をまた満員にできれば
――もともと1日限定で始まって、「アイドル5年」も遥かに超えました。
大黒 延び延びだ(笑)。
――今はより先まで見据えていますか?
秋本 とりあえず「シャチサマ」ですね。みんなが求めているものは何だろうと考えたり。会場の名古屋城は私たちの始まりの地。そういう歴史も詰め込みたいなと思っています。
大黒 名古屋城だからできることもありそう。
秋本 それで、また満員の日本武道館でワンマンライブをすることは、ずっと目標にしています。
大黒 続けるだけ続けていって。
坂本 まずは「シャチサマ」に賭けているので、いっぱい来てほしいです!
TEAM SHACHI(チームシャチ)
ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学に続くスターダストプロモーションのアイドルグループとして、愛知県出身のメンバーで結成。2012年にチームしゃちほことして名古屋城で路上デビュー。2013年に『首都移転計画』でメジャーデビュー。2018年に改名。2022年にプライベートレーベル「ワクワクレコーズ」から、EP『舞いの頂点を極めし時、私達は如何なる困難をも打ち破る』をリリース。『TEAM SHACHIのF&Cミュージック』(FM AICHI/金曜19:00~)に出演中。
「SHACHI SUMMER2023 名古屋城 ~叫べ!夢と希望の銃弾を放つ夜~」
7月22日(土)18:00~名古屋城 二の丸広場