「新幹線のリクライニング」に声かけは必要か どれくらい前席を倒されると意識してしまうのか?
ネットを見ると、「新幹線の前の席の人が、深くリクライニングしてきて不快だ」などといったことが書かれていることが多い。いっぽうで、「新幹線の座席は直角すぎて倒さないとどうにもならない」と考える人もいるだろう。
「新幹線の座席をリクライニングするときに声かけを」ということを主張する人もいる。実際に筆者も、新幹線に乗ったときにはそのように声をかけられることが多い。
「倒される側の論理」と「倒す側の論理」
なぜ、新幹線のリクライニングシートは、倒されると不快なのか。まず、乗客の前方にある空間が減少し、圧迫感が強くなる。テーブルを使用し弁当などを食べている場合は、窮屈になる。さらにノートパソコンを開いていると、干渉して画面を若干立てなければならなくなる。
狭い新幹線、とくに普通車だと、そうなってしまうことが多いと言える。
いっぽうで、乗客は座席を倒さないと、座っていて不快だと感じる。新幹線の座席は、回転などのことも考えて、初期状態では直角に近いものとなっており、軽く倒すことを前提にしているからだ。倒さないと、ほぼボックスシートの座席のような角度の座席に座っていることになるのだ。軽く倒すことで、ようやくまともに座れるようになるのだ。
リクライニングシートを倒す側にも、倒される側にも、それぞれ「論理」がある。
軽く倒す場合は声かけをしない場合が多くても、深く倒す人が声かけをする傾向があり、そうすることでトラブルを一定程度回避することも可能だ。
問題が起こりがちなのは、深く倒す場合である。その場合、不快感が発生しやすい。
新幹線の座席の構造を考える
東海道・山陽新幹線で使用されるN700Sでは、シートピッチは普通車1,040mm、グリーン車は1,160mmである。3列座席の回転を考えると、普通車のシートピッチは若干広めである。それでも、前席が倒されると圧迫感を受ける人が多いのだ。その他の新幹線でも、だいたいこの数字前後である。
いっぽう、在来線規格の路線を走らなければならないミニ新幹線向けの車両はどうなのだろうか。秋田新幹線で使用されるE6系のシートピッチは、普通車で980mm、グリーン車は1,160mm。E6系の普通車はフル規格新幹線よりも若干狭苦しいなあと筆者は考えていたものの、実際に狭かった。その代わり、秋田新幹線は2列席と2列席の組み合わせなので、回転に要するスペースもフル規格新幹線ほどではない。
ちなみに在来線の特急では、中央東線のE353系を例に挙げると、普通車は960mm、グリーン車は1,160mmとなっている。
正直なところ、ミニ新幹線や在来線特急のほうが、前席を倒されると窮屈になるといえる。
リクライニングを意識させられる近年の状況
新幹線にせよ在来線特急にせよ、リクライニングはする側もされる側も意識するようになった。他者への配慮がより一層必要となり、また座席に大きなテーブルが備えられ、そこで弁当を食べたりパソコンを開いたりする人も多い状況で、このあたりの問題が可視化されるというのは致し方ないことである。深く座席を倒す際に、声かけをすることがマナーとして必要なことになっており、いっぽうで鉄道車両の中で人々がパソコンなどの作業をする機会も増えたということであろう。
そんな状況ゆえに、前席を倒されることがここまで議論になることとなった、といえる。